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Channel: まりっぺのお気楽読書
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『灰色の輝ける贈り物』極寒の冬を纏った一冊

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ISLAND
アリステア・マクラウド

どこでどうして買ったのか、まったく覚えてないのですけれど
あったから読んでみました。
さ、寒いよぉ… まさに灰色の世界観です。

私は、たまに浮かれ気分を鎮めてしっとりしたい時などに
日々の生活のちょっとした煩いに苦悩する主人公像を想像しながら、本を読むのが好きです。
ウィリアム・トレヴァーとかハーディなんかが、ほどよく暗くていいのですが
この作家の暗さは、ちょっとベクトルが違う気がする…

作家の経歴によるものか、漁や炭坑などを題材にしたものが多いようです。
もちろん、どちらも危険な仕事だとは思うのですが
ハンパじゃない “ 死との隣合せ ” 感が充ち満ちています。

カナダの作家で、アリス・マンローと同じぐらい寡作らしいのですが
多作じゃなくて逆に良かった気がする…書く方もつらいでしょうが、読む方もしんどいわ。

8作おさめられています。
気になったお話しをいくつかご紹介します。

『帰郷(The Return)/1971年』
10歳の撲は、初めてお父さんの故郷ケープ・ブレトンを訪ねる。
お父さんは列車の中でも待ちきれない様子で、お母さんはあきれている。
大きな家に着くと、おじいちゃんとおばあちゃんは、お父さんが遠くの町で結婚して
嫁の実家の言いなりになっていることを責める。

この少年のお父さんは、都会に出て金融界で成功し、裕福な生活を送っています。
本当なら両親や兄弟姉妹に大歓迎されてもいいと思うのですが
この島の人間としては間違った生き方をしているみたいです。
親のそばで慎ましく生きるべきか、離れていても親が誇れる成功者になるべきか…
難しいわね… 親次第ってとこもあるし。

『秋に(In The Fall)/1973年』
もうすぐ父が出稼ぎのために家を発つという、11月の第2土曜日
母が、炭坑時代から父のそばにいる老馬スコットを売ると宣言した。
父も子供たちも反対だったが、母の言い分は理解できた。
そこへ家畜商人マクレイがやってきて、スコットはミンクの餌になると言う。

ドナドナ状態… でももっと残酷。
馬を売る決心をしたお母さんを責められないってことはわかるの。
わかるんだけど、どうしても悪役をつくらずにおかない人の世の悲しさ…
子牛でなかっただけが救いかしら? いや、老馬の方が哀れか?

『失われた血の塩の贈り物(The Lost Salt Gift of Blood)/1974年』
4000キロの旅を終えて最後の道に立つと、魚釣りをしている4人の少年と出会った。
そのうちの一人、ジョンを迎えに来た老人に連れられ、彼の家に向かった。
レンジの前にいた老婦人は、一瞬敵意を見せたが、思い直したようだ。

この旅人は、たまたまそのカナダの果ての家を訪れたわけではなくて、訳があるの。
私には、どうしてそうなるのぉ? というラストに見えたんですけどね。
どちらが子供にとってよいのかしら? 大人のエゴに思えましたが… 哀愁はあったけど。

特に冬に限定された物語ばかりではなくて、たぶん、夏の物語もあるのですが
読んでいて頭に浮かぶのは、冬の波が白い泡をたてて押し寄せる黒い断崖絶壁の風景。
寂しく寒い冬の情景なんですよね。

それ以外で印象に残ったのは、じれったさでしょうか?
そのじれったさは、登場人物の行動にイライラさせられるというのではなくて
どちらが、誰が、正解なのかがわからない、というもどかしさです。

もちろん、人生に完全な正解と不正解はないと思うのですが
小説に関しては、読者なりに正解をだせばいいものだと思っていました。
だけどこの一冊に関しては、どちらを選んでも、幸福かもしれないし不幸かもしれない、
どっちを選べばいい? ということが、想像の世界の中であれ決められなかったんですよね。
もっと人生を噛み締めた後で読んだら、もう少し理解できるのかもしれませんが…

アリステア・マクラウドは、新潮クレストから『冬の犬』という短篇集も出ているのですが
今のところ手に取る気になれないでいます。
暗いのはけっして嫌いじゃないんだけど、もう少しユーモアがほしいのね… わがままですか?

ひとことK-POPコーナー
録画してたTVKのPOP-PARADEを見たらCNBLUE特集だったんですけど
彼らはもはやアイドルではない気がする…ヴィジュアル抜きで十分カッコいいバンドに見えますね 

『厭な物語』私は冷酷なのかしらね?

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DISTURBING FICTION 
A・クリスティー/P・ハイスミス/M・ルヴェル/J・R・ランズデール/S・ジャクスン
U・ソローキン/F・カフカ/R・C・マシスン/R・ブロック/F・オコナー/F・ブラウン

アメリカ生まれの作家が多かったので、とりあえずアメリカの作家にいれてみました。

それにしてもこの表紙…
書店で “ 読後感最悪 ” というオビを見て、フラフラと手にとった一冊。
でも、全体的にはそんなにイヤ〜な感じではなかったのですけれどもね、私は。

とりあえず、全篇で人が死にます、自然死ではなく。
そのパターンがいろいろあって、たしかに嫌悪を覚えるものもありました。
ただ、ストーリーの中で必然と思われるものや、哀愁が感じられるものもあり
“ 厭 ” というひと言ではかたずけられないように思えました。

11篇のお話しの中で、私が心から、やな感じ〜 と思ったのは4篇です。
でも、あくまでも私の感想であって、その中に悲哀を見つけられる方もいるかもしれません。

印象に残ったお話しをいくつかあげてみます。

『フェリシテ(Felicite)/モーリス・ルヴェル』
フェリシテは娼婦だが、慎ましく、身なりやふるまいも堅気のようだったので
街の人々は大目に見て、挨拶なども交わしていた。
ある日フェリシテは、四十代の紳士ムッシュウ・カシュウに出会った。
二人が毎週土曜日の夜に会い、静かに語り合うようになって2年がたった。

『くじ(The Lottery)/1948年 シャーリィ・ジャクソン』
6月27日のからりと晴れた朝、300人の村人たちが広場に集まってくる。
子供たちは走りまわり、男たちは仕事や政治の話をし、女性たちもエプロンを外して。
いよいよ進行役のサマーズ氏が登場して、くじが始まった。

『赤(Red)/1988年 リチャード・クリスチャン・マシスン)
彼は、暑い中を歩き続けた。
探しているほとんどのものは袋の中に拾い集めたが、それでも歩いた。
人だかりが彼を待っているが、彼はある地点で何かに気づき、そっと座り込んだ。

『善人はそういない(A Good Man Is Hard to Find)/1953年 フラナリー・オコナー
祖母はフロリダへ行きたくないと言い続けていたが、息子のベイリーは聞いてくれず
結局ベイリー夫婦と幼い三兄妹とともに車に乗り込んだ。
もうすぐジョージアを抜けようかという時、祖母は若い頃に訪ねた農園のことを思い出して
そこへ寄って行こうと言い出した。

いかがでしょう?
長閑そうに思える話もありますが、結果から言ってどれも死者がでます。

『フェリシテ』は、私にはものすごく悲しい話に思えましたが
こう言っちゃなんだけど、死に方は特に衝撃的ではないのよね。
でも女性として、気持がわからないでもない、いえ、かなり共感できるお話しでした。

以下3篇は、死に至るまでの過程がものすごく残酷ですが、それでも悲哀が漂ってました。

『くじ』は、人間の集団心理の恐ろしさが…
こういう心理がけっこう悲劇を生んでいるのではないかと思わされます。
あと、伝統ってどこまでこだわって守るべきなのか、考えさせられますね。

『赤』は、主人公の気持を思うと、ものすごくつらい話しです。

『善人はそういない』は、ものすごい作り話だけど、ものすごく正直な内容に思えました。
にぎやかに旅を続けていた一家が感じた恐怖を考えると、死ぬことより怖いわ。
最後にベイリーが母親思いのところを見せるのよ… 泣けたね。

私がいい印象を受けなかった話について、なぜでしょう?と考えてみると
他の物語のように、死の必然性が感じられないということでしょうか? 理由無き死?
罪の意識が欠落している人がまわりにウジャウジャいるのかと思うと、背筋が寒いわ。
どの話しかは書かないけどね。

この本の落ち着きどころは、死=厭、ということになるのかもしれませんが
人が死ななくても厭な話はたくさんあります。
むしろそっちを読んだ方が最悪な気分になれるかも… なりたきゃね。
バルザックなんてどうでしょう?

