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Channel: まりっぺのお気楽読書
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『ディア・ベイビー』鼻につかない一冊

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ウィリアム・サローヤン

お久しぶりです!!
今日は休みだったのですが、PhotoshopとIllustratorの再認証をとるのに
2時間以上四苦八苦していたら、ソフトが古すぎて再認証できないっていうじゃない!!
ということで、アンインストールとか再インストールをしているうちに日が暮れました。

たまってしまっている読書感想文から再開しますね。

サローヤンは『リトル・チルドレン』でちょっとした時に読むのに良いわね、と
思ったのですが、こちらもそんな感じで読み終えました。

O・ヘンリ的良い話しもいくつかあったのですが、それはおいといて
印象に残ったいくつかをご紹介します。

『若い男とネズミ(The Story of the Young Man and the Mouse)』
ある日、呑んだくれた若者の部屋に、ネズミが10ドル札をくわえて来ます。
その日からネズミはせっせとドル札を運び、若者は羽振りがよくなります。
しかしホテルの客たちはネズミが盗みを働いていることに気がつきます。
チーズに目が眩んだネズミはネズミ獲りにかかってしまいました。

失ってわかる大切さ…早く気づいてほしかったわ。
ピーター・ラビットの洋裁店のネズミの話を思い出しちゃった。
そりゃ盗みはよくないけどね…

『刃のように花のように
   (Knife-Like,Flower-Like,Like Nothing at All in the World)』
マックスの店で年配の男がピートを待っていると女が入って来ました。
男がピートの父親だと名乗ると女は自分がピートの結婚相手だと言います。
父親が息子は良くない男だと諭しますが、女は敵意剥き出しです。
結局ピートは現れませんでした。

二人が帰ったあとピートが来るんだけど、なんなのよ!それは!!って感じ。
騙す若造が悪いのか、騙される年増が悪いのか、息子に甘い親が悪いのか、
マックスはどーなんだ? とモヤモヤさせられんだけど、なんだか面白かった。

『ハリー(Harry)』
ハリーは幼い頃から家々を訪ね歩いて絵や雑誌や保険を売り歩き
14歳にして600ドルの預金を持ち、その後も金を稼ぎ続けていきました。
しかしハリーは若くして病に倒れ命を落としました。

“ 金より大事なものがある!” というありがちな教訓話ではないです。
最後まで金ではなくセールスに執着した若者の生き様が描かれているような気がします。
ちょっと寂しい一生のような気がしますが、彼が選んだ人生ということでね…

よくできすぎ…と感じたお話しもありましたが、概ね鼻につく話が無く
スラーっと読めた一冊でした。
深ーく読み込めばいろいろ教訓はあるのかもしれませんけど
そこまでは入り込めませんでした。

作者がアルメニア出身の移民で移民街に住んでいたということもあり
やけに◯◯人、◯◯人という注釈がつくのが気になったんだけどね。
出身はどこであれみんなアメリカ人じゃないの?
夢を抱いた各国の移民が、50年ほど前にアメリカの大都会で生きることは
難しかったんだなぁと、かすかに感じることができました。

後々まで記憶に残るかと言うと否定せざるを得ませんが
読んでいて楽しい一冊でした。

ひとことK-POPコーナー
SHINeeの“ EVERYBODY ” のComebackステージのおかげでYouTubeから目が離せないのよぉ
SMTOWNで歌うと思う? 歌うといいよね

『夏の嘘』ここからが知りたい

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SOMMERLUGEN 
2010年 ベルンハルト・シュリンク

ラストがはっきりしない小説はよくあります。
この後はご自由にご想像下さいということなのか、はっきりさせない方が
ハッピーだったりとか… いずれにしても心地よい余韻が残る場合が多いわけで
私も深追いはしません。 読みっぱなしってことなんですけどね…

でもこの一冊におさめられている7篇のその後、いちいち気になるわ。
いくつかあげてみますね。

『シーズンオフ(Nachsaison)』
避暑地で初めて出会った時、彼はスーザンのことを自分と同じように
ハイシーズンには来られない、裕福でない境遇の女性だと思いました。
しかし、実はスーザンは資産家で、大きな別荘の持ち主でした。
13日間の幸せな時を過ごした後、2週間後にニューヨークのスーザンのマンションで
新生活をスタートする約束をして、二人はお互いの帰路につきます。

男性は住み慣れたニューヨークの下町のアパートに帰ってから悩むのね。
玉の輿、逆玉ってものすごくおいしい話しのように思えますが、正直今でも夢見てますが
貧しい方にかなりの適応力と順応性が求められるのではないかしら?
だって、どうしても貧しい方が大部分を捨て去ってリッチな方に行くでしょ。
捨てたくない物、人、場所、習慣… 乗りそうになってから悩めばいいですかね?

『森の中の家(Das Haus im Wald)』
彼は森の中の家に越してから、妻と娘の三人で満ち足りた毎日を送っています。
妻のケイトは執筆をし、彼は家事をし、娘のリタの世話をします。
ケイトの新作は傑作になりそうで、前作は数日後の文学賞の有力候補にあがります。
彼は昔の騒がしい生活に戻ってしまうことを恐れるようになります。

男性の恐れは脅迫観念みたいなもので、妻と娘を都会の喧噪から守らなければと
必死になるのですが、激しい空回りに終わります… というか最悪!
今をときめく妻と、下り坂の夫… 普段はお互いを励まし
尊重しあって暮らしているのですが、いざという時に本音が出ますね。
逆だとここまで問題にならないんでしょうけどね… たぶん。

『南への旅(Die Reise nach Suden)』
彼女は、子どもや孫たちに大事にされていると施設内でも評判でしたが
ある日突然彼らを愛せなくなり、誕生日の席ではせっかくの雰囲気を壊しました。
そんな中看病に来た孫のエミリアを誘って大学時代を過ごした街へ旅行をすることにします。
道すがら彼女は昔自分を捨てた男性の話しをしました。
翌日エミリアは男性を探しで出して来て、会う約束までしていました。

別れた人とは会いたくない派と友人でいたい派がいますよね。
今さら会ってどーするよ? というおばあちゃんを必死で説得する意味がわかりません。
結果的によい話しに落ち着いたのですが、逆だってあったはず。
会って愛再燃しても家庭があったら困るし、昔のことで喧嘩して嫌な思いするのもやだし…
嫌がる人はそっとしておいてほしい… 私は会いたくない派です。

ハッピーエンドではないけれど、希望が持てそうなラストのお話しは2篇。
それ意外は希望が無さそうな、あるいは上手くいかなそうなラストです。
ただ上手くいかなさそうな物語の主人公たちは、希望を捨ててないですよ!

男の人は女の人を誤解していると思うんだけど
自分に長年暮らしてきた情があるから相手にもあると思っちゃいけないね。
自分は相手のここが許せるから相手も許してくれると思うのは大間違いです。

だからか、無謀なことを考える男性陣が希望を抱いて終わる物語がいくつかあって
絶対ダメだと思うんだけど、もしかしたら上手くいくのかなぁなんて思えたりして
もうすこし今後のヒントがほしくなっちゃったわけです。
明日にはもうどーでもよくなってると思いますけど…

ひとことK-POPコーナー
B.A.P 日本デビューおめでとう!! 渋谷がすごいことになっていたのね。見に行きゃよかった…
めでたいのですが『WARRIOR』は日本語じゃなくてもいいと思ふの… ごく個人的に

ポーランド公ヘンリク1世妃 聖ヤドヴィカ

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後世まで国民のよりどころだった妃
ヘンリク1世妃 聖ヤドヴィカ・シュラスカ

1174〜1243/在位 1232〜1238

Illustratorが復活したので久々に家系図を作成…なのですが
間があきすぐててポーランドの流れを忘れちゃってるよぉ
思い出し思い出し書いてみます。

ヘンリク1世はしばらくぶりにポーランドを拡大した君主として名高いようですが
その妃もその前後の妃と比較すると高名です。

父親はメラニア公ベルトルド4世で、妹にフランス王フィリプ2世妃アニェス
ハンガリー王アンドラーシュ2世妃ゲルトルードがいます。
この二人とはあまり性格が似ていないみたいですが、末の妹のマティルダはヤドヴィカと
一緒にキッツィンゲンの修道院で教育を受けていて後にそこで修道院長になっています。
ちなみにゲルトルードの王女でヤドヴィカの姪にあたるエルジェーベトも聖人ですね。
         
本当は信仰をしながら静かな生活を送りたかったんじゃないかと思うのだが
12歳という若さでヘンリクに嫁ぐことになってしまいました。

その後は君主の座をめぐるゴタゴタに巻き込まれていくわけなのですが
長くなるのでヤドヴィカに関係してることだけ書きますと…

1229年にヘンリクは対立するモスヴィア公コンラト1世にプウォツク城で
捕らえられるのですが、タドヴィカは自らプウォツクに出向いて救出しました。
1232年にヘンリクが最高公になると、ノヴゴロドのアウグスティン派や
テンプル騎士団に寄付をするなどして夫の治世を助けました。

妻としての務めを果たすかたわら、宗教活動も活発に行っていました。
1202年にヘンリクにお願いしてトシェブニツァ教会を建てています。
ヘンリク1世は1238年に亡くなるとこの教会に葬られました。
この教会は現在は聖ヤドヴィカ教会と呼ばれているようです。

ヘンリク1世とヤドヴィカには7人の子女が生まれていますが
5人が幼かったり若くして亡くなっています。

公子ヘンリク2世は父親の後を継ぎましたが、1241年にモンゴルの侵攻にあった際
神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の応援を待っているうちに戦死しました。

ヤドヴィカはヘンリク1世の死後宮廷に残って勢力をふるうようなことはせず
三女ゲルトルードが院長を務めるトシェブニツァ修道院に移り住みました。
宗教活動は衰えず、神聖ローマ帝国から聖職者を招いてシロンスクに居住区を造ったり
ヘンリク2世妃アンナと共にレグニツァにベネディクト派の修道院を建てています。

