1961年 川端 康成
私は谷崎潤一郎の『細雪』が、京都の名所案内にもってこいだと思っていましたが
この『古都』も負けていない一冊です。
どちらかといえば、伝統行事や由緒などはこちらの方が細かくて
京都観光局に置いといてもいいのじゃない? と思いましたよ。 置いてんの?
物語の舞台はもちろん京都です。
戦後とはいえ、呉服屋と着物や帯を織る機屋がかろうじて軒を連ねている時代でした。
主人公は中京の呉服屋の美しい娘、佐田千恵子です。
千恵子は、生まれてすぐ捨てられた娘で、捨てられていた呉服屋の夫婦に
実の娘のように育てられました。
千恵子は自分が捨て子だったことを知っています。
しかし両親は、千恵子が実の子ではないことは公言していますが
千恵子には「あまりにも可愛いのでさらって来た」と言い続けていました。
で、詳しいことは省くけど、ある日千恵子の前に、同じ顔をした娘が現れるのね。
千恵子はびっくり! 相手は大喜び!!
苗子というその娘は、杉山の材木問屋で奉公をしています。
捨てられた双子の姉妹を探していて、千恵子に会えて嬉しくて仕方がありません。
千恵子も今の両親を本当の親のように思っていますが、やはり実の親は知りたいわけで
これからどうしたらいいのか迷います。
千恵子を育ててきた父親の太吉郎と母親しげも複雑な心境…
そしてなにより、千恵子に想いを寄せていた男性陣も衝撃を受けます。
生き別れの双子なんて、韓国ドラマにありがち〜
しかも千恵子をめぐる男性陣三人のうち二人は兄弟で
もうひとりは身分違い… ぞくぞくする布陣ですね。
だけど、これだけのお膳立てがありながら、この物語の人々は皆お人好しなのか
ドラマ的ドロドロは無くて、お話しはまったりと展開していきます。
あらすじより気になったのは、同じ母親から同じ日に生まれても
育った境遇ででこんなに差がでちゃうのか? という二人の性格。
たぶん根本的な部分はあまり違わず、二人ともいい娘さんなのですが
千恵子は育ちがいい分、どうしても上から目線になってるのよね。
苗子も、姉妹なんだからもう少し気楽に接すればいいのに
千恵子をお嬢さん扱いして下手に出ているし…
しつこいけど、ドラマなら逆に下心がありそうな行動に思えちゃいます。
せっかく斜陽をむかえそうな京都の伝統工芸や祭りに言及しといて
尻つぼみな感じも否めません… もったいない気がします。
ただ京都弁も手伝ってか、すごくのんびりゆったり読めた一冊でした。
しかし、面白いかといえばそうでもない…
丸くおさまりそうに見えて、二人のまっすぐで純粋な娘のせいでそうはいかず
え! そこで終わる? と、消化不良気味にラストを迎える物語でした。
読んでいる途中で妄想が広がっちゃって、ちょっとがっかりしちゃったのね。
ひとことHard Rockコーナー
夜中に『リッチー・ブラックモア・スペシャル』をやるっていうから録画して、旦那と二人でワクワクしながら見たら
通販番組〜? がっかり… でも買うかどうか迷っちゃったさ… 買わなかったけど