ま、厭な話しは世の中にいっっっっぱい転がっているので
あえて読まなくてもいいのかもしれませんけど…

ひとことK-POPコーナー
テソンが6月にやって来るらしい! その前に韓国でソロアルバムも出るんですってね!!
両方待ち遠しい!!! けど、BIGBANGのカムバックはいつなのかしら? そちらも楽しみです 

『ロザムンドおばさんの贈り物』風景は綺麗らしいよ

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“A GIRL I USED TO KNOW” AND OTHER STORIES 
1985年、1991年 ロザムンド・ピルチャー

表紙から見ても、◯◯おばさんの〜という響きから言っても
善い人の善い話しオンパレードなんでしょうね、と思ったのですが
紀伊国屋書店で見かけて、ふらふらと買ってしまいました。
そしてその予感は、概ね間違っていませんでした。
ま、たまにはこんな読書もいいかもね。

7篇のゆんるりとした物語がおさめられています。

『忘れられない夜(An Evening to Remember)』
アリスン・ストックマンが、夫の社長夫妻を夕食に招く明日の準備に明け暮れ
疲れ果てて居間に座っているとベルが鳴り、正装した社長夫妻が立っていました。
アリスンは日にちを間違えてしまったようです。

夫も怒らず協力し、ベビーシッターのイヴィーも残業を願い出て夕食会は大成功!
良かったね… と言いたいところですが、後日談があります。
うーん、みんなが心が寛い、いい人で良かった。

『長かった一日(Toby)』
早春のある朝、郵便配達が、ビル・ソーコムが亡くなったというニュースを伝えます。
8歳のトビーは、62歳のビルと親友でした。
遊ぶ気にもならず、もう一人の友人である大工のウィリーに会いに行きました。

この話は、実はラブ・ストーリーでもあるのですが、その部分はおいといて
イングランドの田舎感がすごくあふれていて好きな話です。
大人がみんな、子供好きないい人で良かった。

特に好きだったのは2篇ですね…
それ以外も、The 英国! という感じで、けっして嫌いではありません。

それに、ミス・マープルのセント・メアリ・ミードや、
ミス・リードが描くスラッシュグリーン、『赤毛のアン』のアヴォンリーなど
お互いをみんな知っているっていう村の話、大好きですよ。

なんだけど、みんないい人でね〜
悪人を出せとは言いませんが、曲者がいないのよ。
そういう人が物語を面白くすると思うのだが、どーにもこーにも見あたらないの。
だからちょっと物足りなさを感じています。

作家のピルチャーはベストセラー作家で、翻訳もたくさんでているそうです。
そうね… 最近殺伐とした物語ばかり読んでいるから、ホッとしたいわ…という時に
読むとよさそうですね、そうしよう。
紅茶とスコーン片手に…というのが似合うんでしょうね、きっと。
そんなに優雅に本読むことないからさぁ…悲すぃ…

ひとことオリンピックコーナー
一億総歩夢君に詳しくなっている状態の今、新潟県村上市ってなんか聞いたことあるな…と思ったら
以前村上春樹さんが訪ねてませんでしたっけ? 村上新聞社に行って、〆張鶴飲むの…どの本に書いてあったんだっけ?

『レイモンド・カーヴァーの子供たち』もう一回カーヴァーを読もうっと!

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20 UNDER 30 
1986年

一時期、少しだけレイモンド・カーヴァーにはまったことがあります。
村上春樹さんの影響なんですけどね。
たぶん、その時に買ったんだと思うけど、例によって覚えがないので読んでみました。

レイモンド・カーヴァーに影響を受けたであろう
(当時の)若手の作品が11篇おさめられていますが
聞いたことがあるのはデイヴィッド・レーヴィットだけでした。

どこらへんがカーヴァーっぽいのか、文学をちゃんと学んでいない私には
わかったもんではありませんが、そう言われりゃそうかもね。

ま、カーヴァーっぽいのかそうでないのかは別にして
印象に残ったお話しをいくつかご紹介します。

『感謝祭(Thanksgiving Day)/スーザン・マイノット』
ガスとロージーのヴィンセント夫妻と6人の子供たちは
感謝祭にガスのパッパとマッマの家を訪れる。
つづいて、ガスの兄チャーリーの一家と、姉フランの一家も到着した。

息子夫妻に娘夫妻、おおぜいの孫たちに囲まれて、郊外で過ごす休日なんて
隠居した夫婦の理想よね!といいたいところですが、
長年連れ添ってきた夫婦の刺々しいやりとりを聞かされる身にもなってほしい。
自分たちだけの愛情表現だとしても、孫が来ている間ぐらいはさぁ…

『配管工(This Plumber)/ブレット・ロット』
今日やって来た配管工は、まず、ノックが良かったし、握手の仕方も心得ていた。
妻が出て行ってがらんとした部屋のバスタブを見ながら、彼が水漏れについて語る。
彼が帰ろうとした時、つい引き止めてしまった。

こ、これは… この後禁断の愛に突入か? と思ったら、男らしい話でした。
“ プロフェッショナル ” を目にした時の、男性の胸の高鳴りが感じられる一編。
でもこの配管工の人、水漏れを直せなかったんだけどさ、それはおいといて…

『ドリーマー(Dreamer)/マージョリー・サンダー』
わが家には、何代かに一人夢想家が生まれるという伝説がある。
パパは、パパの母ギッテルもその一人だと考えているらしかったが
ママは、ギッテルはただの自分勝手な女だと言う。

ここからギッテル伝説が語られるわけですけど
パパとママのどちらの言い分が正しいのかは、読者次第でしょうねぇ…
私は好きだけど、近所にいたら嫌いかもしれないし、友だちにはなれそうにないね。
でも、職場にいたら好きかもしれない…自分はできないからね、憧れの部分もあります。

カーヴァーの影響を受けているからといって、カーヴァーのような小説を書くというのが
正しい後継者の姿ではないですよね、きっと。
自分のオリジナリティやカラーをどれだけ反映できるかが才能の成せる技なのでしょうね。

影響を受けたからって、同じようなスタイルで同じような歌を歌っていたら
コピーバンドの延長で終わってしまうってことですか? って
…この例えはどうなんだ?

カーヴァーという作家を意識しすぎなければ、面白かったのかもしれないし
でも、そうでなければ真剣に読まなかったかもしれない…
本の題名にかなり踊らされてしまったような気がしています。

そこで、本家カーヴァーってどんな感じだったかしら? と思い出そうとしてみました。
いくつかの話は覚えていたのですが、あまりちゃんと思い出せないので
もう一回読んでみることにします。

ひとことオリンピックコーナー
昔からフィギュアスケート好きなんだけど、職場のディープなフィギュアファンNさんによると
羽生君は羽生キュンて呼ばれているんですってね! それ聞いて名付けた方のセンスに感動しちゃいました

ポーランド公レシェク2世妃 グリフィナ

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肖像画で損してるかもしれない…
レシェク2世妃 グリフィナ・ハリツォカ

1248〜1309/在位 1279〜1288

コンラト1世とヘンリク2世の血をひくレシェク2世の妃は
ハールィチ公子ロスチスラフとハンガリー王ベーラ4世王女アンナの公女グリフィナです。
        
ボレスワフ5世がアレンジして、1265年に結婚しました。

レシェク24歳、グリフィナ17歳ですね。
むちゃくちゃな年の差で結婚させられてしまう王女たちがいることを考えれば
バランスがとれている夫婦だと思うのですが、この二人、6年後には別居します。

グリフィナは「夫が不能なので!」と公式に断言しました。
これに対してレシュクは「そんなことない!!」と完全否定。
国を巻き込んでの大がかりな夫婦喧嘩ですが、他の理由にしとけなかった?

結局、ボレスワフ5世が4年後に二人を強制的に復縁させたわけですが
恥ずかしいことを公言しちゃった嫁と仲良くできるわけないと思うけど…

1285年、レシェク2世に対する反乱の時には、グリフィナはクラクフのヴァヴェルに避難して
市民の保護下に入りました。

1287年、モンゴルの三回目の侵攻の時には
レシェク2世とグリフィナはハンガリーに逃亡しました。

いろいろありましたが、度重なる大きな危機に
「こりゃ夫婦喧嘩してる場合じゃないな」と、関係が修復されたのかもしれませんね。
ただ、グリフィナの言ったことが正しかったのか嘘かは別にして、二人にお子はいません。

1288年にレシェク2世が亡くなると、グリフィナの甥にあたるヴァーツラフが
ポーランドの後継者争いに名乗りを上げました。
この件にグリフィナが絡んでいるのかどうかは不明です。

グリフィナは未亡人になると、スタリソンチのクレア派の修道院に入りました。
この修道院の院長は聖キンガです。
家系図は省いたけど、聖キンガは、グリフィナの母アンナのお姉様にあたります。
キンガの死後はグリフィナが修道院長になりました。

1300年、甥のヴァーツラフと婚約したプシェミスル2世の王女リクサ・エルジェビエタの
監督役としてボヘミアまで付き添いました。

グリフィナの没年ははっきりしていませんが、たぶん、1509年と言われています。
ポーランドではなく、プラハのクレア派修道院に葬られました。

肖像画はなんだか恐ろしそうな女性に見えますね。
だけどこれは、レシェクとケンカしてる場面の絵なのでしかたないと大目に見てほしい…
いくら伯母がいるからって、清貧がモットーのクレア派修道院に入っているあたり
無欲で心優しい人だったかもしれないじゃない?