ヘンリク1世とヤドヴィカはとても敬虔な生活を送っていました。
ヤドヴィカは常に貧しい人を助ける活動を行い、全財産を教会に寄付しました。

言い伝えによるとヤドヴィカは冬でも裸足で
ヴロツワフの司教に靴をはくように勧められたということです。

ヤドヴィカは1243年に亡くなり夫と同じトシェブニツァ教会に葬られました。
列聖って、死後けっこうたってから、たとえば100年とか200年とか経ってから
されるものだと思っていたら、ヤドヴィカは1267年にされています。
これはヘンリク2世とアンナの公子でザルツブルクの大司教だった
孫のヴワディスワフが推したらしいですよ。

時は流れて、1742年にプロシアのフリードリヒ2世がシロンスクを併合しましたが
1773年にはベルリンにシロンスクの上流社会の移民たちのために
聖ヤドヴィカ聖堂が建てています。

聖人だけあって肖像画がたくさんあるので、もう1枚の載せとくね。

              

いつまでたってもポーランドのカトリック信者のよりどころだったのですね。
強いカリスマ性や存在感で国を守った妃のエピソードはよく取り上げられますね。
それはそれで、もちろん賞讃に値するのでしょうが
慈愛の力で国民を守ろうとした妃たちのことも忘れてはなりませんね。

(参考文献 Wikipedia英語版)

ひとことK-POPコーナー
録画してた韓流フォンデュを見てたらチョ・ヨンピルのライブシーンがあったのよぉ
『Hello』が流行ったのは知っていたが、激しく動きまわる姿を見てビックリした! 過去の日本でのイメージが強すぎて…

『終わりなき夜に生まれつく』やっぱりミステリーだったのかぁ

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ENDLESS NIGHT 
1967年 アガサ・クリスティ

題名がステキじゃない? と思って買いましたけど…
メアリ・ウェストマコット名義で書かれたものだとばかり思っていたのですが
読んでみるとクリスティ名義なのかなぁ?
今のハヤカワ文庫のクリスティシリーズは表紙がまぎらわしいと思うの。

かいつまんで書いてみますね。

マイケル(マイク)・ロジャーズという若者がいます。
彼は転々と職を変えていて、今は金持ちのお抱え運転手をしています。

マイクは何気なく行った町で競売にかけられていた朽ち果てた屋敷〈ジプシーが丘〉の
景観に惹かれ、再度訪れた時にフェニラ(エリー)という女性に出会います。

マイクはエリーに〈ジプシーが丘〉がどんなに美しく生まれ変わるか語り
知人の天才建築家サントニックスの話をします。

マイクとエリーは約束を交わして別れ、その後頻繁に会うようになります。
若い二人の想いは膨らむばかり…

ある日エリーが「〈ジプシーが丘〉を買った」と言います。
実はエリーはアメリカの大富豪の一人娘で、成人に達したら莫大な遺産を手にします。

ものすごーく身分違いの二人なのですが、韓流ドラマ的すったもんだも何もなく
あっさり結婚することになりました。

今までのデート、そして結婚に際して二人のためにお膳立てしてくれたのは
エリーの世話係をしているグレタという女性です。
マイクはエリーがあまりにもグレタを信頼しすぎていると危機感を覚えます。

二人は至る所に旅行に行き、マイクは贅沢を満喫します。
そうこうしている間に〈ジプシーが丘〉の立て替えは終わり
新しい生活がスタートします。

しばらくすると、幸せな二人にいくつかの不安が影を落とします。
まずはグレタの登場… ロンドンで再就職すると言っていたグレタを
怪我をしたエリーが呼び寄せ、滞在は長引いていきます。
グレタについてはエリーの信託管理人リッピンコットも警戒していました。
マイクはグレタと怒鳴りあいまでおこしてしまいます。

次にジプシーの老婆エスター・リーの出現。
彼女は最初に〈ジプシーが丘〉でマイクに会ったときも、次にエリーに会った時にも
二度と近づくなと警告したのに二人がやってきたことに怒っていて
呪いの言葉をかけて脅します。
エリーはとても怯えていました。

その他の登場人物もあらすじもごっそり省きますが、エリーは亡くなってしまうのね。
落馬事故なんですが、どうやらエスターがからんでいるようです。

ここまで読んでいて「あれれ…?」って思いました?
そうなんですよねぇ、『愛の探偵たち』の『管理人の事件』にソックリなのよね。
私も途中で結末がわかってしまいました。

内容は『管理人の事件』、展開は『アクロイド殺し』という感じでしょうか。
あ! クリスティ好きにはもう見えちゃいましたね!!

クリスティの推理小説には同じ話が数バージョンあったり
短篇を膨らまして中篇・長篇にしたりということがよくありますが
何度読んでも面白いというのが持論でした。

でも、これはなぁ… なんだか違和感があります。
どうしてだか自分でもわからないのですが、敢えて言うなら
ミステリーではないという先入観が強かったせいかもしれません。
私の読書姿勢によるもので、けっしてクリスティのせいではないと思うけど…

それから、クリスティらしいユーモアみたいなものがあまり感じられなかったかな?
似ているだけに、『管理人の事件』とのギャップが気になりました。
ま、これも、二つの作品を別物として考えられない私が間違っているのかもしれません。

ところでさ、リッピンコット氏もマイクのお母さんも
何かを察知していたなら教えてあげたらいいんじゃないかと思うわ。
そうしたら若い娘が命を落とすこともなかったんじゃないの?

ひとことK-POPコーナー
録画していた『アメトーーク』のハードロック芸人を見ていたら、やっぱりハードロックはいいよねぇ
久々に聞いてみようと思っているのですが、昨日SHINeeの『EVERYBODY』がきたもので… リピってしまうのね

『恋しくて』ハルキストの方、ここ飛ばして下さい、お願い!

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TEN SELECTED LOVE STORIES 

村上春樹さんが集めたラブストーリーをおさめている短篇集です。

あ! 「編者の意図をまったくわかってない!!」と叱られたくないので
村上春樹さんファンは読まないで飛ばしていただいた方がお互い幸せかと…

最初にちらっと見た時、表紙が竹久夢二だったので
てっきり村上春樹さんの新刊かと思ったのですが翻訳本でした。
ギャップを漂わせつつ『恋しくて』感を醸し出していますね? 違う?

実はおさめられているのはアメリカの作家の小説だけではありません。
ロシア、カナダ、スイスの作家の作品が1篇づつと
村上春樹さん自身の書き下ろしが入っています。

恋や愛をテーマに集められた10話ですが、各作品の印象はかなり違います。
私はアリス・マンロー以外の作家は読んだ記憶が無いのですが
どの方の物語もかなり面白かったです。
特に印象が強かったいくつかをご紹介します。

『愛し合う二人に代わって(The Proxy Marriage)/マイリー・メロイ』
ウィリアムはハイスクール時代にブライディーに恋をしました。
けれども自分に自信が無くなかなか告白することができません。
イラク戦争が始まりました。
ウィリアムはブライディーの父親から代理結婚の相談を持ちかけられ
ブライディーと二人で何回も代理結婚式を挙げました。

この物語は何年にもわたっていて、途中主人公二人は離ればなれになるのですが
帰省中とかクリスマス休暇に代理結婚式を挙げています。
戦地に赴いた若者の切実な思いが二人を忙しくさせているわけで…せつないですね。
それはさておき、私はこれが10篇の中では一番単純明快なラブストーリーだと思います。

『L・デバードとアリエット_愛の物語
  (L.Debard And Aliette-A Love Story)/ローレン・グロフ)』
1918年のニューヨークで、43歳の水泳の元メダリストで詩人のL・デバードは
病気で足が悪い16歳の資産家令嬢アリエットの水泳コーチをすることになりました。
水泳の上達とともにアリエットの足は良くなり、二人は愛し合うようになります。
アリエットが妊娠したことがわかると二人は資産家のもとを逃げ出しました。
生まれた息子にはコンパスという名前をつけたいとアリエットが言います。

韓国ドラマが好きだったりするわりに “ 永遠の愛 ” に懐疑的なんですよね。
信じられます? いつまでもいつまでも一人の相手を想い続けるなんてねぇぇぇ
ま、そうでないとドラマは面白くないわけなんだが…
この物語は短篇とはいえけっこう長いお話で、ハッピーエンドではない(と思う)のですが
後日談がとても美しい一篇でした。

『ジャック・ランダ・ホテル(The Jack Randa Hotel)/アリス・マンロー
ゲイルは、若い演劇人サンドラと逃げて行った夫ウィルを追うため
ブティックを売り変装してオーストラリアまでやって来ました。
すでに死亡していた見知らぬ女性にウィルが送った手紙を手に入れたゲイルは
その女性の部屋を借り、女性に成りすまして返事を書きます。

ストーカーみたいに思えるかもしれないけど、そうとは言えない興味深い内容。
初老の捨てられた妻の奮闘ぶりをそんなふうに思ってもらっちゃ困るのよ。
書かれている通りにラストを迎えるのであればバンザーイ(ザマミロ)! なんだけど
終わらなそうな余韻があるんですよねぇ。
夫の母、夫と若い女性の現在、下の階の住人のことを隠し味のように効かせていて
一番多面的な物語に思えました。
アリス・マンローがノーベル文学賞だってね! さすが!! って思える一篇。

あとはさらっと気になる二篇を…

『恋と水素(Love And Hydrogen)/ジム・シェパード』は
有名なヒンデンブルク号を舞台にしている物語です。
愛と爆発事故がどうリンクしているんでしょうか? 気になるでしょ?

『恋するザムザ(Samsa In Love)/村上春樹』
一行目で笑っちゃったんですけど、笑っていいとこですよね?
ただ物語が進むにつれてしんみりしちゃいました。
今後の二人をものすごく応援したい… せめて再会して!

