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Channel: まりっぺのお気楽読書
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『崩壊 フィッツジェラルド作品集3』フィッツジェラルドならではの一冊

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SHORT STORIES BY F.SCOTT FITZGERALD 
スコット・フィッツジェラルド

この本には11篇の小説と6篇のエッセイらしきものがおさめられています。
やはり『バビロン再訪』はいいですね〜、何度読んでも。
それ以外は未読でした。

私は、小説の方は本当に面白く読めたのですが、エッセイはダメでした。
だって、この人は作家になって本当に幸せだったのだろうか? とまで思えるほど
苦悩が紙面上を覆っているようなもんで、こっちまでどんよりしちゃってね…
でも、ものすごくよい編集だと思いました。

表題の『崩壊』はエッセイです。
面白かった小説の方からいくつかご紹介します。

『異国の旅(One Trip Around)/1930年』
二十代のネルソンとケリー夫妻は、中東の旅の途中で感じのいい若夫婦を見かけた。
2年後、ケリー夫妻はモンテカルロにいてパーティーに明け暮れる毎日を送っていた。
ネルソンの浮気がわかった日、二人は以前中東で見た若夫婦を再び見た。
ケリー夫妻はその後パリへ、そしてスイスへ移り住む。

若くして大金を手にした好奇心いっぱいの夫婦が、大金故にどのように変貌していくか…
宝くじに当たったら… 大きな遺産が入ったら…
きっと皆さん、有意義な使い方を思い描いていると思いますが、しょせんあぶく銭なのね〜
人間は弱いものだなと思わされます… それでも当たってほしいけどさ。

『遠すぎた出口(The Long Way Out)/1937年』
若く幸福なキング夫人は、二人目の子供の出産後、長い昏睡状態に陥った。
目覚めてからも長い回復期を経て、やっと夫との小旅行に出かけられるまでに回復した。
出発の日、夫人が準備をすませて、入院している病院のホールに降りて行った頃
夫は交通事故に遭い、2〜3時間しかもたないだろうと言われていた。

これはね、もちろん奥さまも可哀想なのですが、まわりの病院スタッフが気の毒でね。
実は主人公はキング夫人じゃなくて、病院スタッフなんじゃないかしら?
最後に、人間ってこんなもの…という真理をグサッと突く一文があります。

『金づるフィネガン(Financing Finnegan)/1938年』
エージェントのキャノン氏の事務所でも、出版者のジャガーズのところでも
フィネガンはちょっとツイていないが、もうすぐ良い作品が書き上がると聞かされた。
そして二人とも、相当の金をフィネガンに貸しているらしい。
数ヶ月後、フィネガンは北極旅行に出かけ消息を絶った。

どっちかっていうと、金ずるはキャノン氏やジャガーズのことを言うんじゃないの?
貸す方も後には引けなくなっちゃってるという、おかしくも哀しい話しですけど
フィッツジェラルドも原稿料の前借りをけっこうしていたというから
貸してくれた相手をちょっと茶化してるような気がしないでもない…

主人公が作家だったり脚本家だったり、売れっ子だったり落ちぶれてたり
舞台がハリウッドの映画会社だったりパリだったり、というのは
勝手知ったる… という感じですよね。

それから、大金を手にして放埒になる夫婦の話、精神を崩していく妻、
アルコールが手放せない絶望的な男、というのも体験談に近いものがあります。

小説とはいえ、けっこうフィッツジェラルドの人生とリンクする一冊ですね。
売れっ子からすべり落ちかけている時期だったのでしょうか?
ユーモアを交えてはいますが、悲愴なつぶやきみたいです。

巻末の年譜と解説にけっこうな量が割かれています。
私はもちろんちゃんと読んでないのですが、パラパラーとめくってたら
1940年に亡くなっているのですね?
エッセイは1936年〜37年に書かれています。
精神的にも経済的にも苦しい時期に書かれていたわけですね。
あの暗さと重さ… なんとなく納得…

自分が得意なテリトリーを題材にしている作品も、過去を懐かしむというより
金策のために短編を多産しようとテーマを選んでいたのかしら?と考えると
かなりせつないものがあります。

でも単純に作品として読めば、(小説部分は)本当に楽しめる一冊でした。

ひとことゲームコーナー
ほしの島にゃんこがやっとバージョンアップできて、他の人の島に行けるようになったのね
そしたら皆さんすごくて、自分の島がやけに殺風景に思える… いろいろアイテムを購入しなければならないかも

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