それにしても、 ハンガリー・ポーランド・チェコと、東欧の王侯家の関係は
どんどん複雑さを増していきますね。
さらに、ロシアやドイツも加わり、家系図に書ききれない… 頭の中がぐちゃぐちゃ〜

(参考文献 Wikipedia英語版)

ひとことK-POPコーナー
少女時代と2NE1の同時カムバック、目が離せないわ! 各音楽番組も華やかになりそうですね
SMとYGから所属アーティストが応援にかけつける…なんてことないかしら?

『世界短篇文学全集14 アメリカ文学20世紀』出版社にお願い!

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古本屋さんで見つけて買った後で『アメリカ短篇24』の装丁違い?と思ったのですが
いくつか重複していたっものの、違うものでした。 よかった

こちらも24篇おさめられています。
『アメリカ短篇24』にもあった『いちご寒』『亡き妻フィービー』をはじめ
フォークナーの『乾いた九月』、モールツの『世界一幸福な男』
アンダスンの『森の中の死』など、けっこう読んだことがある話があったのですが
またまた楽しむことができました。
その他、スタインベックやヘミングウェイ、カポーティなど盛りだくさんです。

いくつかご紹介します。

『メイ・デイ(May Day)/スコット・フィッツジェラルド』
1919年5月1日、ビルトモア・ホテルをゴードンというくたびれた青年が訪れ
イェール大学の同級生だった宿泊客のディーンに面会します。
ゴードンは久しぶりに会ったディーンに借金を申し入れて断られます。

もう、ね! 金策に走る男を書かせたら、フィッツジェラルドは五本の指に入るね!!
これが彼のパーソナリティとどう関係しているかは知りませんけど…
借金の申し出を断るディーンは、決して悪い人じゃないと思います。
ゴードンが哀れだからって、ディーンを誤解しちゃいけないわ。

『特だね(A Front-Page Story)/ジェイムズ・T・ファレル』
大学を担当している取材記者は、女学生ルース・サマーの葬儀に参加して
死の真相をつきとめました。
しかし、彼には特ダネを手にしたという嬉しさはありませんでした。

この記者はすごく頑張って、なるべく感動的なストーリーに仕上げるんだけど
それでも記事にはするのよね。
たしかにその記事を読んで、私もルースの人生にホロリときました。
マスコミを嫌う人々は多いけど、良心を持って伝えている人もいるはず… と信じよう。

『ざくろ園(The Pomegranate Trees)/ウィリアム・サローヤン』
夢見がちなメリックおじが、広大な砂漠を買い果樹園を造るというので手伝うことにします。
手始めにざくろを700本植え、トラクターを買い、土地を耕しました。
しかし、どんなに頑張っても水が足りません。

カリフォルニアに畑を造った実話ってなかったですっけ?
しかし、誰か止めなかったの… 夢見がちにもほどがあるでしょうよ。
だけど男の人が夢を真剣に追い始めたら、誰にも止められないのかもね。
おじさんの老後が心配だけど、家族愛は強そうだからなんとかなるかな?

ああ楽しかった!
1900年代のものが中心ですので、人種問題にふれたものや
現代から見れば古い感じがするものもありますが、やはり読み継がれる名作だけあって
中だるみすることなく一冊読み通せました。

こういう全集は、いろいろな作家の作品が楽しめて本当にいいですね。
各出版社、どんどん出していただきたいわ。
ただ、どうしても同じ作品がかぶるのが悲しいですね。
そこをなんとかしていただいて… 復刻でもいいからお願いします。

ひとことK-POPコーナー
『SURPRISE VACATION』DVD6枚+特典ポーチが本日到着! 放送とは違う編集で新鮮ね
で、輸入盤だからしかたないけど日本語字幕がないんだよ〜  一時停止を駆使して英語字幕で頑張って見ています 

『世界短篇文学全集2 イギリス文学20世紀』21世紀はどうする?

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アメリカ版についでイギリス版も読んでみました。
こちらも『イギリス短篇24』におさめられている『砂糖きびは苦い』
『カリフォルニアの伯爵夫人』をはじめ、シリトーの『長距離ランナーの孤独』
デュ・モーリアの『恋人(接吻して)』など重複しているものが多数ありました。

作家陣は他に、ハートリー、A・マードック、M・スパーク、レッシングなど
こちらも盛りだくさんです。

ただ、アメリカ版にくらべて、未読なものの中に好きだ!という話が少なかったのね。
いくつかご紹介します。

『夏の夜(Summer Night)/1941年 エリザベス・ボウエン』
エマは車を走らせている途中、ドッグ・レースのある村から男に電話をかける。
ロビンソンは、いきなり隣人のジャスティンとクイーニー兄妹の訪問を受ける。
少佐は家で子供たちを寝かしつけ、フラン叔母をなだめていた。

実は不倫の話しなんですが、別々の場所にいる女性と不倫相手の男性と夫の
同時間帯の出来事を書いています。
三人の行動を想像しながら読むと、映像的になってさらに面白かったです。

『象を射つ(Shooting an Elephant)/1950年 ジョージ.オーウェル』
低地ビルマに派出所の警察官として勤務中のある日、象が逃げて市場で暴れた。
象使いは12時間ほどかかる場所にいて誰も象を鎮められない。
手にしているウィンチェスター銃に人々の視線が集まっていた。

私は常々 “ 赤信号、みんなで渡れば怖くない ” というのは、笑いごとじゃなくて
けっこう恐ろしいことだと思っているのですが、やっぱり集団の力って怖い。
集団と向き合った時の個人の、なんと無力なことでしょう。
なにかを集団でやらかす時には、よーく考えてからにしないとね。

『不思議な事件(A Mysterious Affair)/1956年 ジョイス・ケアリー』
友人のネッド・シンプソンは、都会に嫌気がさして、早くリタイヤしたいと言い続ている。
彼の妻ネルは、夫が土いじりができるようにと郊外の家を探すが
理想が高すぎてなかなか良い家が見つからない。

日本には「なかなか引退させてもらえませんのじゃ」っていう人は多いんですけど
伝統工芸とかやってる会社以外は、なんとかなるものだと思うよ。
で、そういう人が本当に潔く引退して、田舎に引っ込めるものなのか?
都知事選の後だからってわけじゃないけど、なかなか教訓になるお話しかと…

こちらは、植民地や世界大戦などの物語に加え、ちょっと怪奇的な要素を含む話が
多かったような気がします。
やはりイギリス人は怪奇的な話がお好きだったのかしら?
ま、建物に風情があるからね。

どうなんでしょう?
私が不勉強なだけですが、最近の作家はアメリカの方が元気な気がする…
この頃アメリカの作家ばかり読んでる気がするんですよね。
もとはイギリス文学びいきだったのに… 大好きになれるイギリス人作家を見つけなければ!!

ひとことK-POPコーナー
TOHEART WOOHYUN & KEYのティザーを見ると、二人はとても楽しそうですね! 期待が膨らみます
こうなったらオニュとソンギュの89ラインもどうでしょう? 大人の魅力ってことで…

『O・ヘンリー・ミステリー傑作選』苦しいこじつけが・・・

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O・ヘンリー

新潮社の『O・ヘンリ短編集』で46篇の短篇を読んで、たぶん厳選された短編集なんだろうし
当分読まなくていいかしら…などと思っていたのですが
ミステリーも書いていたのね、と思い買ってみた一冊、なんだけど…
これをミステリーって言っちゃう?

ミステリーはキャパシティが広いので、そう言えなくもないと思いますが
やっぱり、“ いい話 ” という印象が否めない話が多かったですね。

28篇中、好きだったお話しをいくつかあげてみます。

『虚栄と毛皮(Vanity and Some Sables)』
モリーに説得されて悪事から足を洗ったキッドが、真面目に働いて8ヶ月が過ぎました。
ある日、キッドがモリーに、とても高価そうな毛皮を送りました。
ところが、キッドが仕事をしに行った家で、高価な毛皮が無くなったことがわかりました。

ありがちな話だけど、若いキッドのプライドが微笑ましい。

『X嬢の告白(The Confession of…)』
イギリスで6年間、上流社会教育を終えて帰国したリネットの前に
身分の高いクランストン卿が現れました。
しかし、あまりの完璧さに疑念を抱かずにはいられません。

最後びっくり!&笑えます。リネットの母親がどうかと思うわ…

『感謝祭の二人の紳士(Two Thanksgiving Day Gentlemen)』
その日、浮浪者のビートは、公園のいつものベンチに座りました。
ビートは、ひょんなことからはちきれそうに満腹でした。
けれども、毎年感謝祭の日にディナーをごちそうしてくれる老紳士を
失望させてはならないと、ごちそうになる決心をします。

イギリスっぽい感じがしますけど、これぞ O・ヘンリー!というお話しです。

『平和の衣(The Robe of Peace)』
上流社会の中でも最上流で、誰もが認めるベスト・ドレッサーでもあった
ベルチェインバーズが、突然失踪してから一年ほどたちました。
彼の古くからの友人二人が、スイスを旅行中に、極上のリキュール酒に惹かれて
険しい尾根にある修道院を訪ねると、なんと、そこに
ボロを身に纏ったベルチェインバーズが、修道士として暮らしていました。