村上春樹さんが各小説に解説をつけていて、恋愛甘味度というのを☆で示しています。
これはブログを書くまでは見ないようにしようと思ってまだ読んでいませんので
どう考えていらっしゃるかは不明… まったく違ってたらどうしよう〜 恥ずかしいな。

思春期の少年のほろ苦い片思い、発展したらドロドロになりそうな淡い三角関係、
同棲を始めたばかりの若いカップル、不倫を終わらせようと思っている男女、
ぜったいにバレてはならない状況下での同性愛など、恋愛のパターンはいろいろ。

どちらかというとドラマチックな盛り上がりはない物語が多いですが
実際のの恋愛はわりと淡々と進むものよね?
恋愛中の人もそうでない人も、ハルキストじゃない人も読んじゃって下さい。
短篇集としてとても面白いです。

こういうふうにテーマ別で短篇をまとめてくれるとありがたいですね。
表現する人によってどれだけ違う印象を与えてもらえるのか考えるだけでわくわくします。

今思い浮かぶリクエストとしては、子どもが主役の短篇集と酒飲みが主役の短篇集ですね。

ひとことK-POPコーナー

『EVERYBODY』のしおり可愛いね! ちなみに私はオニュでした
ポスターとトレカはあきらめるけど、しおりはコンプリートしたい気分…

『悲しき酒場の唄』邦題はおっさんくさいよね・・・

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THE BALLAD OF SAD CAFE 
1951年 カーソン・マッカラーズ

確かに訳すとそうなるのでしょうが…
原題がグッとくるでしょ! Sad Cafeですよ!!
ハードボイルドっぽく聞こえなくもないけど
わけありな男が無言で飲んでそうな、暗〜い酒場の雰囲気が滲み出てて好きです。
けっして日本の酒場を想像しないでね。

でも表紙のピカソはどーよ? 悲しそうには見えないね。

4篇おさめられていますが、メインは『悲しき酒場の唄』で
他3篇はかなり短いです。

『悲しき酒場の唄』
100メートルほどしかないメインストリートと、街道で作業する囚人たちの歌声以外には
何も無いさびれた町に、かつては人々が集まる酒場がありました。
今ではすっかり朽ち果て今にも倒れそうな酒場にいったいどんな過去があったのでしょう。

主な登場人物は三人です。
酒場の所有者で、まるで男のように働く守銭奴アメリア・エヴァンズと
突然いとこだと名乗って現れた醜い小男ライマン・ウィリス、
そして過去にアメリアとたった10日間だけの奇妙な結婚をしたマーヴィン・メイシー。
三人ともそれぞれに常人には理解し難く、軌道を逸しています。

内容は詳しく書きませんが、三人は町中が見守る中で激しい憎悪と復讐の争いを繰り広げ
その結果、人々は唯一の憩いの場だった酒場を失ってしまうことになります。
どちらかというと荒々しい内容なのですが、文章が落ち着いていて
雰囲気がしっとりしているので浸りやすい一篇でした。

私は(女だからという理由ではなく)物語の展開から言ってアメリアが不憫でなりませんが
読む人によっては違う人物が哀れに思えるかもしれませんね。
誰もが違った形の悲しさを抱えている… そんなお話しでした。

『騎手』
シーズン中のホテルの食堂の入口から、ジョッキーは、トレーナーとノミ屋と馬主の三人が
座っているテーブルをじっと見つめます。
そしていきなりテーブルに近づくと、怪我をした同僚の話しを始めます。

『家庭の事情』
マーチン・メドウズは、メイドが休みをとる木曜日だったので急いで帰宅します。
居間では子どもたちが食事もとらず電気のコードで遊んでいました。
ベッドルームに行くと、妻がシェリー酒の匂いをさせながらよろよろと近づいて来ました。

『木石雲』
少年が新聞配達を終えて夜明け前のダイナーに入りコーヒーを飲み終えると
一人の酔った男から呼び止められます。
彼は1年9ヶ月間暮らし男と出て行った妻を探しまわってきた話しを始めました。

『悲しき〜』以外の3篇は特に結末がある話しではありません。
でも「それでもいっかな〜」と思えるお話し。
日常生活でも何から何まで結末があるわけではありませんよね。
うやむやの積み重ねと言ってもいいかもしれない…
そんなうやむやな一瞬ばかりを見事に描いたお話しという気がします。

カーソン・マッカラーズは、何篇かは他の短篇集でも読んだ気がしますが
ただただ暗いのよぉ。
特にこの一冊はひとかけらのユーモアも感じられないんですけど…

でも文章の雰囲気はすごく好きです。
一点を見つめて淡々と話しているような感じで、読んでいて落ち着きます。
もっとまとまった短篇集を読んでみたいですね。
読み終わってどーんよりするかもしれないけど
今の浮かれた私にはそれぐらいがいいのかも…

ひとことK-POPコーナー
SMTOWN 1日しか当たらなかったからね… 今日はおとなしく家にいます
それにしても東方神起が出た時の真っ赤な会場の迫力 神秘的ですごかったわ! あのペンライトTになるんだね

『結婚しよう』誰がハッキリさせるのか?

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MARRY ME 
1971年 ジョン・アップダイク

実際にそういう状況に陥ってみないとわからないものかもしれませんが
じれったいのよー という物語。

ちょっとあらすじを書いてみますね。

ジェリー・コウナントとサリー・マサイアスはW不倫関係にあります。
お互い自由になって一緒になりたいという希望を持っていますが
サリーは、ジェリーが自分ほどそれを望んでいるのか不安になります。

ジェリーが2日間の出張に出かけた時、サリーはいてもたってもいられず
ぐずる子どもたちや呆れるシッターを残してジェリーを追いかけます。
しかし、そこでもジェリーのちょっとしたひと言に不安を覚えます。

そんな二人をさらに不安にさせる航空会社のストライキ。
さすがですね! 何時間も空港で待たされる、人々が増え続け座る場所も無くなる、
同じ言葉を繰り返すだけの空港職員…
二人の焦りが濃くなるにつれて悲観的になっていくサリーをうまーく重ね合わせてます。

この出張の件は何ごともなくおさまったのですが
結局、二人の関係はジェリーの妻ルースにばれてしまいます。

実はルースはサリーの夫リチャードと関係を持っていました。
それは1年足らずの関係で、すでに終わっていました。

ルースは、夫婦がこれからどうするか決定するまで連絡を取らないようにと
ジェリーとサリーに約束させますが、盛り上がってる二人が聞くもんか!
約束破る → ルース怒る、の繰り返しです。

面白いのは、女二人がお互い相手のことを自分に都合のいいように脚色して伝えるとこ。
悪口じゃないのよ、悪口言うと嫌われちゃうからね。
彼女のことは好きだ…などと言いながら脚色して良くない感じの女に仕立てちゃう。
こういうの、覚えておかないと!
ま、後々悪口を言い合うんですけどね。

とうとうリチャードも気づきまして、「四人で話し合おう」と提案します。
えー! 会っちゃう?
『メイプル夫妻の物語』でも夫の浮気相手の夫婦に会いに行く妻の話があったけど…
作者の実体験?

ここで面白いのは、女がお互い自分を被害者に見せようという努力。
「あなたのせいで私がつらいかったから子どもたちもかわいそうだった…」
「私をダシにして泣くんじゃない!」

リチャードは、今後のことはジェリーの決断にまかせると言います。

ここまでも長かったのですが、物語はまだ続きます。
あまり書くとネタバレになるのでやめときますけどね。
2組の夫婦はどうなるんでしょうね?

もうさ〜、近所の人たちにもばれちゃって興味津々の目で見られ
相手のことを悪く言えばかばうなんて仕打ちを何度もうけて
どうして「戻って来て」なんて言えるのかしら?

皆クールに見えてなんだか逃げ腰なのよ。
誰かが決めてくれたら従うけどさ、という迷路で右往左往してるだけ。
外でいろいろ言われちゃう子どもたちが可哀想ですよね!

誰がこの関係を終わらせようと断固とした態度に出るのだ? と
途中からイライラしっぱなしよ!!

実は私、ラストもよく理解できない状況なんですよね。
どうしてそうなって、さらにそうなって、そういう結論になるのか?
離婚に至る道のりは険しい、ということを言いたいのでしょうか?

確かに、カードの名義の書き換えとか、名字が変わることをいちいち説明したりとか
考えると面倒くさそうだけど… そういうことじゃなくてメンタルなことか?

ひとことK-POPコーナー
オニュ首大丈夫? EVERYBODYのカムバックだけじゃなくて
SMTOWNでも去年バージョンで激しく首振ってたものね… 痛かったろう  早くよくなりますように

『逃げ道』人生の分かれ道はたーくさんあるみたい

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LES FAUX-FUYANTS 
1991年 フランソワーズ・サガン

ひさびさにサガンを読んでみましたが、やっぱり面白いですね!!

『逃げ道』は、サガンお得意の恋愛模様や恋人たちの心理より
究極の状況下におかれた人たちの人生観と言うのかしら?
価値観と言った方がいいのかしら? そんなものがテーマになっている作品に思えます。

1940年、パリ陥落から1週間後のフランス南部の農村が舞台です。

パリの上流社会に長い間君臨してきたプライドが高いディアンヌ・レッシング
富豪の若妻で、優しく利己心の無いリュース・アデール
破産した元良家の息子で、リュースのジゴロになっているブリュノー・ドロール
外務省で30年間働いてきた社交界好きのロイ・レルミット
この四人が、パリを脱出する人々の大渋滞に巻き込まれている国道に
ドイツ空軍の轟音が鳴り響きます。

空爆で四人は運転手と高級リムジンを失います。
翌日までに、リュースの夫がアメリカ行きの船を手配している
リスボンに行かなければならない四人は途方に暮れます。

そこへ荷車に乗った逞しい農夫モーリス・アンリが通りかかり、助けを申し出ます。
他に選択肢が無いと悟ったロイは、他の三人を説得してアンリの農場に向かいます。

農場には、威圧的だけれど筋が通ったアンリの母親アルレットと
寝たきりでしゃべれないモーリスの祖父がいました。

なにせパリという最先端の大都会で、しかも上流社会でしか暮らしたことがない四人。
「こんなところにいられるか!」と考えるのも無理がありませんよね。

けれども行く所は無い、出て行く手段も無い、食べ物も飲み物も無い、ということで
しぶしぶアンリ農場にお世話になることにします。

寝泊まりするだけでも不本意なのに、アルレットは、働かざるもの食うべからず!
という主義で、四人に金ではなく労働を要求します。

ここから先、あらすじは書きませんね。

イヤイヤながら農場の仕事に手をつけたセレブの皆さんですが
一人を除いて、だんだん農場の暮らしに愛着がわいてきます。

雄大な自然と美しい夕暮れを見ているうちに今までの人生を振り返ったり
恋に落ちて、初めて本当の愛の喜びを知ったり
田舎の人々の素朴さになんとなく惹かれたり… 理由はいろいろです。

そうこうしているうちに、刈り入れが終わりました。
フランスはドイツに降伏し、兵士になっていたモーリスの父親と兄が帰ってきます。

アルレットはボロ車を手配し、四人に遠回しに出発を促します。

明らかに後ろ髪を引かれている二人、バカンス気分でもう少しいたいと思う一人、
すぐにでも出て行きたい一人… そして、出て行ってほしくない一人、さぁ、どうする?

