NATASHA AND OTHER STORIES
2004年 デヴィッド・ベズモーズギス
この本は表紙の雰囲気が好きで… 所謂ジャケ買いってやつですね。
しかしながら、表紙と内容があまりリンクしていない一冊でした。
作者はカナダ在住だそうですが、子供の頃移住してきたロシア系ユダヤ難民だそうです。
自叙伝なのかな?
一人の男性の子供時代から青年期までのエピソードが断片的に語られています。
文章や雰囲気はざっくり見ると好きなタイプの作風なんですが
ロシア問題とユダヤ問題が随所に書かれていて、両方にほとんど馴染みも知識もない私は
入り込んで読んで共感する…というところまではいけませんでした。
気になったお話しをいくつかご紹介します。
『タプカ(Tapca)』
同じアパートに住む子供がいないナスモフスキー夫婦がロシアから連れて来て
生活が苦しい中、我が子同様の愛情を注いでいる犬のタプカの散歩係に
従姉のヤナと二人指名されました。
ある日散歩中にヤナと大喧嘩をしてしまい、タプカが車に轢かれてしまいました。
何年も一緒に暮らし、国を出るという長く侘しいルートを一緒に旅して来た、
いわば “ 我が子 ” ですよね。
異国の同胞として家族のように接して来た隣人の不注意で死に瀕してしまうとは…
なかなか想像がつきませんが、かなりつらかろう… ラストはちょっと寒気がしました。
『世界で二番目に強い男(The Seond Strongest Man)』
1984年、カナダで重量挙げの選手権が開かれ父が審査員を務めることになりました。
ソ連選手団のコーチは父の元パートナージスキン、花形選手は父が見出したセリョージャ、
ホテルに二人を訪ねて行くと、KGB職員は父の顔見知りでした。
父と母はセリョージャを食事に誘うことにしました。
セリョージャはソ連ではスターで、少年が普段着れないような高い服を買ってくれるのね。
ですが自由はないの、KGBが常に彼の行方を把握しております。
どちらの暮らしが羨ましいかというのは聞くまでもないですが
自由と知る権利を奪われた国が存在した(する)という事実はあるんですよね。
異なる主義を掲げる二つの世界を知る人たちの複雑な心境が語られているような気がします。
『ミニヤン(Miniyan)』
祖母の死後、人脈を駆使し苦労の末祖父が入居したユダヤ人国際結社が保有する住宅には
男二人で暮らすハーシェルとイツィクがいました。
二人にはある噂があり、入居者たちは二人を追い出して自分の知人を入居させようと
ガバイ(ユダヤ教指導者)のザルマンに詰め寄ります。
連れ合いの死後同性二人が暮らすというのは、女性同士だとけっこう涙あり笑いあり的な
物語になりやすいイメージなんですが、男性同士だと陰鬱になりそうですわね…
独りになって寂しくなった者同士、集まって暮らしてもいいじゃないか! 優しく見守ろう。
イヤ〜な話のまま終わるかと終わったら、最後の最後にザルマンがっ…見直しましたよ。
そうねぇ…アーウィン・ショーとかマラマッドを読んだ時にも
同じような印象を受けたような気がしますが、もう少し個人的なテーマだったんですよね。
この一冊からは異国における同胞たちの強い繋がりが滲み出ている気がします。
ロシア系ユダヤ人コミュティというのがかなり強固なものだ、というのはわかりました。
それが国民性によるものか、移住の事情によるものか…それはよくわかりませんが
移住者のほとんどが嫌々国を出て来たということも感じられました。
しかし、追放された同胞だからというだけで寄り集まった人々…
故国ではまったく接点がないような身分・職業・地域の人たちの寄せ集めです。
仲間のようでいて見え隠れする優越感や劣等感、意識の違いなど
おつきあいは簡単ではなさそうです。
ソ連が崩壊した後、作者一家や移住を嘆いていたコミュニティの人々が
ロシアに里帰りができていたらよいですね。
2004年 デヴィッド・ベズモーズギス
この本は表紙の雰囲気が好きで… 所謂ジャケ買いってやつですね。
しかしながら、表紙と内容があまりリンクしていない一冊でした。
作者はカナダ在住だそうですが、子供の頃移住してきたロシア系ユダヤ難民だそうです。
自叙伝なのかな?