これはねぇ、教訓も含まれているのかもしれないけど、かなり粋な話だと思います。

以上4篇の結末は、一般人としてホッとするところに落ち着きます。
面白くなさそうに聞こえるかもしれませんが、ちゃんと面白いです。

4篇には上から順に、嫌疑・詐欺・浮浪者・失踪と、ミステリーくさい副題が
つけられているのですが、かなりこじつけに思えます。

それ以外の話にも、殺人者とか罠とかそれらしい副題がついています。
そりゃそうなんだけどさぁ、無理くりミステリーにくくらなくても…と
笑えるものもあったりして…編者の苦労が伺えました。

後半にシャーロック・ホームズのパロディ『シャムロック・ジョーンズ』のシリーズ3篇と
詐欺師のジェフ・ピーターズが主人公のシリーズが5篇おさめられていて
一応ミステリー仕立てになっているのですが、逆になんだかつまらなかったかな…

短篇の名士ではあっても、ミステリーには向かない作家だったのかもしれませんね。
だんだんいい話になってっちゃって、謎解きとか関係なくなっちゃうんですもの。
そもそも謎解き不要な話しばかりだし…

ミステリーは幅広い!ってことで、良しとしますか?

ひとことK-POPコーナー
わたくし、この年になって、今日生まれて初めてファンイベントってものに行ってきます。
だってハードロックにはそういうのが無かったんですもの… どんなことするのでしょうね?

『バースデイ・ストーリーズ』どんな誕生日もめでたいといいね

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R・バンクス/D・ジョンソン/W・トレヴァー/D・ライオンズ/L・セクソン/P・セロー
D・F・ウォレス/E・ケイニン/A・リー/R・カーヴァー/C・キーガン/L・ロビンソン/
村上 春樹

『恋しくて』に続き読んでみた、村上春樹さん編訳の一冊です。
一筋縄ではいかないバースデイの物語ばかりで面白かったのですが
私の好みからいうと、ラッキーなバースデイと、アンラッキーなバースデイが
半々とまではいかなくても3:7ぐらいの割合で入っていたら
もう少し楽しめたかなぁ…などと思っています。

印象に残ったお話しをいくつかあげてみます。

『バースデイ・ケーキ(The Birthday Cake)/1993年 ダニエル・ライオンズ』
ルチアは、戦時中から毎週土曜日に夫の好物のホワイト・ケーキを買っていて
夫の死後も欠かさず続けていました。
少し閉店を過ぎてしまいましたが、いつものようにロレンツォのベーカリーに行くと
マリアが待っていて、娘の誕生日なので最後の1個だったケーキを譲って欲しいと言います。

ルチアは意地悪だと思う、それはもう! だけど味方せずにはいられなかったです。
自分を曲げない頑固なばあさん… 自分にはなかなか真似できないだけに憧れるわ。
名前から見て、家族を愛するイタリア系のマンマだと見ましたが、最後が悲しいのよね…
マリアに対する仕打ちへの罰のようにも思える痛ましさでした。

『慈愛の天使、怒りの天使(Angel of Mercy,Angel of Wrath)
                    /1991年 イーサン・ケイニン』
71歳の誕生日の朝、カラスの大群に窓から入り込まれたニューヨークのエリナーは
デンバーにいる息子のバーナードに電話をします。
バーナードは動物愛護教会を呼べと言って電話を切りました。
取り残された2羽を逃すために、動物愛護教会から若い女性がやって来ました。

若けりゃ逆に大騒ぎして、思い出に残る誕生日ってことにできるのでしょうが
一人暮らしの老女の家ではそうもいきませんよね。
それはさておき、バーナード〜、だめじゃーん。
これもつらい話だけど、最後はほんのちょっとだけいい話で終わってます。

『ライド(Ride)/2003年 ルイス・ロビンソン』
オールデンは、母親と離婚後別々に暮らしている父親から誘われて
16歳の誕生日に小旅行に出かけます。
トラック運転手の父親は、絵画をニューヨークまで運ぶと言っていましたが
途中である計画をもちかけてきます。

最初は、どんな父親なんだよー!!と思いましたが、最終的には
誕生日にグレイトな経験をさせてあげられて良かったね!ということ? 違うよね。
計画が上手くいってもいかなくても、息子の人生を変えてしまうんだもの。
クールに父親にふり回されてる息子に、なんだかグッときてしまいました。

おさめられているお話しの誕生日は、みなスペシャルなエピソードを孕んでいますが
どちらかというと、あんまり良いことではありません。

確かに、家に帰ったら家族や友人が待っていて、祝福されてプレゼントもらって
ひとしきり騒いで寝ました… なんていう話、面白くないものね。
誕生日にプロポーズされて嬉しくて涙にむせぶ、ってのも、他人にはどうでもいい話よ。
物語としては、誕生日なのに…! というエピソードの方が読み応えありますね。

誕生日って、だんだん憂鬱になってくるわぁ… できることなら忘れてしまいたい。
いっそこの世から無くなってほしいぐらいよ。

とはいえ誕生日は、毎年、全ての人にぬかりなくやってくるわけね。
何もないよりはいいのかもしれないけど、できたら良いことがおこるといいですね。

ひとことK-POPコーナー
昨日行った人生初のファンイベントですが、まーくーはーりー! 遠かったよ…
でもすごくいい席だったの!! コンサートとは違う雰囲気で楽しかったです。

『片恋・ファウスト』話はここからじゃないのぉ?

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АСЯ,ФАЧСТ 
ツルゲーネフ

表題の2篇がおさめられている一冊ですが、『片恋』は以前書いたので割愛します。

で、『ファウスト(ФАЧСТ)/1855年』ですけど…
うーん… ものたりない、というのが正直な感想です。

物語は、9年ぶりに領地のM村に戻ったBという青年が
ペテルブルクにいるVという友人に宛てて書いた手紙の形式で進んでいきます。

長閑な村に帰って感傷に浸り「なにもやる気なーい」という手紙から始まり
6日後の手紙には、ばったり大学時代の同窓生に出会った話が書かれています。

大学時代の友人プリイームコフは、人は善いのですが頭からっぽ、という人物で
その彼から、妻がヴェーラ・ニコラーエヴナだと聞かされBはビックリ!

Bは若い頃ヴェーラと結婚したいと考えたことがありました。
そこで彼女の母親に結婚の許しをもらいに行ったのですが
バッサリ断られたという過去があります。
ヴェーラは当時から、母親に畏怖の念を抱いていて言いなりでした。

「もう過去だしのことだし…」というわけでプリイームコフの邸を訪ねたBは
三人の子の母になっても初々しい、少女のようなヴェーラと再会します。

最初はどちらかというとヴェーラを客観的に見ていたようなBの手紙の内容が
どんどん変化していくわけなのですが、それは書かないよ〜。
たぶん、誰もが思う通りに進んでいくと思いますが…

そして、思ったほどのすったもんだが無いまま、悲劇的なラストが訪れるわけですが
私としては、ここからが楽しそうなのに! と歯ぎしりせずにはいられません。
ここまでは序章でしょ?

いや、ここで終わるからこそ悲恋小説なのだ、ということなのかしら?
そりゃあ私は若くはありませんが、やっぱり現代人なので、もう少し刺激がほしいですね。

ツルゲーネフは、奔放な女性が好みのタイプのような気がしてましたが
清純で敬虔な女性の方が理想的だと考えていたのでしょうか?
『貴族の巣』のリーザもそんな感じだけど…

そういえば、『貴族の巣』にはワルワーラ、『春の水』にはマーリヤという
主人公の対極にいる女性が登場して、それが面白かったのよね。
今回はそういう女性がいないのが、面白味が欠けた要因のひとつかも。
なんにでも魔性の女を登場させりゃいいと言っているわけではありませんが…

あ、なんで『ファウスト』かっていうと、主人公がドイツから持ち帰った本で
本を一冊も読んだことがないというヴェーラに読み聞かせてあげるのね。
で、ヴェーラがファウストのある場面に自分を重ねちゃう、
重ねちゃって取り乱しちゃう、というわけなのですが
私は『ファウスト』を読んだことないので、なぜそうなるのかよくわかりませんでした。
だから、解説終わり

ひとことRobiコーナー
無趣味に近いうちの旦那さんが、週刊Robi再刊行版を買って来ました
第一号で造るのは目ん玉だけ! 先は長そうですが、どうか最後まであきらめないで造りあげてほしい
Robiってこの子です 

『ひとさらい』続編に期待

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LE VOLEUR D'ENFANTS 
1926年 ジュール・シュペルヴィエル

私はシュペルヴィエルという作家は知らなかったのですが
背表紙のあらすじを見たらおもしろそうだったので読んでみました。

うーんとね… もう少しセンセーショナルな内容かと思っていたのですけど
そうでもなかったです。

さくさくっと書いてみますね。

舞台はパリ、7歳か8歳のアントワーヌという裕福な男の子が、女中とはぐれ
ずっと後をつけてきた紳士に声をかけられるところから物語が始まります。

アントワーヌが紳士の高級なマンションについて行くと、すでに子供たちがいて
年長のジョゼフという少年はパリの貧民街から、幼い双子はロンドンから
それぞれ「さらわれて来た」と言います。

紳士はフィレモン・ビグアという南米大陸にある国(たぶんウルグアイ)の大佐で
大統領に敵視されて、美しく従順な妻デスポソリアとパリへ渡ってきたようです。

生活もきちんとしていて、兵士としてもひとかどの人物だったらしい紳士が
なぜに “ ひとさらい ” を?

