THE BROOKLYN FOLLIES
2006年 ポール・オースター
ドラマや娯楽映画などではハッピーエンドが喜ばれるものですが
小説では大団円だと、できすぎた話だとか言われがちな気がします。
なんとなく不幸を引きずっていそうだったり、曖昧な結末な方が深みがありそうでね…
勝手な思い込みですが。
このあいだ読んだオースターの『最後の物たちの国で』がまさにそんな感じでした。
ものすごく面白かったので、すぐにこの本を買って読んでみました。
この『ブルックリン・フォリーズ』もとても楽しく読んだのですが
『最後の〜』とはまったく違うタイプの面白さで、正直びっくりしました。
本当に同じ作者&訳者(柴田元幸氏)なの?
舞台はニューヨークのブルックリンです。
主人公はネイサン・グラスという59歳の男性です。
肺癌を宣告されて仕事を早期退職し、そのうえ妻から離婚されてしまい
「もうな〜んにも無い」と、静かな死に場所を求めて
3歳の時に離れたブルックリンに56年ぶりに戻ってきました。
道楽以外に特にやることもなくブラブラしているネイサンなのでしたが
ある日、たまに行く古本屋で7年ぶりに甥に再会します。
甥のトム・ウッドは子供の頃から頭がよくて、国文学の博士になるのでは?と
ネイサンが期待をよせていたのですが、2年前に大学をやめてタクシーの運転手になり
半年前から古本屋の店員として働いていました。
物語の中心は、この、全て無くして世捨て人のようになった初老の男性と
すっかり太っちまった、エリート脱落者のがっかりな甥の二人なのですが
トムと再会したことで、ネイサンはいろいろな人と繋がりを持つようになり
彼らのトラブルに巻き込まれ、忙しい毎日を送ることになります。
あらすじはやめといて、主な登場人物を紹介しますね。
オーロラ、通称ローリーはトムの美しい妹です。
二人の母、すなわちネイサンの妹が再婚した後家を飛び出して、未婚の母になり
アダルトビデオの女優になり、ミュージシャンと駆け落ちして別れ
その後一度トムに「結婚する」と言いにきたきり3年間行方不明になっています。
ルーシーはローリーが生んだ9歳の娘です。
ある日ひょっこりトムのアパートを訪ねて来ますが、絶対に母親の居所を言いません。
幼いけれど、絶対自分の意志を通そうとする頑固者です。
トムが働く書店のオーナーは、ハリー・ブライトマンという愉快なゲイですが
過去にシカゴで絵画詐欺を働き服役したことがあります。
ネイサンとトムに、大金を手にするチャンスをつかんだと打ち明けます。
トムが想いを寄せるナンシー・マズッケリは、アクセサリーを作っている人妻で
子供たちに愛情を注ぐ “ B.P.M(ビューティフル・パーフェクト・マザー )” です。
ナンシーの母ジョイスは数年前に夫を亡くした寛大な未亡人で
ネイサン&トム一族は後々とってもお世話になります。
ここまでが主要な人物で、物語の展開に欠かせないのが以下の方々。
ネイサンが妻と離婚後にけんかしてしまってから音信不通の、母親似の娘レイチェル。
古本屋の店員でハリーの恋人、ドラッグ・クィーンでもあるルーファス。
ネイサンとトムとルーシーが数日間泊まったインのオーナー、スタンリーと娘ハニー。
ローリーの夫で、ある宗派の狂信者デイヴィッド・マイナー。
ハリーの元恋人で画家のゴードン・ドライヤーは、シカゴの詐欺の首謀者でした。
もっともっといるのですが、とりあえずこれぐらい押さえておけば大丈夫かと…
あとは死ぬだけ… と思っていたネイサンですが、ここからはスーパーマン並みに活躍!
