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Channel: まりっぺのお気楽読書
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『最後の物たちの国で』生きることだけが願いの国とは…

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IN THE COUNTRY OF LAST THINGS 
1987年 ポール・オースター

9月から異動した職場のそばに、困ったことに紀伊国屋書店がありまして
時間があるとついのぞいてしまいます。
そして、のぞいてしまうとつい買ってしまいます。
K-POPビンボーに加え紀伊国屋貧乏… 本当に困るわ

オースターは、名前はもちろん知っていたのですが読んだ覚えは無いんですよね。
紀伊国屋書店で見つけ、題名に惹かれて買った一冊です。

こういってしまうと語弊があるのかもしれませんが、すごく面白かったです。

ものすごく暗く冷たく残酷な物語なのですが、目が離せない状態で
通勤中もうとうとすることなく読み、ちょっとでも暇があれば開いて読んでました。

内容を説明するのが難しいのですが、頑張って書きますね。
よく判らなくても許してほしい…

アンナ・ブルームという女性が、ある男性に向けて書いている手紙がベースなのですが
これは彼女が、行方不明になった兄を捜しにある国を訪ねてから現在まで
どうやって生き延びてきたのか、という記録を綴ったようなものです。

その国を覆っている惨状から始まり、はびこる強奪、暴力、破壊、
襲いかかってくる空腹や寒さや、限りない物資の欠乏にどのように耐え
人々がどのように死んでいくのかが記されています。

アンナはその国に到着すると同時に荒廃しきった町を目にして呆然とします。
その時点でアメリカに引き返していればよかったのに! と思うのですが
彼女は兄を捜すために残ります。

どうやらアンナはアメリカでは裕福な家庭の娘だったようなのですが
その国では生き延びるために “ ごみ拾い業 ” の職につきます。
これはれっきとした仕事で、許可証無しにおこなうと重い刑を科せられます。
なぜかというと、その国ではゴミも死体も貴重なエネルギーだから。
勝手に拾ったり埋葬したりしてはいけないのね。

この国はかなりの無政府状態に見えるのですが、警察権力はあるし
無茶苦茶な政策や法律も生み出されているところをみると、一応国なのですね?
ただ、国民が知らないうちに政府はコロコロ変わっているようです。

アンナは19歳でその国に渡っているのですが
数年間で一生分の苦痛や恐怖を味わったような印象です。
細かくは書かないけど…

たしかにラッキーとしか思えないような展開のところもありますが
ぬくぬくと育った少女が、そこまでたくましくなれるのか… と感心するばかり。

アンナは、他人を信じられないその国で、何人かの善き人たちと親しくなりますが
皆将来を考えるより今日を生き抜くのに必死なのは変わりません。

誰と出会ってどんな事がおこったかっていうことは書きませんよ。
読んでほしいぃぃ! 引き込まれていくと思いますよ。

アメリカ、フランス、ロシアなど外国の名は出てきますが
舞台になっている国がどこを指すのかは不明です。
登場人物の名前もいろいろな国のものがあるし、人種も特定しにくい…
地域も不明だし、この国に侵攻しようとしている国もはっきりしません。

こういった小説だと『1984年』から連想される旧ソ連やヒトラー政権下のドイツ、
『メトロポリス』から思い浮かぶ産業革命下のイギリスやドイツなど
モデルになっていそうな国がありそうなものですが
いくらなんでもこんなにメチャクチャな国は無いでしょうよ! と考えたいですね。

けれども、まったく地上に存在しない架空の国の、完全なフィクションかというと
そうも思えないところが、恐ろしさを感じさせます。

心温まる話しではないですし、期待が高まる展開でもありません。
中には汚い描写や残酷なシーンもあります。
ラストでは祈るだけ… という感じでしたが、不思議と清々しく読み終えることができました。
こういう気分が味わえるから、読書ってやめられないんですよねぇ。

ひとことK-POPコーナー
実は私、ハングル文字が読めるんです(覚えちゃうと簡単なんです
だからバラードだと歌詞カード見ながら歌えるのですが、意味がわからないという… 今さら単語は覚えられないと思ふの

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