大佐は故国からの便りで、自分が帰国する日も近いと感じ
「どうせなら女の子もひとり連れて行きたいなぁ…」と考えるようになります。 おいおい…
そしてある晩、美しい少女マルセルを家へ連れて帰ります。

大佐はその日から気もそぞろ、マルセルのことしか考えられなくなります。
さぁ、ここで『ロリータ』とか『痴人の愛』を思い浮かべた皆さん、
近いんだけど違うんですよ。
本当に立派な人なのよ、大佐。
マルセルを父親として愛そうと苦悩するあまり、黒髪が白髪に変わるなんて!

しかし、年ごろの少年もいる家の中で、何事かが起こるのは必至、ですよね。
そんなわけで平和だったビグア家にもある事件があり、大佐はパリを発つ決心をします。

南米大陸に向かう船の中で安堵しかけた大佐ですが、あ〜!なんてことでしょう!!
うふふ …内容はこれぐらいにしときます。

原題と邦題が同じなのかどうかわかりませんが、厳密にいうと大佐の行動は
“ ひとさらい ” というのとは、ちょっと違う気がします。
連れて来た子たちは(特にアントワーヌ以外は)さらって来たのではなくて
そうしないとどうなってたか… という状況にいたと、私には思えるわ。

貧しくて酷い目に遭っていると思われる子を探して連れ帰り
あたたかい家庭を与えようと気を配っている大佐、
いつも連れて来た子たちに対して、本当に良かったのかという自問自答を繰り返す大佐、
自分でミシンを踏んで服まで作っちゃうんですよ! すごいでしょ?

でも、いくら優しさから出た善行だとしても、やはり非合法なわけですよね。
ちゃんと手続きを踏んでいたら、こんなに悩まなくてもよかっただろうに…

なんだか読んでいてすごく可哀想に思える反面、イライラしたりしました。
妻のデスポソリアも哀れに思える… しかもあのラスト! 妻は大打撃を受けるはず。

なんなのよ? この最後は と怒りさえ感じた私に朗報が!
解説をパラパラ見ていたら、なんと、続編があるらしいですよ、やったね!!
あのラストからどうやって続編が生まれるのか、まったくわけがわかりません。
ものすごく読みたい気分になっているのですが、邦訳は出てないみたい。
どなたか訳して! お願いします。

ひとことK-POPコーナー
Toheart (WooHyun & Key) のMV、二人ともグループで歌っている時とは違う魅力で、曲も楽しいですね
発売明日だっけ? 早く到着しないかなぁ…

『遠い声 遠い部屋』ビジュアル系小説

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OTHER VOICES,OTHER ROOMS 
1948年 トルーマン・カポーティ

発売当時絶賛されたそうですね。
でも、これはねぇ… 難しいです。
どの登場人物も独特というか特異な美しさを纏っている、ファンタジー色の強い一編で
面白くないわけではないのですが、好きじゃない物語。

文章は、今まで読んできたカポーティ同様、楽しんで読むことができましたし
全篇の3分の2ぐらいまでは本当に没頭して読んでいたのですが
後半はだんだん幻想の深みにはまり、ブクブク沈んでいくような感じで
私にはついていくのが困難になっていきました。

かいつまんで書いてみますと…
母を亡くし、親戚のところに身を寄せていたジョエル・ノックスという美しい少年が
会ったこともない父親エドワードと暮らすことになり
ヌーン・シティという町を訪れるところから物語が始まります。

町にはこれといって何も無く、訪れる手だてさえ無いのですが
父エドワードは、その町の近くに大きな屋敷を持つエイミイ・スカリィという女生と
再婚しているということでした。

登場人物はざっと30人ほどなのですが、大きく二つに分かれます。
ジョエルが、もともといた世界(ニューオーリンズ)に残してきた人たちと
ヌーン・シティに着いて新たに知り合った人たちです。

新たに知り合った人たちは、ほぼ全員が、一般的にノーマルと呼ぶには
人間離れした感性の持ち主のように(私には)思えて仕方がないわけなのですが
そんな人たちの中に、ジョエルは投げ込まれてしまったようなものなのね。
頼りになるはずの父親は、まったく頼りにならない状況にありました。

もうこれ以上は書かないんだけどさ…
私は最初から、このストーリーがジョエルに対して残酷だと思いながら読んでいました。
そして、好転を待ち望みながら読み続けていましたが、事態は悪くなる一方に思えました。

この展開とラストが、不幸なのか幸福なのかは見解のわかれるところかもしれませんが
というか、だいたい何を象徴しているラストなのかもはっきりしなかったわけですが
私はジョエルを不憫だと思うし、正直言ってかなり落胆しました。
できたら違う形で終わってほしかったと思っています。

どうやら、少年が大人になる過程を、抽象的に描いた話のようでもあるのですが
あまりに抽象的すぎて、ジョエルがピーターパンの変種みたいに思える。
現実的に暮らしていたニューオーリンズ時代の方が大人に思えるのは、私の気のせい?

短編集『夜の樹』で感じたカポーティ感が凝縮された中篇のような気がします。
そのラインが好きな方にはたまらない一冊かもしれません。

私にとっては、カポーティの美意識の計り知れなさを見せられたように感じた一冊でした。
マリリン・マンソンみたいなさ、白〜くてグロ美しい感じの人が
頭に浮かんでは消え浮かんでは消えっていう状態で読んでいました。
ちょいと疲れたね。

ひとこと韓流コーナー
職場のAさんが、ドラマ『主君の太陽 』を貸してくれたので観たらすごく面白くて17話一気に観ちゃったよ こらこら
ソ・ジソブ=哀愁を背負った暗い人(役)という印象でしたが、ラブコメもいけるんですね

『国境の向こう側』やっぱり買っちゃった

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THE OTHER SIDE OF THE BORDER AND OTHER STORIES 
グレアム・グリーン

以前『見えない日本の紳士たち』を読んだ時に知った
早川書房のグレアム・グリーン・コレクションを近所の書店で見つけたので
わくわくしながら買ってみました。

結論から言うと、面白かったのですが、政治色がやや強いような気もするし
テーマも、どちらかというと男性が好きそうなものが多かった気がします。
故に、私は『見えない〜』や、以前読んだ『二十一の短篇』の方が好きかしら。

いくつか紹介しますね。

『最後の言葉(The Last Word)』
老人は何年か前の事故以来記憶を無くして、何者かから年金をもらい
監視を受けながら、誰とも接触することなく生きてきました。
しかし、ある日、いきなりパスポートとビザを渡され、部屋から連れ出されます。

近未来小説なのかしら? 「世界はひとつ!」っ言ってるのが恐ろしくなります。
争いを無くし、地球上の国々をひとつの国家にするためには
こんなにめちゃくちゃな過程を通過しなければならないのかしら?
この物語に登場する指導者は名君なのか、暴君なのか? 疑問が尽きない物語です。

『英語放送(The News in English)』
ドイツからの英語放送を聞いていた老ビショップ夫人は、臆病博士というあだ名の男性の声が
自分の息子デイヴィッドのものだと気づいて怒りだします。
妻メアリーは、放送を聞いているうちにあることに気がつき、陸軍省を訪ねます。

第二次大戦中の話で、もちろんフィクションなのでしょうけど
こういうことが実際にあったのではないかなぁ、と思わされる話です。
英雄談ですが、すごく切ないなぁ。
妻としては「そんなことはいいから帰って来て! 」と言いたくなるかも…

『宝くじ(The Lottery Ticket)』
気弱なミスター・スリプローは、ベラクルスで何気なく一枚の宝くじを買い
旅行の目的地である陰鬱な熱帯の町に向かいました。
そこで宝くじが大金を当てたことを知って困惑したスリプローは
賞金はいらないと口走ってしまいました。

最初はね、笑える話かと思っていたのね。
そしたら、かなり危険と隣合せな展開で、教訓になる話に思えてきました。
まず、旅先は慎重に選ばなくちゃでしょ、宝くじが当たったら黙ってろ!でしょ、
そして、寄付すること=善とはなりえないこともある、ってことでしょうか?
これからは心して募金しよう。

グリーンも、モームのように諜報活動をしていた時期があったそうで
この一冊には、その頃の体験が書かれているのかもしれませんね。
モームもそうでしたが、グリーンも敵国が悪という見解から書いているわけではなく
かなり中立な立場から書こうと努力しているように見受けられました。

“ ドラマを見据えて ” というつもりで書いていたのかどうかは知りませんが
『二十一の短篇』同様、映像化されそうな内容のものが多かった気がします。
だけどロケーション的にも、政治的にもドラマ化するのが難しそうに思えるけど…
ドラマになっているのかしらね?