一人の男性の子供時代から青年期までのエピソードが断片的に語られています。
文章や雰囲気はざっくり見ると好きなタイプの作風なんですが
ロシア問題とユダヤ問題が随所に書かれていて、両方にほとんど馴染みも知識もない私は
入り込んで読んで共感する…というところまではいけませんでした。
気になったお話しをいくつかご紹介します。
『タプカ(Tapca)』
同じアパートに住む子供がいないナスモフスキー夫婦がロシアから連れて来て
生活が苦しい中、我が子同様の愛情を注いでいる犬のタプカの散歩係に
従姉のヤナと二人指名されました。
ある日散歩中にヤナと大喧嘩をしてしまい、タプカが車に轢かれてしまいました。
何年も一緒に暮らし、国を出るという長く侘しいルートを一緒に旅して来た、
いわば “ 我が子 ” ですよね。
異国の同胞として家族のように接して来た隣人の不注意で死に瀕してしまうとは…
なかなか想像がつきませんが、かなりつらかろう… ラストはちょっと寒気がしました。
『世界で二番目に強い男(The Seond Strongest Man)』
1984年、カナダで重量挙げの選手権が開かれ父が審査員を務めることになりました。
ソ連選手団のコーチは父の元パートナージスキン、花形選手は父が見出したセリョージャ、
ホテルに二人を訪ねて行くと、KGB職員は父の顔見知りでした。
父と母はセリョージャを食事に誘うことにしました。
セリョージャはソ連ではスターで、少年が普段着れないような高い服を買ってくれるのね。
ですが自由はないの、KGBが常に彼の行方を把握しております。
どちらの暮らしが羨ましいかというのは聞くまでもないですが
自由と知る権利を奪われた国が存在した(する)という事実はあるんですよね。
異なる主義を掲げる二つの世界を知る人たちの複雑な心境が語られているような気がします。
『ミニヤン(Miniyan)』
祖母の死後、人脈を駆使し苦労の末祖父が入居したユダヤ人国際結社が保有する住宅には
男二人で暮らすハーシェルとイツィクがいました。
二人にはある噂があり、入居者たちは二人を追い出して自分の知人を入居させようと
ガバイ(ユダヤ教指導者)のザルマンに詰め寄ります。
連れ合いの死後同性二人が暮らすというのは、女性同士だとけっこう涙あり笑いあり的な
物語になりやすいイメージなんですが、男性同士だと陰鬱になりそうですわね…
独りになって寂しくなった者同士、集まって暮らしてもいいじゃないか! 優しく見守ろう。
イヤ〜な話のまま終わるかと終わったら、最後の最後にザルマンがっ…見直しましたよ。
そうねぇ…アーウィン・ショーとかマラマッドを読んだ時にも
同じような印象を受けたような気がしますが、もう少し個人的なテーマだったんですよね。
この一冊からは異国における同胞たちの強い繋がりが滲み出ている気がします。
ロシア系ユダヤ人コミュティというのがかなり強固なものだ、というのはわかりました。
それが国民性によるものか、移住の事情によるものか…それはよくわかりませんが
移住者のほとんどが嫌々国を出て来たということも感じられました。
しかし、追放された同胞だからというだけで寄り集まった人々…
故国ではまったく接点がないような身分・職業・地域の人たちの寄せ集めです。
仲間のようでいて見え隠れする優越感や劣等感、意識の違いなど
おつきあいは簡単ではなさそうです。
ソ連が崩壊した後、作者一家や移住を嘆いていたコミュニティの人々が
ロシアに里帰りができていたらよいですね。