ある人を窮地から救い出し、ある人の不正を暴き、ある人の恋を(少し)手助けし
誰かが悲しんでいれば話を聞いてあげて、誰かが迷っていれば相談相手になり
店番もするし、シッターもするしで、皆から頼られっぱなし。
ちなみに、ネイサンはもと保険外交員、しかも成績優秀だったらしい。
そういうことも頼りにされる人柄になにか関係しているのでしょうか?
そんなわけで、物語は皆ハッピーにラストを迎えます。
あ、不幸かもしれない人が二人いますけど… 考えようによっては三人かな?
まぁ、それはおいといて…
ネイサンには恋人ができるし、あることがきっかけでレイチェルの愛を取り戻すし
癌は転移してないしといいことだらけ。
トムはやりたかったことができるだけの大金を手にし、結婚もしたし、痩せたしね。
ローリーも幸せ、ナンシーも幸せ、ハニーもジョイスも幸せ、ばんざーい!!
どーよ? これ。
少しぐらいひねりがあるかと思いましたが、そんなことはなく、紙面は幸せ一杯よ。
この屈託の無さ、いいですね。
しかも “ いい話〜 ” “ 泣けます〜 ” 臭がしないところがよいですね。
そういうのはウンザリ
ひねりは無いと書きましたが、少し読者に刺激を与えてあげようという小技は効いています。
読み終える頃にはこっちもハッピーになって、まさに言うこと無しでした。
けれども最後の最後に「幸せ!」とも言ってられない、世界的な不幸が示唆されます。
もしかすると、登場人物の中に、この不幸に巻き込まれてしまう人がいるのかも…
その不幸の影と、主人公の最後のひと言が印象的で、やけに気にかかるラストでした。
最後の最後の行だけ書いちゃうね。
「わが友人たちよ、かつてこの世に生きた誰にも劣らず、私は幸福だったのだ。」
ね! 気にならない?
ひとことK-POPコーナー
SISTERのヒョリンがソロ出したでしょ? 2曲MV見ましたが… さすがいろっぽい… いろっぽすぎる
でも曲はいいんだよねぇ、歌が上手いからさらに良く聞こえるのね
2006年 ポール・オースター
ドラマや娯楽映画などではハッピーエンドが喜ばれるものですが
小説では大団円だと、できすぎた話だとか言われがちな気がします。
なんとなく不幸を引きずっていそうだったり、曖昧な結末な方が深みがありそうでね…
勝手な思い込みですが。
このあいだ読んだオースターの『最後の物たちの国で』がまさにそんな感じでした。
ものすごく面白かったので、すぐにこの本を買って読んでみました。
この『ブルックリン・フォリーズ』もとても楽しく読んだのですが
『最後の〜』とはまったく違うタイプの面白さで、正直びっくりしました。
本当に同じ作者&訳者(柴田元幸氏)なの?
舞台はニューヨークのブルックリンです。
主人公はネイサン・グラスという59歳の男性です。
肺癌を宣告されて仕事を早期退職し、そのうえ妻から離婚されてしまい
「もうな〜んにも無い」と、静かな死に場所を求めて
3歳の時に離れたブルックリンに56年ぶりに戻ってきました。
道楽以外に特にやることもなくブラブラしているネイサンなのでしたが
ある日、たまに行く古本屋で7年ぶりに甥に再会します。
甥のトム・ウッドは子供の頃から頭がよくて、国文学の博士になるのでは?と
ネイサンが期待をよせていたのですが、2年前に大学をやめてタクシーの運転手になり
半年前から古本屋の店員として働いていました。
物語の中心は、この、全て無くして世捨て人のようになった初老の男性と
すっかり太っちまった、エリート脱落者のがっかりな甥の二人なのですが
トムと再会したことで、ネイサンはいろいろな人と繋がりを持つようになり
彼らのトラブルに巻き込まれ、忙しい毎日を送ることになります。
あらすじはやめといて、主な登場人物を紹介しますね。