読み応えはありました。
テーマは幅広いし、多重人格的に様々なタイプの表情を見せていて
飽きも感じませんでした。

ただ、いまだに長篇に手が出せずにいます。
一冊読み通すのがしんどそうでね… 私の勝手な思い込みなんですけど。
もう少し短編を読んでから考えます。

ひとことお薬コーナー
急にタコっていうの? ウオノメっていうの? が3つもできちゃって、小さ〜いんだけどすごく痛いんです
笑いごとじゃないの! 靴を履くのさえ痛ッというわけでイボコロリを購入…本当に3日後にポロリととれてほしいぞ

『魔術師』愛は魔法・・・なんてね

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THE MAGICIAN 
1907年 ウィリアム・サマセット・モーム

モームが好きな私は『魔術師』もかなり前から持っていたのですが
裏表紙に “ オカルティズム文献を駆使し渾身の力をこめて描きあげた ” と書いてあるもので
どうも尻込みしてしまって今まで読んでいませんでした。
で、勇気を出して読んでたら、予想以上に楽しめました。

たしかに、気味が悪かったり、オカルト文献からの引用を長々読まされてグッタリしたり…
というところはありました。
でも、どちらかというと現実的なテーマを、独特の落ち着いた筆遣いで描くモームが
こういう物語も書くのか… という新鮮さも味わえました。

ちょっと紹介しますね。

自称 “ 魔術師 ” で、異様な容貌と奇異な行動で人目を引くオリヴァ・ハドゥ
評判の高い医師で、紳士的なアーサー・バードン
アーサーの婚約者で、人並みはずれて美しいマーガレット・ドーンシィ
以前マーガレットを教えていた元教師で、パリではルームメイトのスージー・ボイド
アーサーの父親の友人で、医者を引退して神秘学を研究しているポロエ博士

主な登場人物は以上5人とこじんまりしています。

あらすじはすごーくはしょっていきますよ!
パリで絵の勉強をしていたマーガレットをアーサーが訪ねて来ます。
プロポーズから2年、もうすぐマーガレットと結婚できるアーサーは幸福の絶頂にいます。
マーガレットも、父の死後世話になったアーサーを幸せにしたいと望んでいます。

そんな二人の目の前に現れたのがオリヴァです。
アーサーもマーガレットも、最初からオリヴァの神秘的な力など信じられず
嫌悪感を抱いていたのですが、それが憎悪にまで達する出来事がおきました。

ところが、ある体験からマーガレットがオリヴァを愛するようになり
とうとうアーサーを裏切って、秘密裏にオリヴァと結婚しフランスを後にしました。

アーサーはうちひしがれてイギリスに帰ります。
スージーは気晴らしに出た旅先のイタリアでハドゥ夫妻の悪い噂を聞き
モンテカルロで別人のように下品になったマーガレットを見てショックを受けます。

ロンドンで再会したアーサーとスージーは、一緒に知人のパーティにでかけ
そこでオリヴァとマーガレットとも再会してしまいます。

変わり果てたマーガレットに唖然としたアーサーですが
勇気を奮い起こしてマーガレットを訪ねて行くと、彼女の口からとんでもない話を聞かされて
いてもたってもいられず彼女をホテルから連れ出しました。

ここから話は俄然神秘的な方向へ向かっていくのですが、書くのはやめときます。

字面だけ追っていくと、やっぱり好きなタイプの物語ではなかったです。
ラストなんて、本当にモームが書いたのぉ? と軽くショックを受けてしまった気持悪さ。

なのですが、ものすごく勝手な解釈が浮かびました。
恋愛って、少なからず魔法にかかったようになるでしょ?
それをすごくオーバーに書き表したのがこの『魔術師』なのじゃないかしら?

百歩譲って、マーガレットの奇行はオリヴァの邪悪な力が影響を及ぼしていたとしましょう。
だけど、スージーの方もかなり魔法にかかっちゃってますよ。
密かにアーサーを愛するようになったスージーなのですが
マーガレットを忘れられず、彼女を助けたい一心で周りが見えないアーサーの
言いなりになっちゃってます。
そんなことまでしてあげる必要ないのにってことまで、引き受けちまって…

10年以上恋い焦がれ、尽してきた挙げ句にぺちゃんこにされたアーサーだって
マーガレットがポロリともらしたひと言で、普段の冷静沈着さをかなぐり捨てて
後先考えずに危険に立ち向かうわ、理解できない行動をするわで、これも魔法でしょ?

他人がなんと言おうと愛おしく見える容姿や表情
頭では拒もうとしても、どうしても抗えない恋しい人への想い
相手の好みに合わせようと、とんでもないイメチェンを図って失笑を買う
世間がどう見ていても許してしまうひどい仕打ち… などなど
恋心が冷めた頃にゃ〜、なんで…? と、自ら呆れたり後悔したりすることってありますよね!
もう、変な魔法をかけられていたとしか思えないよ。

モームは、自伝的小説と言われている『人間の絆』の中で
どんな目に遭わされても別れられない女性との不幸な愛を書いていますが
魔法とか魔術という理解し難いものに重ねて
そんな恋心の不思議をデフォルメしたのではないでしょうか?
まったく違ってたらすみません。

結婚して10年もたっちゃうと、いったいどこがそんなに好きだったんでしょう?ってことも
もう思い出せないのよね〜、 お互い様だと思いますけど…
でも私にもきっと、旦那の何から何までステキに見えた時期があったわけなのよ。
これを魔法と言わずしてなんと言う?

旦那に言わせりゃ、K-POPのどこがそんなにいいんだか! ってことになるらしいんだが
これも魔法にかかっちゃってる状態だとあきらめてほしい…

ひとことK-POPコーナー
BIGBANGのライブDVDにMBLAQのカムバック、SHINeeのライブDVDと楽しみが続々な今日この頃
嬉しいけどお財布が心配よぉ、消費税も上がるっていうのに…

『そして誰もいなくなった』最初と最後、どちらの一人が幸せか?

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TEN LITTLE NIGGERS 
1939年 アガサ・クリスティ

クリスティ好きとしては『そして誰もいなくなった』は、もちろん読んでいたのですが
あまり面白かった記憶がなく「あー、あったねぇ…」という感じでやりすごしていました。

このあいだ韓国ドラマを見ていたら『そして誰もいなくなった』のことがでてきて
そういえば犯人だれだっけ? とふと思い再読してみました。

そうしたら面白くて、さすがクリスティ! と再認識しました。

私が忘れていただけで、広く世間に知られている話だから
あらすじはくどくど書かないね。

10人の男女が、海岸から1マイルほどのところにある孤島に呼び集められ
ひとり、またひとりと殺害されるというお話しです。

10人は島に到着したその晩に、何者かが録音したレコードによって
過去に犯したとされる罪状を読み上げられました。
もちろん皆否定しますけれども、なにかわけがありそうな感じです。

ポイントは殺害の手順が、古い子守唄の内容にしたがって行われることです。
これはクリスティのミステリにはよくある手法ですよね。

殺人の方法が予告されているようなもので、細心の注意をはらって
警戒を怠らずにいればいいようなものだけど、その隙を狙ってまたひとり殺される…
というわけで、かなり神経にきますよね。

それから、だんだん人数が減っていくにしたがって、お互い顔色をうかがうようになり
疑心暗鬼になっていいます。
だって犯人は自分たちの中のひとり以外にありえないんですもの。
一緒にいると怖いけどひとりにはなりたくないということで
あいつが犯人だ! と思う人間と行動をともにしなければならない状況… ひえ〜
最初に死んだ人が幸せ者に思えるよ。

とうとう最後のふたりになった時、彼らはどうするのか? 犯人はどっちだ? という
最高の見せ場が訪れるわけですが、実は私、途中で犯人を思い出しちゃったんですぅ。
そして「あぁぁぁ、だからガッカリしたんだった」と思いましたよ。

誰かが謎を解くというパターンではなくて、本人による告白という
火曜サスペンス劇場、崖の上のラストのパターンなのですね。

たしかに、それまで自分なりの推理をたてながら読み進めてきた方々は
どれぐらい推理が正しかったか確認できて、それはそれで楽しめるのかもしれません。
だけど私は、やっぱり「犯人はお前だ!」とピシッと指差して終わってもらった方が
気分的にスッキリするのよね。
犯人の自己満足で終わられてもねぇ…

まぁ、ラストの好みはおいといて、内容は文句なく面白いと言えます。
章を細かく区切って登場人物各々の事情や神経のたかぶりを描いていまして
中だるみなく楽しく読み通せます。
冒頭で感じたドキドキは最後まで途切れず、緊張感を保ったままラストまで読めました。

この物語の犯人は最後に、この “ 壮大で芸術的な ” 犯罪の動機を述べています。
一部は正論かもしれないし、理路整然としているように見えますが
言ってることはけっこう無茶苦茶ですよ。