もちろん、出て行くか残るかの選択が人生最大級の分かれ道と言えますが
実は小さな選択肢はいろいろなところにあって… 例えば
あぁ、もっと早くパリを出ていれば!というのもありますし
モーリスについて行かなければ違っていたかもしれないし
あと一泊、せめて夕食を食べてからの出発にしていれば… とか
そんなことで大きく人生が変わっていたかもしれません。

人は、自分でも気づかないうちに大小様々な分かれ道を通って来ているのかもしれませんね。

うちの旦那さんがよく「なんで東京に出て来たんだよ」とか
「なんで転職してきたんだよ」とか言います。
そしたら出会わずにすんだのになぁぁ… ってことらしい 失礼な!

それにしても、このラストは〜! 驚いた!!
サガンはそれが一番幸せだと思って書いたのかしら? いや、そうじゃないと信じるね。
最大級の皮肉を込めたラストに見えます。
意地が悪〜い! サガンたら。
ただ、一番ドラマティックではあると思いますけどね。

ひとことK-POPコーナー
今うちの夫婦はAilee に夢中! ってわけで、韓ラブ音楽祭に行くべきかどうか悩み中です
『Heaven』の日本語バージョン聞きましたけど… いいんだけど、韓国語の方が聞き慣れているせいか好きかな?

『最後の物たちの国で』生きることだけが願いの国とは…

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IN THE COUNTRY OF LAST THINGS 
1987年 ポール・オースター

9月から異動した職場のそばに、困ったことに紀伊国屋書店がありまして
時間があるとついのぞいてしまいます。
そして、のぞいてしまうとつい買ってしまいます。
K-POPビンボーに加え紀伊国屋貧乏… 本当に困るわ

オースターは、名前はもちろん知っていたのですが読んだ覚えは無いんですよね。
紀伊国屋書店で見つけ、題名に惹かれて買った一冊です。

こういってしまうと語弊があるのかもしれませんが、すごく面白かったです。

ものすごく暗く冷たく残酷な物語なのですが、目が離せない状態で
通勤中もうとうとすることなく読み、ちょっとでも暇があれば開いて読んでました。

内容を説明するのが難しいのですが、頑張って書きますね。
よく判らなくても許してほしい…

アンナ・ブルームという女性が、ある男性に向けて書いている手紙がベースなのですが
これは彼女が、行方不明になった兄を捜しにある国を訪ねてから現在まで
どうやって生き延びてきたのか、という記録を綴ったようなものです。

その国を覆っている惨状から始まり、はびこる強奪、暴力、破壊、
襲いかかってくる空腹や寒さや、限りない物資の欠乏にどのように耐え
人々がどのように死んでいくのかが記されています。

アンナはその国に到着すると同時に荒廃しきった町を目にして呆然とします。
その時点でアメリカに引き返していればよかったのに! と思うのですが
彼女は兄を捜すために残ります。

どうやらアンナはアメリカでは裕福な家庭の娘だったようなのですが
その国では生き延びるために “ ごみ拾い業 ” の職につきます。
これはれっきとした仕事で、許可証無しにおこなうと重い刑を科せられます。
なぜかというと、その国ではゴミも死体も貴重なエネルギーだから。
勝手に拾ったり埋葬したりしてはいけないのね。

この国はかなりの無政府状態に見えるのですが、警察権力はあるし
無茶苦茶な政策や法律も生み出されているところをみると、一応国なのですね?
ただ、国民が知らないうちに政府はコロコロ変わっているようです。

アンナは19歳でその国に渡っているのですが
数年間で一生分の苦痛や恐怖を味わったような印象です。
細かくは書かないけど…

たしかにラッキーとしか思えないような展開のところもありますが
ぬくぬくと育った少女が、そこまでたくましくなれるのか… と感心するばかり。

アンナは、他人を信じられないその国で、何人かの善き人たちと親しくなりますが
皆将来を考えるより今日を生き抜くのに必死なのは変わりません。

誰と出会ってどんな事がおこったかっていうことは書きませんよ。
読んでほしいぃぃ! 引き込まれていくと思いますよ。

アメリカ、フランス、ロシアなど外国の名は出てきますが
舞台になっている国がどこを指すのかは不明です。
登場人物の名前もいろいろな国のものがあるし、人種も特定しにくい…
地域も不明だし、この国に侵攻しようとしている国もはっきりしません。

こういった小説だと『1984年』から連想される旧ソ連やヒトラー政権下のドイツ、
『メトロポリス』から思い浮かぶ産業革命下のイギリスやドイツなど
モデルになっていそうな国がありそうなものですが
いくらなんでもこんなにメチャクチャな国は無いでしょうよ! と考えたいですね。

けれども、まったく地上に存在しない架空の国の、完全なフィクションかというと
そうも思えないところが、恐ろしさを感じさせます。

心温まる話しではないですし、期待が高まる展開でもありません。
中には汚い描写や残酷なシーンもあります。
ラストでは祈るだけ… という感じでしたが、不思議と清々しく読み終えることができました。
こういう気分が味わえるから、読書ってやめられないんですよねぇ。

ひとことK-POPコーナー
実は私、ハングル文字が読めるんです(覚えちゃうと簡単なんです
だからバラードだと歌詞カード見ながら歌えるのですが、意味がわからないという… 今さら単語は覚えられないと思ふの

『名もなき人たちのテーブル』心に残る船旅…良いのか悪いのか…

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THE CAT'S TABLE 
2011年 マイケル・オンダーチェ

今となっては、船旅といえば、豪華な客船での◯◯周遊ってことしか思い浮かびませんが
昔は必要な交通手段の一つだったわけですよね。

この小説が書かれたのは2011年ですが、舞台は1954年で、まさに船は交通手段。

主人公のマイケル少年は11歳です。
セイロンの伯父の家から、父と別れた母がいるロンドンに行くために
約3週間かけて航海するオロンセイ号に乗船します。

題名になっているキャッツ・テーブルですが
ディナーの時に最も優遇されない人々が座るテーブルという意味らしいです。

映画『タイタニック』でもあったように、豪華さを満喫できる一等の乗客もいれば
下層の小さな部屋に乗ってた三等客もいましたよね?

オロンセイ号にも、最上階のラウンジや船室を使える客とそうでない客がいて
マイケル少年は使えない方のお客でした。
船長とテーブルを共にできる最上級のお客様からそうでない客と仕分けされ
最終的に残っちゃった人たちが座ったのが、マイケル少年のテーブルでした。

でも、マイケル少年にとっては、気取っててなにひとつ面白味のない会話ばかりしている
船長のテーブルより、キャッツ・テーブルのほうが何十倍も良い席でした。

キャッツ・テーブルに座っていたのは、同じ年ごろのラマディンという心臓が悪い少年と
悪名高いカシウスという少年で、三人はすぐに仲良くなり行動を共にします。
他には、ピアニストをしながら航海をしているマザッパさん、
オロンセイ号の隅々まで知っている大型船の元解体業者ネヴィルさん、
船倉で植物を育てている植物学者ダニエルズさん、謎が多い女性ミス・ラスケティ、
ほとんど口をきかない仕立屋のグネセケラさん、の面々です。

彼らの興味深いエピソードをはじめ、三少年がおこすちょっとした悪戯、などなど
最初はなんだかほのぼのとした気分で読んでたんですけど…

なんか、だんだんそうはいかなくなっていくんですよぉ

なにしろ登場人物が多いのではしょるけど…
マイケル少年はキャッツ・テーブル以外の人たちともたくさん知り合いまして
そういう人たちとも、楽しいエピソードあり、しんみりする話あり、
不思議な体験をさせられたり、大冒険をして大目玉を食らったり、と
楽しく読み進んでいきますと、途中から不穏な空気が…

それは、船に乗せられていた護送中のニーマイヤーという囚人が原因なんですが
彼を取り巻く事件の中に、マイケルの大好きな人たちが巻き込まれていたり
思いもかけなかった人の正体が明らかになっていったり、と
サスペンスぽくなっていきます。

そしてラストは!
というか、ニーマイヤーの件は(あまりいい解決ではないけれど)
船内で一応一件落着するんですよね。
だからそこでラストではないんです。

問題はその後のマイケルの人生だと思うの…

一生の友とも呼べそうなラマディンとカシウスとは疎遠になっていく一方
彼らと関係があった人と深くつながり、傷ついていくマイケル。

そして、偶然同じ船に乗っていた、一番信頼のおける従姉エミリーとの関係。
あの航海がなければ二人はいったいどうなっていたのでしょう?