オーロラ、通称ローリーはトムの美しい妹です。
二人の母、すなわちネイサンの妹が再婚した後家を飛び出して、未婚の母になり
アダルトビデオの女優になり、ミュージシャンと駆け落ちして別れ
その後一度トムに「結婚する」と言いにきたきり3年間行方不明になっています。
ルーシーはローリーが生んだ9歳の娘です。
ある日ひょっこりトムのアパートを訪ねて来ますが、絶対に母親の居所を言いません。
幼いけれど、絶対自分の意志を通そうとする頑固者です。
トムが働く書店のオーナーは、ハリー・ブライトマンという愉快なゲイですが
過去にシカゴで絵画詐欺を働き服役したことがあります。
ネイサンとトムに、大金を手にするチャンスをつかんだと打ち明けます。
トムが想いを寄せるナンシー・マズッケリは、アクセサリーを作っている人妻で
子供たちに愛情を注ぐ “ B.P.M(ビューティフル・パーフェクト・マザー )” です。
ナンシーの母ジョイスは数年前に夫を亡くした寛大な未亡人で
ネイサン&トム一族は後々とってもお世話になります。
ここまでが主要な人物で、物語の展開に欠かせないのが以下の方々。
ネイサンが妻と離婚後にけんかしてしまってから音信不通の、母親似の娘レイチェル。
古本屋の店員でハリーの恋人、ドラッグ・クィーンでもあるルーファス。
ネイサンとトムとルーシーが数日間泊まったインのオーナー、スタンリーと娘ハニー。
ローリーの夫で、ある宗派の狂信者デイヴィッド・マイナー。
ハリーの元恋人で画家のゴードン・ドライヤーは、シカゴの詐欺の首謀者でした。
もっともっといるのですが、とりあえずこれぐらい押さえておけば大丈夫かと…
あとは死ぬだけ… と思っていたネイサンですが、ここからはスーパーマン並みに活躍!
ある人を窮地から救い出し、ある人の不正を暴き、ある人の恋を(少し)手助けし
誰かが悲しんでいれば話を聞いてあげて、誰かが迷っていれば相談相手になり
店番もするし、シッターもするしで、皆から頼られっぱなし。
ちなみに、ネイサンはもと保険外交員、しかも成績優秀だったらしい。
そういうことも頼りにされる人柄になにか関係しているのでしょうか?
そんなわけで、物語は皆ハッピーにラストを迎えます。
あ、不幸かもしれない人が二人いますけど… 考えようによっては三人かな?
まぁ、それはおいといて…
ネイサンには恋人ができるし、あることがきっかけでレイチェルの愛を取り戻すし
癌は転移してないしといいことだらけ。
トムはやりたかったことができるだけの大金を手にし、結婚もしたし、痩せたしね。
ローリーも幸せ、ナンシーも幸せ、ハニーもジョイスも幸せ、ばんざーい!!
どーよ? これ。
少しぐらいひねりがあるかと思いましたが、そんなことはなく、紙面は幸せ一杯よ。
この屈託の無さ、いいですね。
しかも “ いい話〜 ” “ 泣けます〜 ” 臭がしないところがよいですね。
そういうのはウンザリ
ひねりは無いと書きましたが、少し読者に刺激を与えてあげようという小技は効いています。
読み終える頃にはこっちもハッピーになって、まさに言うこと無しでした。
けれども最後の最後に「幸せ!」とも言ってられない、世界的な不幸が示唆されます。
もしかすると、登場人物の中に、この不幸に巻き込まれてしまう人がいるのかも…
その不幸の影と、主人公の最後のひと言が印象的で、やけに気にかかるラストでした。
最後の最後の行だけ書いちゃうね。
「わが友人たちよ、かつてこの世に生きた誰にも劣らず、私は幸福だったのだ。」
ね! 気にならない?
ひとことK-POPコーナー
SISTERのヒョリンがソロ出したでしょ? 2曲MV見ましたが… さすがいろっぽい… いろっぽすぎる
でも曲はいいんだよねぇ、歌が上手いからさらに良く聞こえるのね