この物語の犯人のような人間は、あまり少なくないような気がするのよね。
どういうタイプか書くと読んでてわかっちゃうと思うから書きませんが
同じような思考でもっとムチャクチャな犯行に走られたらと思うとものすごく恐ろしい…
どうか考え込まず、肩の力を抜いて楽に生きて下さい、と言いたいわ。

ひとことゲームコーナー
私はあまりゲームが好きでなく、今までスマホでゲームしたことはないのですが
職場のAさんが教えてくれた “ ほしの島のにゃんこ ” にハマってしまいました。 働き者のネコが愛おしいぞぉ

『花ざかりの森』上っ面をなぞってみました

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三島 由紀夫

これまで三島由紀夫を何冊か読んでまして、それなりに楽しく読めていたのですが
これはダメだった〜 、特に前半。
何度放り出しちゃおうと思ったか… 100円でよかった。

9篇の物語がおさめられています。

何が苦手だったかというとね…
美しい言葉を選び、単語の順序も美しく響くよう気を配り、などと
細心の注意を払って書いているのでしょうか? とてもとても綺麗な文章です。

だけど、比喩に比喩を重ね、修飾に修飾を施し、ってな感じで
くねくね曲がり、どこにつながっているのかわからない道を進んでいるような感覚?
いったい何が言いたいんだよ〜、キーっ となること数知れず…でした。
私には難しくてわからなかったわけだが、こういうのが耽美派の神髄なんですかね?

なので文章の意味するところを考えるのは放棄し、綺麗な単語をひたすら目で追う、という
読み方に切り替えてみたら、物語としてはそれなりに楽しむことができました。

印象的だったのは、むかしむかし…的な話の数々でした。

『みのもの月/1942年』
女から男へ、心が離れてしまったことを責めるような手紙。
男から女へ、他に好きな女性ができたことを打ち明ける手紙。
女から男へ、未練たらたらに思える手紙。
男から女へ、音信不通をなじる手紙。

通い婚って平安時代でしたっけ? これはその通い婚の話みたいで
二人には娘がいるのに、男性が女性の家に寄り付かなくなったみたいなんですよね。
前々から、通い婚って男性が飽きたらどうするんでしょ? と思っていたのですが
そうか… こうなるか… と読んでいたら、驚きのラストでした。

『中世/1946年』
25歳にして世を去った足利義尚の父義政は、深い悲しみに暮れていたが
儀式を行わせた美しい巫女を侍らせることにする。
義尚の寵愛を受けていた猿楽の菊若は、霊海和尚を訪ね剃髪を願いでたが
菊若の美しさに魅了された和尚が拒む。
義政の前に、どこからか大きな亀が現れる。

室町時代の話? 
悲しみを紛らわせる良薬が、若い女性たちをとっかえひっかえ
寝所に入れることだという発想といい、性欲に溺れる高名な聖職者といい
君主の絶対的権力といい、洋の東西を問わない中世的な内容になっております。

『軽皇子と衣通姫 -かるのみことそとおりひめ-/1947年』
皇后が、亡くなった前天皇の陵を訪ねようとしていた夜道で
妹であり前天皇の愛妾でもあった衣通姫に出くわす。
姫は天皇の死後、天皇と皇后の長男である軽皇子と愛し合っていた。
それがもとで、軽皇子は後継の座を弟に奪われ、伊余へ流されていた。

旦那も息子も奪った妹は憎かろう… というわけで
姉と妹の壮絶バトルが繰り広げられれば面白かったのですけどね、違います。
ただ、最後の最後に勝ったのは、姉の皇后だったような気がしました。
行いの立派な人の言うことが正しい! と言っているような印象を受けました。

ノスタルジックな話が多く、面白くないテーマじゃなのですが
なにしろ読み通すことに疲れてしまいまして…
誰か削りに削った簡単な文章で書き直してくれないかなぁ、と考えたほどでしたが
三島文学、だいなし…ってことになっちゃいますよね?

ひとこと消費税コーナー
5%から8%になるっていうんで買いだめ… はしなかったんですけど、店の値札替えが死にそうだったさ!
来年また上がるんでしょー こっちの苦労も考えてよね!言ったとおり景気が潤わなかったら許さないからね!!

『怪奇小説日和 黄金時代傑作選』幻想より現実がの方が怖いかも…

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以前読んだ『短篇小説日和』が面白かったので、こちらも読んでみました。

怪奇となっていますが『イギリス怪奇傑作集』でも書いたように
ただおどろおどろしいというわけではなくて、なんだかしっとり落ち着いた怖さです。
こちらの一冊には、イギリス以外の作家のものもおさめられているのですが
選者(西崎憲氏)の趣味なのか、 “ 英国流 ” が選ばれている気がする…

18篇の中から好きだったものをいくつかあげてみます。

『喉切り牧場(Cut Throat Farm)/1918年 ジョン・デイヴィス・ベリズフォード』
新聞広告を見て休暇を過ごしにやってきた農場は貧しい土地にありました。
いつも包丁を研いでいる主人もその細君も、陰気で退屈な人たちで
楽しみといえば、農場で飼われている一匹の元気な子豚だけでした。
二人は家畜をつぶして食卓に並べていたようですが、数日後、とうとう子豚が消えました。

ショッキングな題名ですね!
暗い雰囲気の話が並んでいる中にあって、この話だけは笑えました。
本当は笑っちゃいけないんですけどね。

『ターンヘルム(Tarnhelm:or the Death of My Uncle Robert)
             /1933年 ヒュー・シーモア・ウォルポール』
少年時代、両親がインドにいた頃、あるクリスマス休暇を
カンバーランドにいるロバート伯父とコンスタンス伯父の屋敷で過ごすことになりました。
ある日、ロバート伯父と伯父の召使いしか入ってはいけない塔に招かれて行くと
奇妙な僧帽を見せられました。

さすがイギリス、黒魔術的なお話しです。
本筋とはあんまり関係ないと思うのですが、私が注目したのはコンスタンス伯父。
彼が最後にどう動くのか、ものすごくものすごく気になりました。

『失われた船(The Lost Ship)/1898年 ウィリアム・ワイマーク・ジェイコブズ』
ごく静かな港町テイトビーの期待と誇りを受けて出航した船は
数ヶ月後の到着予定が過ぎても戻りませんでした。
何年もの月日がたち、夫や子供を亡くした人々たちの記憶も薄れていきました。
ある晩、ひとりの老女の家に、年をとって変わり果てた息子が帰ってきます。

これは怪奇というのかどうかわかりませんが、不思議な話ではあります。
不思議だけどすごく哀しい… お母さん、元気を出してね。

それ以外に印象に残っているものといえば…
コナン・ドイルかな? シャーロック・ホームズ以外の話を読んだのは初めてです。

それから、エリザベス・ボウエンの『陽気なる魂(The Cheery Soul)』
これを読んですぐに『優しすぎる妻』におさめられていた
ライア・マテラの『破滅の天使(Destroying Angel)』という話を思い出しました。
シチュエーションはまったく違うのですが、はめられちゃって逃げようがないという
窮地におかれた女性が哀れでねぇ…

ほとんどのお話しがハッピーエンドではなくて、人も死んじゃうという本ですが
残酷な本を読んでしまった… という気はしていないですね。
途中から“ 怪奇 ” というジャンルの意識無く読んでいました。

どちらかというと、幽霊・悪魔・妖精などが出てくる話よりは
人間だけで展開している話の方がゾッとしました。
こういうのを読み続けていると、人間不信になっちゃいそうです。

ひとことK-POPコーナー
昨日はお休みでしたが、お昼前にゆうパックが届いて、去年のクリスマスのSHINeeの思い出に浸っているうちに
一日が終わってしまった…本当に旦那さんに申し訳ないと思っています。 思っているから許してねぇぇ

『頼むから静かにしてくれ』チリも積もれば大きなイライラ

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THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CAEVER I 
レイモンド・カーヴァー

先日『レイモンド・カーヴァーの子供たち』を読んで
カーヴァー自身の話をあまり覚えてないな… と思い、読み返してみました。

この本には22篇おさめられていますが、覚えていたのは一篇だけでした。
初めて読む本のような気持ちで読めて得した気分。

気になったお話しをいくつかあげてみます。

『ダイエット騒動(They're Not Your Husband)/1972年』
妻をスリムにしようと協力してくれる旦那はありがたいけど、動機が不純?