まだまだ子供って時に国を出て異国へ一人ぼっちで海を渡るというのはすごい体験。
多感な時に、インド洋・アラビア海・紅海・スエズ運河・地中海の素晴らしい景色や
過酷な自然や、多様な人種や習慣を目の当たりにするって、心に残るわね。
その上船の中で、なかなか出くわすことがなさそうな経験をするとは…
感受性が強い子なら、一瞬にして大人に変わってしまいそうです。

だけど、それはそれ、いい思い出として
「もうあの航海のことは忘れたら?」と言ってあげたくなります。

一生忘れられない思い出、というか体験って、いいものなんですかね?
へたしたら人生が左右されてしまう…ということにもなりかねないわけですよね。
成功できればいいんだけれど、「誰か止めてあげて〜!」っていう人もいないでもない。

ちなみに、作者のマイケル・オンダーチェは、やはり11歳でセイロンからイギリスに
単身渡ったそうですが、この物語はフィクションだそうです。
でも、少しは実体験が入ってるよね?
その時のときめきが文章に表れているような気がします。

いろいろな要素が含まれている物語でしたが、短篇の集まりのようでもあり
全体的に落ち着いた文章で読み易かったです。
どの場面でも入り込める面白いストーリーでした。

私にはなにかあるかしら? あの体験があって今があるってことが…
ま、無いから、こーんなに平凡な毎日を送っているんだと思うけど

ひとことK-POPコーナー
こんなに幸せなクリスマスは何年ぶり? 24日、25日は代々木のSHINeeに行ってまいりました。
24日はアリーナで、しかもトロッコが止まる位置! 世の中にあんなにきれいな顔の男の子がいるなんて…

『シカゴ育ち』都市的で詩的、不思議な一冊

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THE COAST OF CHICAGO 
1981〜1990年 スチュアート・ダイベック

例によって紀伊国屋書店で衝動買いしてしまった一冊ですが、すごく不思議な読後感です。
すごーく面白いか? 好きな話か? と聞かれたら、そうでもないのですが
良い後味が残っています。
内容云々というより、印象に残る一行が多い… という感じでしょうか?

アル中、ヤク中、暴力的な映画やら男に襲われそうになって死んだ娘などなど
決して美しいものがテーマではないのに、なんだかきれいな詩を読んだみたい。
吟味に吟味を重ねた単語をつなげて書いているというわけでもなさそうなのですが
なぜかいちいち心にひっかかりました。

六つのショートショートと六つの短篇、二つの連作から構成されていて
どれが一番好きとかそうでもないとかいうのは難しいのですが…
気になったものをいくつかあげてみますね。

『荒廃地域(Blight)』
朝鮮戦争とベトナム戦争の間のある年、町が公認荒廃地域に指定された。
バットで頭を殴られてから有名人や聖人を見続けているジギー、
モリーナに恋をし続けているペパー、完成しない小説を書き続けているディージョと
4人でバンドを結成し、荒廃団(ブライターズ)と名付けた。

これは以前、『and other stories』で読んだ時には、特に良いと思わなかったのですが
この短篇集で読んだらとても印象的だったのよね。
訳者(柴田元幸氏)も同じなのに… やはり同時掲載作品とか掲載順て重要なんですね。
若者がアメリカ的無茶をやっているようで、かなりせつない物語に思えます。

『夜鷹(Nighthawks)』
これは九つのお話しから成る連作で、各々に関連性はないけれど
主に夜中の風景・眠れない人たちがテーマになっています。
特に好きだったのは『不眠症』という話で
これはもう、完全にホッパーの “ ナイトホークス ” の世界!
          
これね! これがこのまんま頭の中に浮かびます。

『熱い氷(Hot Ice)』
これも五つのお話しからなる連作で、こちらは続き物です。
ええっとですね、これは、最初に書いたアル中、ヤク中、死んだ娘云々に加えて
刑務所に入ったイッちゃってる人が登場する話で、けっこうワイルドな内容なのですが
たとえば、娘が死んでいる情景がオフィーリアの絵画みたいに頭に浮かんだりして
おとぎ話的にキレイな印象が残っています。

『ペット・ミルク(Pet Milk)』
インスタントコーヒーにペットミルクを入れて飲んでいる。
ペットミルクがコーヒーの中で描く渦を見るのが好きだ。
ガールフレンドと通ったチェコ料理店のカクテルで見た渦を思い出す。

貧しいわけではないの、渦が好きなの。
コーヒーではなく、ミルクの渦にこだわる… 違いがわかる人ではないが詩的ではある。

私は “ ワル ” とかダーティーさを全面に押し出す話はあまり好きではないのですが
この一冊はまったく不快感を感じずに読み通せました。
話の中に垣間見える風景や情景が美しく儚く感じられたのが大きかったような気がします。
それが文章によるものだとしたらまさにペンによるミラクル!

柴田元幸さんは(背表紙によると)これまで訳した中で最高の一冊と断言していらっしゃる。
申し訳ないことに、私にとっては最高の一冊ではないのですが
ダイベックがとても気になる作家になったことは間違いない! と断言できます。

ひとことK-POPコーナー
BSで東方神起の日産スタジアムのライブやってたのを録っていたので観てみました。 さすがにすごーい迫力!
ところで 日産スタジアムって何人入るの? 後ろの方の人見えるのかしら? ドームだって小さ〜いのに

『店員』上質紙じゃなくてもいいと思うの…

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THE ASSISTANT 
1957年 バーナード・マラマッド

今まで短篇ばかり読んできたマラマッドの長篇を初めて読んだ感想は…
この本、感想を書くのが難しい〜

短篇でグッときた、まっすぐで我慢強いユダヤ人たちを凝縮したような主人公の
頑張って生きているのに上手くいかないことの悲しさが全篇に溢れている一冊でした。

あらすじを書きますね。

60歳のモリス・ボーバーという男性がいます。
彼は若い頃アメリカに渡ってきたユダヤ人で、食料品店を営んでいます。
ボーバーの食料品店は良い時も悪い時もありましたが、生活はずっとカツカツでした。
そして今はどん底… 近所に新しいドイツ人経営の食料品店がオープンして
少なかったお客までもっていかれました。

口やかましい妻アイダはそんな亭主をあきらめていますが
やはり人並みの生活がしたいのよ!というわけで
店を売りたがり、娘には良い相手と結婚してもらいたいと望んでいます。

一人娘のヘレンは23歳の美しい女性ですが、大学をあきらめて就職し
同じことを繰り返す毎日と悪くなる一方の家の状況に、絶望さえ覚えていました。

ボーバーが店を開いているブロックはユダヤ人街ではありませんが
隣ではジュリアス・カープというユダヤ人が酒屋を営んで繁盛しています。
そしてドイツ人に近所の店を売ったのはこの人、ってわけで、ボーバーは彼が嫌いです。

その隣ではサム・パールというユダヤ人がキャンディ・ショップをやっています。
商売はそこそこですが、競馬にめっぽう強くてそちらで食べているという噂です。

アイダは、羽振りの良いカープの跡取り息子ルイスか
奨学金で大学に通い、ゆくゆくは弁護士になるであろうパールの息子ナットと
ヘレンを結婚させたがっています。

物語冒頭、ボーバーの貧しい暮らしと哀しいやりくりが細か〜く描かれていて
読んでるこっちまでドーンと落ち込みそうな雰囲気
いい人なんだけどね…

その上、ボーバーは強盗にあって大けがをする始末… とことん不運。

ただでさえ稼ぎの無い店で怪我人抱えてどうするの? というところで
ふらりとフランク・アルバインという青年が現れます。

彼はたびたび店に来るうちに、どーにもこーにも強引に店員になってしまいます。
将来店をやりたいから、ただでもいいから、モリスがよくなるまで…
でも、これは本音じゃないらしい… では目的はなんでしょうね?

はしょりますけど、物語はこの後もボーバー一家をおそう不幸と不運のオンパレードで
けっして楽しい展開ではないです。

だからあらすじはおいといて気になったことだけ書いちゃうわね。

しつこいほど書いてますけど、私は韓国ドラマ大好き!
見どころは、なんといってもヒロインに献身的な男性陣です。
特に、 “ 影からヒロインを見つめる ” 攻撃と “ 好きだ!って言い続ける ” 攻撃、
“ どこへでもついて行く ” 攻撃なんですけどね。 羨ましいったらありゃしない。
とにかくいつも近くにいるのよぉ、旦那に言わせりゃストーカーってことになるんですが…

なんだけど、映像で観てると素敵なことが、文字で読むと恐ろしいぞ…

ご想像通り! フランクはヘレンを想うようになりまして
店員になった時同様の粘り強さと強引さを発揮するんだけど、そしてとても献身的なんだけど
これが(私は)かなり気持ち悪かったんですよね。

騎士道精神とか、人生を捧げる愛とか、だぶんハーレクィン・ロマンスなんかにもあって
ときめく内容になってるのでしょうけど、これはそうじゃない…

なぜだかはわかりません。
ただ、フランクという人のキャラクターにその行動が似会わないような気がしています。

どうなんだろう? 映像になったらフランクの行動も「これこそ愛 」って思えるかしら?
確かに、映像は文章よりストレートに心にうったえかけられるしね。
でも文章は映像より細かい心の動きが感じられそうだし… 難題です。 今後の課題にします。

暗い、暗いと書きましたが、けっして面白くないわけではないのでね。
なんだかんだ言ってするする読み終えました。

街の片隅で生きる名も無き一家をテーマにして、ほぼその家だけが舞台になっているのに
ちゃんと読み応えがある物語になっているあたり、さすがです。
それから、登場人物の箇々のパーソナリティーが明確で入り込み易かったです。

こんな終わり方ってひどい〜… と思った後も物語は続きまして
最後は少しだけ明るい未来、いや、微々たる光が見えるラストが訪れます。
この一家の今後に幸あれ! と祈るばかりです。

ところでこの本、表紙も銀の箔とか使っちゃって立派なんですが
中面に光沢の真っ白い紙使ってるんですよね。
紙は普通でいいからもう少し安くしてくれるとありがたいんだけどなぁ…

ひとことK-POPコーナー
SHINeeのオニュが『ミス・コリア』のOSTで歌ってるじゃないですかぁ『Moonlight』
ここ何日かずーっと聞いてるんですけど、やっぱりきれいな声ですよねぇ… 癒されるわぁ

『ブルックリン・フォリーズ』いいじゃない!夢物語

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THE BROOKLYN FOLLIES 
2006年 ポール・オースター

ドラマや娯楽映画などではハッピーエンドが喜ばれるものですが
小説では大団円だと、できすぎた話だとか言われがちな気がします。
なんとなく不幸を引きずっていそうだったり、曖昧な結末な方が深みがありそうでね…
勝手な思い込みですが。

このあいだ読んだオースターの『最後の物たちの国で』がまさにそんな感じでした。
ものすごく面白かったので、すぐにこの本を買って読んでみました。

この『ブルックリン・フォリーズ』もとても楽しく読んだのですが
『最後の〜』とはまったく違うタイプの面白さで、正直びっくりしました。
本当に同じ作者&訳者(柴田元幸氏)なの?

