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Channel: まりっぺのお気楽読書
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『少年少女』ただただ微笑ましい

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NOS ENFANTS 
1886年 アナトール・フランス

お子供たちのことを書いた小説は大きく二分されると思います。

ひとつは子供の目から見た素朴で純粋な微笑ましいお話し、
もうひとつは子供の中に潜む「まさか」な悪意を書いた肌寒いお話し。
ふたつがブレンドされていることもありますが
大まかにいうとそんなテーマが多いんじゃないかしら?

この『少年少女』は徹頭徹尾 “ 愛くるしい ” 子供たちのお話しでした。
裕福な家の坊ちゃまやお嬢ちゃま、豊かな自然に囲まれた農家の兄弟姉妹、
厳しい環境の中で育つ海の子、などなど、様々な子供たちが登場しますが
皆可愛らしくて抱きしめたくなるような姿が垣間見えるお話しでした。

特に好きだったお話しをいくつかご紹介します。

『カトリーヌのお客日』
5時になったのでカトリーヌはお人形を集めました。
カトリーヌは綺麗なお人形ばかりに話しかけます。
おやおや、お客様をもてなす女主人として、それではいけませんね。

教訓的なお話しが無い中では唯一お嬢様教育的な一文がありましたが
「これこれ」と優しくお爺さまが諭すような感じでした。
この本を読んで自然にマナーを身につけて欲しいという心遣いでしょうか?

『回復期』
病気にかかって寝込んでいたジェルメーヌの側には一緒に病気になったお人形がいて
アルフレッドがお医者様よろしく脈をとってくれます。
病気の間、リュシィはずっとジェルメーヌの部屋で勉強や縫い物をしてくれました。

心細い病の最中は、人々の優しさが身にしみますよね。
普段は喧嘩ばかりの兄弟姉妹の温かさにホロリときます。

『落ち葉』
秋になりました。
ピエールとバベとじゃのは山羊や牛のために落ち葉を拾いに行きます。
大人たちに混じって、幼い子供たちも真面目に働きます。
誰一人口をきく者はいません。

子供たちが大人と同じように働くことに誇らしさを感じている様子が
ありありと浮かびます。
親の仕事にプライドを持ち、成長して、逞しく継いでいくのでしょうね。

『シュザンヌ』
シュザンヌは父に連れられてルーブルを訪れました。
古代の彫刻を前にしたシュザンヌは「大人たちも人形を壊すのね」と思います。

子供にこんなもの見せてもさぁ…なんて思うことがありますが、いかんいかん…
作品の意味はわからなくても感じさせることを大切にしなさい、という教訓か?

私が2〜3行でさらっと書くと、なんてことないすっとこどっこいな内容になっちゃいますが
さすがのアナトール・フランスが書くと濃密な可愛さ溢れる物語になってますのでね…
安心して読んでほしい…

全ての子供たちに頬ずりしたくなりますよ。

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