『あなたお医者様?(Are You a Doctor?)/1973年』
妻が出張中の男の家に電話をかけてきた、未知の女の、強引さがすごい!
なにが彼女をそうさせるのかが不明。

『収集(Collectors)/1975年』
失業中、郵便でくる通知を待っていたら、やってきたのは掃除機のデモンストレーターで
家に入ると、強引に各部屋に掃除機をかけました、っていう話なんですけど
私はこれと同じような体験をしたことがあるんですよね! ということで印象に残りました。

『他人の身になってみること(Put Yourself in My Shoes)/1972年』
嫌がらせ半分で他人の家を訪ねたら、逆にいや〜な気分にさせられちゃう話し。

『こういうのはどう?(How About This?)/1970年』
田舎暮らしがしたい! と望んでいる人に、夢と現実の違いを突きつける一編。

とりあえずこれぐらいあげてみましたが、他の話も概ね面白く読めました。

どの話も、町中にゴロゴロ転がっていそうな事がテーマになっています。
たぶん、当事者じゃなければどうでもよくて、たいした問題じゃないエピソード。
その日のテーブルでは話題になっても、次の日には忘れていそうな事が中心で
とても共感しながら読むことができました。

反面、どの話にもちょっとイライラさせられました。
かみ合わない会話とか、いちいち気に障る人、堂々巡り
なかなか抜け出せない…ひとりだけ浮いてる…というシチュエーション、などなど…

たしかに、各々の話が面白いことは面白いのですが
22篇続けて読むと、最後の方にはイライラが大きな塊になってました。

これは、たぶん、作者がわざとそうしているんだと思うのですがどうでしょう?
そしてそれがすごく上手いの。
日々の暮らしの中にはイラつくことやムカつくことがちょこちょこありますよね。
そういう出来事の中から、面白い話になりそうな部分を上手く切り抜いて
巧妙なペンさばきで再現しているような一篇一篇でした。

カーヴァーは何冊かあるので、他の話もそうなのか読んでみようと思っています。

ひとこと漢方コーナー
高麗人参の蜂蜜づけというものを大量にいただいたのね。ものすごく体に良いのはわかっているのだが
独特の苦みがあってパクパク食べるというわけにもいかず… 食べ方をいろいろ探している今日この頃です

ポーランド公ヘンリク4世妃 コンスタンツィア

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            肖像画はマネッセ写本のヘンリク4世のところに描かれていた
             女生(と思われる画)から、花持って一番目立ってる人を選んでみました

なんだか漠然としている王妃
ヘンリク4世妃 コンスタンツィア・ヴォジスワヴスカ

生年不詳〜1351/在位せず

レシェク2世とグリフィナにお子様がいなくて、後継者でまたまたもめたポーランドで
最高公になったのは、文武両道の誉れ高いヘンリク4世です。

ヘンリク4世は短い生涯の中で2回結婚していて、一人目がコンスタンツィアです。
           
ただし、コンスタンツィアについては詳細に記されたものが無く
名前もコンスタンツィアではないという意見もあるそうです。

オポーレ公ヴワディスワフ・オドニツァの公女なのですが、姉妹であるマルガリェタ、
あるいはグジェミスワヴァと混同されているという説もあります。
生年月日も不明です。

結婚した年も不明で、おそらく、1277年から1280年の間だとされています。
ヘンリク4世が投獄された1277年が有力だそうですが
一説によると、コンスタンツィアの兄が「妹は若すぎる」という理由で
結婚の延期を申し入れたということで、1265年前後の生まれでは? と推測されています。

だいたい、結婚したかどうかも定かじゃないのだが
オポーレ公が、ヘンリク4世を「義理の息子よ」と呼んでいたという記録があって
それで、オポーレ公の公女と結婚してたのではないか? ということになったそうです。
でもさ、よくお気に入りの若者を「息子よ」とか「娘よ」って言う人いるじゃない?
そのパターンだったらどうするのでしょう? この説台無し…
ちゃんと記録されているということは、本当に義理の息子だったということかしら?

もちろん政略結婚なので、めんどくさいことは省きますけど
ヘンリク4世がドイツのルドルフ1世にしかけた戦争が関係しているようです。
オポーレ公はヘンリク4世支援派でした。

ところが、オポーレ公が1281年か82年に亡くなりました。
これを機にヘンリク4世がコンスタンツィアを遠ざけるようになります。
本当かどうかはわかりませんが、コンスタンツィアが不妊ということも理由になって
早々に離婚されてしまいました。
ちなみに、ヘンリク4世と再婚相手のマティルダの間にも子供はいません。

離婚された年も不明ですが、ヘンリク4世が1287年前後に再婚しているので
それまでには別れていたってことになりますね。

離婚されたのではなく、結婚後しばらくして亡くなったという説もありますが
離婚後は、兄のラチブシュ公ミェシュコ1世からヴォジスワフの領地をもらって
1351年まで暮らしていたとも言われていて… どっちが正しいのでしょうね?

1351年まで生きていた説を信じるとすると、離婚後のコンスタンツィアは
ラチブシュの統治者と見なされていて、かなり尊敬を集めていたらしいです。
言い伝えでは “ ヴォジスワフの貴婦人 ” と呼ばれていたらしく
現在では、コンスタンツィアの名がついた通り・学校・記念樹などがあり
市場にはコンスタンツィア像が建っています。

コンスタンツィアは再婚はせず、1351年に亡くなりました。
死因はペストです。
しかしながら墓所も不明。
1992年にラチブシュの修道院を発掘した際、40歳前後の女性が納められた棺が見つかり
碑文には感染症で亡くなったと書かれていました。
だからって、これがコンスタンツィアかどうかははっきりしていません。

中世初期には、完全に身元不詳の妃も多いし、伝説の粋を出ない妃もたくさんいますが
コンスタンツィアの場合、ある程度まではわかっているのに
「いや、そーじゃない、あーじゃない」という説がついてまわり、なんかモヤモヤしますね。

私としては、離婚後は立派に領土を統治して、尊敬されながら亡くなったという説を
強く推したいですね! 根拠はないけど…

(参考文献 Wikipedia英語版)

ひとことゲームコーナー
先日始めた “ ほしの島のにゃんこ ”  買うべきものはほぼ手に入れ、今は土地を増やすのに夢中です
そのためににゃんこを不眠不休で働かせてる状態… なんだか昔の領主の気持がよくわかるっていう…

『やさしい女・白夜』男心がわからないよぉ

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ドストエフスキー

両方とも有名な物語ですよね。
ですが、私は共感できなかった2篇でした。

まず、ドストエフスキーに限らず、なのですが
“ 読者よ ” “ ◯◯してくれたまえ(してください) ” っていう風に書かれるのが
あまり好きじゃないのよ… これは私のワガママなのですけどね。

とりあえず2篇のあらすじをご紹介します。

『やさしい女/1876年』
ある夫が、テーブルの上に横たわっている若い妻を見つめています。
棺が来るまで、彼女との出会いから結婚まで、そして短い結婚生活の末に
彼女が死を選ぶまでを思い返します。
妻はもともと、彼が営む質屋の客で、他の客とは少し違っていました。

なんていうのかしら… 素直になりなさいよ、と言ってあげたいお話しです。
いわゆる年の差婚の夫婦で、しかも、恩を着せて結婚したような状態なのです。
恩を着せられた方は気まずいにきまってるじゃないのーっ!
独身生活が長い男性には、崩せない生活パターンがあると聞きますが
若い嫁をもらうなら、それぐらいの代償は覚悟してくれなきゃね!!

『白夜/1848年』
皆が別荘へ行ってしまって、静かになった夜のペテルブルクを歩いている時
運河で泣いている少女に出会い、また会う約束をします。
再会した彼女は、以前少女の家に下宿していた青年と結婚の約束をしましたが
家を出て行ってから音沙汰が無いと打ち明けました。

主人公の男性はかなりのロマンチストで、センチメンタリストと見ました。
私には、この人の話をずっと聞いているなんて無理です。
愛だの恋だのがわからぬまま「結婚」「結婚」と言ってるような二人だと思うの。
あんまり深刻にならない方がいいですよ、と言ってあげたいですね。
だけど女性の方は今後やり手になりそうな気がするわ…

2篇とも男性の “ 考えすぎ ” がもたらした悲劇という感じです。
『やさしい女』では、夫が “ 自分は、夫婦はこうあるべき ” という
自分なりの形式にこだわりすぎてるし
『白夜』では、主人公が自分の夢想の恋に憧れすぎだってば。

ドストエフスキーはあまり読んでいませんが
これなで男性登場人物陣にはけっこうイライラさせられてきたのよね。
ちまちま悩んで、ちょろちょろ動き回り、めそめそ嘆く… ってタイプ。
ドストエフスキーって、豪快な人だと勝手に思ってましたけど違うのかしら?
それとも、自分とはかけ離れたタイプを茶化していたのかしらね。

染色体から考えると、男性の方が気が弱いってことですよね?
だからどうでもよさそうなことにいちいち順番をつけたり、ルールを決めたりするのかな?
ちぃぃぃさなことを時間をかけて(クヨクヨ)考えて、勝手に悩める人になるのかな?
いざという時は、女性の方が思い切りがいいし、白黒ハッキリしてると思いません?
女心は複雑だとよく言われますが、男心の方がなんだか複雑に思えるのは私だけでしょうか?

ひとことドラマコーナー
韓流にはまる前はほとんどドラマを見ていなかったわたくし、あの、わざとらしく、力づくで丸くおさめる
橋田ワールドに前回どっぷりはまり、『なるようになるさ シーズン2』の放送開始にウキウキです
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