舞台はニューヨークのブルックリンです。
主人公はネイサン・グラスという59歳の男性です。
肺癌を宣告されて仕事を早期退職し、そのうえ妻から離婚されてしまい
「もうな〜んにも無い」と、静かな死に場所を求めて
3歳の時に離れたブルックリンに56年ぶりに戻ってきました。

道楽以外に特にやることもなくブラブラしているネイサンなのでしたが
ある日、たまに行く古本屋で7年ぶりに甥に再会します。

甥のトム・ウッドは子供の頃から頭がよくて、国文学の博士になるのでは?と
ネイサンが期待をよせていたのですが、2年前に大学をやめてタクシーの運転手になり
半年前から古本屋の店員として働いていました。

物語の中心は、この、全て無くして世捨て人のようになった初老の男性と
すっかり太っちまった、エリート脱落者のがっかりな甥の二人なのですが
トムと再会したことで、ネイサンはいろいろな人と繋がりを持つようになり
彼らのトラブルに巻き込まれ、忙しい毎日を送ることになります。

あらすじはやめといて、主な登場人物を紹介しますね。

オーロラ、通称ローリーはトムの美しい妹です。
二人の母、すなわちネイサンの妹が再婚した後家を飛び出して、未婚の母になり
アダルトビデオの女優になり、ミュージシャンと駆け落ちして別れ
その後一度トムに「結婚する」と言いにきたきり3年間行方不明になっています。

ルーシーはローリーが生んだ9歳の娘です。
ある日ひょっこりトムのアパートを訪ねて来ますが、絶対に母親の居所を言いません。
幼いけれど、絶対自分の意志を通そうとする頑固者です。

トムが働く書店のオーナーは、ハリー・ブライトマンという愉快なゲイですが
過去にシカゴで絵画詐欺を働き服役したことがあります。
ネイサンとトムに、大金を手にするチャンスをつかんだと打ち明けます。

トムが想いを寄せるナンシー・マズッケリは、アクセサリーを作っている人妻で
子供たちに愛情を注ぐ “ B.P.M(ビューティフル・パーフェクト・マザー )” です。

ナンシーの母ジョイスは数年前に夫を亡くした寛大な未亡人で
ネイサン&トム一族は後々とってもお世話になります。

ここまでが主要な人物で、物語の展開に欠かせないのが以下の方々。

ネイサンが妻と離婚後にけんかしてしまってから音信不通の、母親似の娘レイチェル。
古本屋の店員でハリーの恋人、ドラッグ・クィーンでもあるルーファス。
ネイサンとトムとルーシーが数日間泊まったインのオーナー、スタンリーと娘ハニー。
ローリーの夫で、ある宗派の狂信者デイヴィッド・マイナー。
ハリーの元恋人で画家のゴードン・ドライヤーは、シカゴの詐欺の首謀者でした。

もっともっといるのですが、とりあえずこれぐらい押さえておけば大丈夫かと…

あとは死ぬだけ… と思っていたネイサンですが、ここからはスーパーマン並みに活躍!

ある人を窮地から救い出し、ある人の不正を暴き、ある人の恋を(少し)手助けし
誰かが悲しんでいれば話を聞いてあげて、誰かが迷っていれば相談相手になり
店番もするし、シッターもするしで、皆から頼られっぱなし。
ちなみに、ネイサンはもと保険外交員、しかも成績優秀だったらしい。
そういうことも頼りにされる人柄になにか関係しているのでしょうか?

そんなわけで、物語は皆ハッピーにラストを迎えます。
あ、不幸かもしれない人が二人いますけど… 考えようによっては三人かな?

まぁ、それはおいといて…
ネイサンには恋人ができるし、あることがきっかけでレイチェルの愛を取り戻すし
癌は転移してないしといいことだらけ。
トムはやりたかったことができるだけの大金を手にし、結婚もしたし、痩せたしね。

ローリーも幸せ、ナンシーも幸せ、ハニーもジョイスも幸せ、ばんざーい!!

どーよ? これ。
少しぐらいひねりがあるかと思いましたが、そんなことはなく、紙面は幸せ一杯よ。
この屈託の無さ、いいですね。
しかも “ いい話〜 ” “ 泣けます〜 ” 臭がしないところがよいですね。
そういうのはウンザリ

ひねりは無いと書きましたが、少し読者に刺激を与えてあげようという小技は効いています。
読み終える頃にはこっちもハッピーになって、まさに言うこと無しでした。

けれども最後の最後に「幸せ!」とも言ってられない、世界的な不幸が示唆されます。
もしかすると、登場人物の中に、この不幸に巻き込まれてしまう人がいるのかも…
その不幸の影と、主人公の最後のひと言が印象的で、やけに気にかかるラストでした。

最後の最後の行だけ書いちゃうね。
「わが友人たちよ、かつてこの世に生きた誰にも劣らず、私は幸福だったのだ。」

ね! 気にならない?

ひとことK-POPコーナー
SISTERのヒョリンがソロ出したでしょ? 2曲MV見ましたが… さすがいろっぽい… いろっぽすぎる
でも曲はいいんだよねぇ、歌が上手いからさらに良く聞こえるのね

『古都』観光局においとくっていうのは…?

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1961年 川端 康成

私は谷崎潤一郎の『細雪』が、京都の名所案内にもってこいだと思っていましたが
この『古都』も負けていない一冊です。
どちらかといえば、伝統行事や由緒などはこちらの方が細かくて
京都観光局に置いといてもいいのじゃない? と思いましたよ。 置いてんの?

物語の舞台はもちろん京都です。
戦後とはいえ、呉服屋と着物や帯を織る機屋がかろうじて軒を連ねている時代でした。

主人公は中京の呉服屋の美しい娘、佐田千恵子です。
千恵子は、生まれてすぐ捨てられた娘で、捨てられていた呉服屋の夫婦に
実の娘のように育てられました。

千恵子は自分が捨て子だったことを知っています。
しかし両親は、千恵子が実の子ではないことは公言していますが
千恵子には「あまりにも可愛いのでさらって来た」と言い続けていました。

で、詳しいことは省くけど、ある日千恵子の前に、同じ顔をした娘が現れるのね。
千恵子はびっくり! 相手は大喜び!!

苗子というその娘は、杉山の材木問屋で奉公をしています。
捨てられた双子の姉妹を探していて、千恵子に会えて嬉しくて仕方がありません。

千恵子も今の両親を本当の親のように思っていますが、やはり実の親は知りたいわけで
これからどうしたらいいのか迷います。

千恵子を育ててきた父親の太吉郎と母親しげも複雑な心境…

そしてなにより、千恵子に想いを寄せていた男性陣も衝撃を受けます。

生き別れの双子なんて、韓国ドラマにありがち〜
しかも千恵子をめぐる男性陣三人のうち二人は兄弟で
もうひとりは身分違い… ぞくぞくする布陣ですね。
だけど、これだけのお膳立てがありながら、この物語の人々は皆お人好しなのか
ドラマ的ドロドロは無くて、お話しはまったりと展開していきます。

あらすじより気になったのは、同じ母親から同じ日に生まれても
育った境遇ででこんなに差がでちゃうのか? という二人の性格。

たぶん根本的な部分はあまり違わず、二人ともいい娘さんなのですが
千恵子は育ちがいい分、どうしても上から目線になってるのよね。
苗子も、姉妹なんだからもう少し気楽に接すればいいのに
千恵子をお嬢さん扱いして下手に出ているし…
しつこいけど、ドラマなら逆に下心がありそうな行動に思えちゃいます。

せっかく斜陽をむかえそうな京都の伝統工芸や祭りに言及しといて
尻つぼみな感じも否めません… もったいない気がします。

ただ京都弁も手伝ってか、すごくのんびりゆったり読めた一冊でした。
しかし、面白いかといえばそうでもない…

丸くおさまりそうに見えて、二人のまっすぐで純粋な娘のせいでそうはいかず
え! そこで終わる? と、消化不良気味にラストを迎える物語でした。
読んでいる途中で妄想が広がっちゃって、ちょっとがっかりしちゃったのね。

ひとことHard Rockコーナー
夜中に『リッチー・ブラックモア・スペシャル』をやるっていうから録画して、旦那と二人でワクワクしながら見たら
通販番組〜? がっかり… でも買うかどうか迷っちゃったさ… 買わなかったけど

ポーランド公ヘンリク2世妃 アンナ

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さすが妻!すごい秘密で亡き夫を探す
ヘンリク2世妃 アンナ・プシェミシュルデカ

1204〜1265/在位 1238〜1241

若い頃から賢公として知られ、ポーランド再統合を目指していたヘンリク2世の妃アンナは
ボヘミア王オットカル1世の王女で、母親はハンガリー王ベーラ3世王女コンスタンツェです。
        
12歳ぐらいでヘンリクと結婚しました。

当時の入り組んだ中欧情勢の中、もちろん政略結婚だったと思うのですが
特にエピソードは残っていないけど、仲睦まじかったのではないかと思われます。
お子様が10人生まれています。

当時、中欧にはモンゴル軍が侵攻していました。
他国に先駆け戦いに出向いたヘンリク2世は、援軍を得られないまま
レグニツァの戦いでモンゴル軍に惨殺されました。

その殺害のしかたっていうのがひどい! 詳しく書きませんけどね。
あまりのひどさにヘンリクの遺体は見分けがつかなかったようですが
アンナは、ヘンリク2世の左足には指が6本あるという驚くべき特徴を伝え
夫を探すように伝えました。

想像なのですが、当時身体的に変わった特徴があったとしたら
神聖なもののシンボルとして崇められるか、異端として迫害されるか
なにかしら世間のリアクションがあったと思うんですよ、特に王族なんかは。

この特徴もものすごい秘密で、親と嫁以外誰も知らなかったかもしれないですよね。
きっと夫婦で「変わってるだろ? 俺の足の指」「あら、すっごーい、触らせて」なんて
イチャイチャしていたかもしれない…(想像じゃなくて妄想?)
だとしたら、夫の遺体を探すための拠り所になってしまうなんて、むごいことです。

ヘンリク2世の遺体は見つかり、アンナによってヴロツワフの修道院に埋葬されました。
この修道院は、ヘンリク2世が建設を始めたものです。
アンナが夫の遺志をついで1242年に完成させました。

義母聖ヤドヴィカとともに、レグニツァのレグニツキエ・ポレにも修道院を創設しました。
ヘンリク2世が戦死したところでしょうか?
追悼の意味が込められていたのかもしれませんね。

ヘンリク2世は勇ましい男性だったとお見受けしますが、アンナの性格はよくわかりません。
ただ、二人の間に生まれたクラクフ公ボレスワフ2世の残虐な性格に
非常に悩んでいたらしいので、心優しい人だったのかなぁ?
義母ヤドヴィカや、後述の聖キンガがそうだったように
特に慈善に励んだというエピソードはないのですけどね。

公女のうち3人は他家のポーランド公妃になりました。
他国との争いを避けるための政略結婚あり、国内の権力維持のための政略結婚あり…
当時の王侯貴族の娘さんたちは、本当に大きな役割と責任を担っていたんですね。

(参考文献 Wikipedia英語版)

ひとことK-POPコーナー
KARAはニコルとジヨンがいなくなってしまうのね。特にKARAが好きというわけではないのですが、寂しいですね。
熾烈なK-POP界でせっかくここまで頑張ってきたのにもったいないなぁ…と思って

『ぼくは静かに揺れ動く』納得いかんぞ!男性はどう?

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INTIMACY 
1998年 ハニフ・クレイシ

今書きかけの読書感想文がすごーくたまっているのですが
その中で、この本は内容があんまりよく思い出せないのよね。
読んだ時にあきれちゃって、ムッとしたのは覚えているのですが…

でも頑張って思い出す…

主人公はジェイという脚本家の男性で、妻と二人の息子がいます。

ジェイは、翌日家を出て行こうとしています。
それは別居するとか、離婚の話し合いがついたわけではなくて
とにかく、これ以上はやってられないぜ! と思って、黙って出て行くわけ。
で、しばらく知人の家に身を寄せて、後日連絡しようかな、という計画です。

それでね、内容はね、出て行こうとしている前の晩にジェイが考えたこと
過去のこと、その夜起こったことなどをとりまぜて書いてあります。

なぜ妻のスーザンと一緒にいられないのか?
不幸だった母親のこと。
転がり込もうとしている友人ヴィクターが家を出た時のこと。
よき家庭人アジフとその妻ナジマのこと。
ニーナに会いたいよぉ… まぁ、いろいろ、とりとめなくね。

それから、出て行こうかやめようか…いや出て行かねば、ということが
いくつかおこります。

これを葛藤というのか、逡巡というのか、どう思う? とジェイに聞かれたとしたら
私は即座に「ふざけんな!」って言うわね。

もう、言い訳三昧にしか聞こえないんですけど。

そりゃあ、スーザンにも悪いところはあったでしょうよ。
詰問口調やバカにした言い方もムカつくわよね、一方的にそういう風に書かれているし。
でもジェイにもどうかと思うところはあるわけですよ。
特にニーナの件ね。

結局ニーナとヨリを戻したいだけなんじゃないのよ〜
それで、妻に子供たちをおしつけてプイと家を出て行くわけでしょ。
自分を正当化するために、なんだか文学的に小難しくひねくりまわしたことを
小賢しく書いてるだけじゃないのさ。 あらら、興奮してしまいました。

私としましては、無責任な男性のお話しにしか思えません。
友人がそうして幸せそうだから、自分もしていいということにはなりません。
妻がやり手で収入があるからといって、捨てていいわけではありません。
若い愛人をとっかえひっかえするのは、妻の性格とはなんの関係もありません。

訳者の中川五郎さんは、同じ男として100パーセント理解できて
自分が考えたり感じていることややっていることと同じで
共感できて、興奮できて、感動する、と書かれていますが、本当に?

ヴェトナム反戦や学園闘争を経験した人はみんなこうなのぉ?
ビートルズやボヴ・ディランを愛してた男は、無責任でいいというのか?

作者は脚本家としても有名で、アカデミー賞にもノミネートされています。
作家としても英国を代表されているそうで、読んだことなくてすみませんでした。

もしかしたら、ものすごく深遠なテーマを抱えた一冊なのかもしれませんね。
読む人が読めば、とんでもなく心に響く名作かもしれないです。
女で、しかも能天気な私が読んでしまって、本当に申し訳ありませんでした、ってことで。

ひとことK-POPコーナー
先日のお休みに新大久保に行って来ました。 BIGBANGの東京ドームの日以来だから一ヶ月ぶり?
えへへ…今回は戦利品が多くて、ここ数日寝不足気味です

『七つのゴシック物語 I・II』ね、眠いよぉ・・・

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SEVEN GOTHIC TALES I & II 
1934年 イサク・ディネセン

イサク・ディネセンといえば『バベットの晩餐会』が有名ですね。
けっこう面白く読めたので、例によって紀伊国屋書店で見つけた時に買ってみました。

私はだいたい通勤時間に本を読むのですが、開くと寝ちゃう、という本はかなり久しぶり。
ですので、この本は、いつもより読むのに時間がかかりました。

眠いというのが、つまらないという意味でなく…
私は、いつの時代かとか、どこの国の物語かに、そんなにこだわりはないのですが
あまりにもかけ離れた設定のせいでしょうか? 感情移入ほとんどなし! でした。

それから、すぐ聖書とか北欧神話、古典詩の引用があったり
本来のテーマからずれていってるような気がするエピソードが(延々と)
挿入されていたりして、ペースがつかめない一冊でした。

二冊で七つの物語がおさめられています。
余分な部分をとっぱらえば面白いなと思える話は、II集に集中していましたので
そちらから紹介します。

『エルシノーアの一夜』
エルシノーアにあるいかめしい屋敷には、以前は美しい三姉妹弟が暮らしていました。
ある晩、屋敷の管理を任されているベックばあやは、コペンハーゲンに向かい
老いた独身女性となっている姉妹、フェルナンデとエリザを訪ねます。
かなり前に死んだはずの弟モルテンが、最近屋敷に現れるというのです。

これは、ベックばあやの活躍が涙ぐましかったので…

『夢みる人々』
ある満月の夜、ザンジバルへ向かうアラビア帆船の上で、英国人リンカンが語った話。
若い頃ローマで恋に落ち、いきなり姿を消したオララという売春婦は
リンカンの知人フリーデリヒが忘れられない革命家のマダム・ローラ、
ギルデンスタン男爵が虜になった慈善家マダム・ロサルバと同一人物だったというのです。

これは、いちばんスリリングで手に汗握る感があった気がします。

『詩人』
ヒルスホルムで暮らす、元王室顧問官で町の有力者の初老の紳士マティーセンは
地方書記の青年アンデルスの、詩人としての才能を認め援護していました。
ある日、マティーセンの知人の老薬剤師が、ナポリで結婚した後、帰路急死しました。
若き未亡人がヒルスホルムにやってくると、マティーセンは、彼女とアンデルスを
結婚させようと考えましたが、思い直して自分が結婚することにします。

これは、老人のやらしい計略がどうなるのか…っていうのが気になる一篇。

元も子もない話なのですが、作者が物語の要点だけかいつまんで書いてくれていたら
かなり短くなってスラスラ読めたと思うのですが… そして面白かったと思うの。
あるエピソードから始まって、面白くなりそう… と思っていたら
おいおい、いきなり違う話になっちゃたよ、と戸惑いましたね。

ただ、最後の『詩人』は、冒頭にクリスチャン7世妃カロリーネ・マチルデのことが
書かれていまして「お!」と思いましたけどね。
カロリーネ・マチルデの浮気現場が、ヒルスホルム城だったと書かれています。

それから、I の方に入っている『猿』というお話しは、女子修道院が舞台で
未婚の貴族女性たちが、余生を気楽に送る場所というように書かれています。
以前から、貴族の子女が修道院に入る件について「特権なの?罰なの?」と
気になっていたので、興味がわきました。 最初だけ…

この本が書かれたのは1934年ですが、解説によると、
物語の舞台は主に1820〜40年代です。 やけに古くさいと思ったよ…

ちなみに、ゴシックというのは、小説界では
中世趣味の猟奇的・怪奇的な物語のことをいうそうです。 古くさくて正解だったんだね。
猟奇的・怪奇的って、私が苦手な分野じゃないの…
知らずに読んだ私が悪かった!

ひとことK-POPコーナー
SHINeeのKeyとINFINITEのウヒョンのユニットって、どうなるのか想像つかなーい!
想像つかないけど興味しんしんです。仲良しでわちゃわちゃしそう… 楽しみですね

『ディア・ライフ』引退するなんて言わないでね ・・・

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DEAR LIFE 
2012年 アリス・マンロー

日本人ですから、ノーベル賞の時期はつい村上春樹さんに注目してて
アリス・マンローがノミネートされていることも知らなかったのですが
受賞したと知って嬉しかった反面、不思議な気もしました。

あまり世界を揺さぶりそうな内容でもないし、前衛的でも政治的でもなく
テーマも文章も、極めて冷静にシンプルに書かれていると思うのですが…
それが面白いから不思議なのよねぇ! 文才とはそういうものなのね。

発売を待ちに待っていた一冊でしたので、すぐ買って読んでみました。
14篇おさめれていて、最後の4篇は連作です。
全てが印象深いお話しでしたが、特に面白く読めたものをいくつかあげてみますね。

『安息の場所(Home)』
13歳の時、両親がアフリカに赴任中の1年間、叔父の家で暮らしました。
叔父は限られた人としか付き合わず、ぜったいに家に客を招きませんでした。
ピアニストである自分の姉の話もタブーでした。
叔父にぜったい服従の叔母が、ある日隣人と叔父の姉を招く決心をしました。

叔父さんが若干横暴な気がしないでもないですが
家庭内の小さなもめごとがテーマ、というお話しなんですよ、本当は。
なのに、この、ハラハラどきどきはどうしたことでしょう?
後半ものすごく怖くて鳥肌たっちゃったよ。

『プライド(Pride)』
オナイダ、通称アイダは、あまりにも金持ち過ぎて町の人々と交流がありませんでした。
銀行家の父親が金銭上の問題で失脚して亡くなった後
アイダが家を売りたいと相談してきました。
その後アイダはたびたび訪ねてくるようになり、夕食を共にする晩が増えました。

語り手は男性ですが、二人の間に恋愛沙汰のようなことはおこりません。
そのまま長い長ーい月日が流れていく物語なのですが、究極の恋愛小説に思える!
尽くして尽くされてというわけでも、いつも気づかっているわけでもない二人なのに
もう、ぜったい、結ばれなくちゃいけない! と思わせるお話しでした。

『列車(Train)』
戦争から帰還中のジャクソンは、列車から飛び降り、家とは反対の方向へ歩いていて
荒れ果てた農場の持ち主ベルと出会い、そのまま農場で暮らすようになりました。
長い時がたち、ベルに腫瘍が見つかりました。

恋愛小説だと思った方、違うんですよぉ。
ジャクソンは自由人で、考え方によっては、ものすごい薄情者です。
なんだけど、寡黙な働き者ジャクソンが、だんだん素敵に思えてくるんです。
そして最後はいい話に思えてしまうという… 不思議だ。

小説も売れたり話題になれば、映画化っていう流れになりそうですが
アリス・マンローの物語を映像にするのは、かなり難しい気がします。
ドラマになっているものもあるようですけど、見たことないからね。

なぜかというと、感情を表す場面があまりないんだよね。
違うな… はっきり「これ!」とわかる感情表現が、あまり多くない、という感じかしら?
嬉しかった、哀しかった、悔しかった、ムカついた、という大前提がなくて
俳優さんがどのように感情を表現すればいいというのでしょうか?

物語を読んで、自分なりに感じながら読み進めていくという読書独特のテンポが
とっても適している作家のような気がします。

それから、物語のスパンが、何年から何十年まで長いものが多いですね。
人間には、いくつになっても何かが起こり得るという希望を与えてくれます。
作者自身の年齢がそうさせている作風だとしたら、引退するなんて言わないで
まだまだ書いてほしい… と思うのは、読者のわがままでしょうか?

とりあえず、新潮クレストから出ている
『イラクサ』『林檎の木の下で』『小説のように』は全部読んだから、他のを探そう。
ノーベル賞効果で、まだ翻訳されていないものも日本で発売されると嬉しいですね。

ひとことK-POPコーナー
えー! KARAにつづきNine Musesも? 二人いなくなっちゃうの?
好きだったんだけどなぁ… 9人じゃなくなるけどどうするんでしょう?

ポーランド公ボレスワフ5世妃 聖キンガ

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でた! 清い身を守った敬虔な妃
ボレスワフ5世妃 聖キンガ

1224〜1292/在位 1243〜1279

ヘンリク2世の死後最高公に即位したのは、同じくボレスワフ3世の血をひく
ボレスワフ5世でした。

ボレスワフは即位する4年前の1239年に結婚しました。
お相手は、ハンガリー王ベーラ4世の王女キンガです

      

お母さまはマリア・ラスカリズ
家系図は省いたけど、妹のヨレンタもポーランドに公妃として嫁いでいます。

結婚した時キンガは15歳で、いやいや嫁ぎました。
ボレスワフは年下の13歳でしたが、なんと、二人は結婚する時に
「生涯清い仲でいましょうね」と誓ったそうです。
で、それを守り通したそうですよ。

ボレスワフはさ、誓った時は幼かったからどうだってよかったかもしれないが
いくら誓ったといっても、思春期、青年期にさしかかったらねぇ…
もしかしたら、何度かキンガに「どうかな?」って言ったかもしれないよ。
でもキンガが断固拒否したんじゃないかと、勝手に想像してみました。

すみません… 罪深いこと考えちゃって…  
きっと誓いは守られたにちがいない!
ボレスワフは浮気した形跡もありませんし、さすが “ 純潔公 ” と呼ばれるだけありますね。

中世には、こういう頑な妃が何人か見あたりますね。
たしか… 神聖ローマ皇帝ハインリヒ2世妃聖クニグンデもそうでした。
そういえば、キンガの別名もクニグンダですね。
叔母に聖エルジェーベトがいるし、祖母のアンドラーシュ2世妃ゲルトルード
ヘンリク1世妃聖ヤドヴィカの妹です。
聖人の道を歩むべくして生まれてきたのかも…
ちなみに、キンガの妹マルギットも聖人になっています。

キンガは口先だけで信仰を誓うのではなく、行動でも示しています。
とにかく貧乏な人々のもとを訪問し、ハンセン病患者を助ける活動もしました。

1279年にボレスワフ5世が亡くなると、キンガは所有物を全て売り払い
貧しい人々に寄附してしまいました。
キンガはまだ55歳、これからどうやって生きていくのよぉ?

キンガはドロドロした政治の世界には目もくれず、クレア派の修道院に入りました。
クレア派の修道院というのは、よく貴族の子女や未亡人が入る
ゴージャスな修道院ではありません。
1292年に68歳で亡くなりましたが、残りの人生を祈りの中で過ごしました。

心から敬虔な人だったようですね。
1999年(おお、最近!)ヨハネ・パウロ2世によって列聖されました。

(参考文献 Wikipedia英語版)

ひとことK-POPコーナー
スマホをiPhoneに変えたはよいが使いこなせずイライラ〜
K-POPもうまくダウンロードできず、結局前のスマホを持ち歩いてる状態…早く慣れねば!

『婚約』生真面目さが漂ってます

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DIE VERLOBUNG 
ヘルマン・ヘッセ

ヘッセは特に好きではないのですが、なぜか何冊か持っています。
だけど読んだ覚えがないので読んでみました。

3篇しかありませんので、全部紹介します。

『婚約(Die Verlobung)/1908年』
白リンネルを扱う地味な店の、無言の店主アンドレアス・オーンゲルの
35年前のある事件は、街の人々に広く知られています。
若きアンドレアスは背が小さいことに引け目を感じていましたが
ある日、美しいマルグレートに恋をし、行動をおこしました。

この物語はものすごく好きでした。
主な理由としては、舞台がリンネル屋さんというところなんですけどね。
それから、主人公がもの静かで恥ずかしがりやで真面目すぎる男性というところ。
読んでいて「頑張れ!」と応援したくなりました。

『世界改良家(Der Weltverbesserer)/1912年』
24歳のベルトルト・ライヒャルトは、学生時代をすごしたミュンヘンで
自称芸術家たちとつきあったりしながら無為の日々を過ごしていましたが
新しい倫理を追究する一団に感銘を受け、好意を寄せていた顧問官の娘アグネスが
止めるのも聞かず、チロールの山小屋を買ってミュンヘンを後にします。

宗教ではありませんが、今でいうカルトなんですかね?
主人公は芸術家たちや倫理家の言うことを素直に信じてしまう傾向があるのね。
すごく手玉にとりやすいタイプだと思うの。
もしアグネスと上手くいったとしたら、たぶんアグネスの言いなりになると思う。
夫としてはいいんだか、悪いんだか…

『マチアス神父(Pater Matthias)/1912年』
若いマチアス神父は、愛想がよく親切で、外見も美しく、布教活動も上手で
尊敬を集めていますが、実は情熱的な過去を持ち、現在もある秘密を抱えています。
田舎への布教を命じられて上首尾に終わったマチアス神父は
ある町に立ち寄り、僧衣を脱いで酒場へと向かいました。

最初の方は世渡り上手とか、要領がいい人としか思えないマチアス神父なのですが
この後、かなり手痛い目に遭うんですよね。
こんなにウマく生きてきたのに、ツメが甘いとしか言いようがありませんが
実は、前半の裏がある人物の時の方が、後半の改心した神父より魅力的に思えました。
イキイキして人間らしかった気がするのですが… もし教訓話だとしたら失敗?

ヘッセといえば、お馴染みの『車輪の下』がありますね。
ありますねって… ぜったい読んだはずなのに、びた一文覚えてない…
たぶん好きでなかったんでしょうね。

そういえば、以前『青春はうるわし』を読んでますね。
それもあまり好印象ではなかった気がする… まぁ、長閑でよかったんですけどね。
『青春は〜』よりは、こちらの方が物語として面白かった気がします。

書いてて思ったんですけど、私がこの一冊が好きだとしたら
それは全て、一話目の『婚約』に因るものですね。
実は他2篇はそんなに面白く思えなかった…

ただ、ヘッセは真面目な人だったんじゃないかしら? と思えたた一冊でした。
黙々と書く、早寝早起き、手のかからない良い夫、という感じ。
あくまでも想像です。私は作家自身にはあんまり興味ないからさ。

読書好きには、時代や国や内容は違っても、それだけで読みたくなるという
お気に入りのシチュエーションがある人がいるんじゃないでしょうか?
私の場合は、下宿屋・安ホテル・布屋・大衆食堂なんかが舞台になっていると
それだけで2ランクぐらい好き度がアップするようです。

ヘッセが面白くないなんて、ばーか とお怒りの方もいらっしゃいましょうが
読者って勝手なものだと理解してほしい…

ひとことK-POPコーナー
EXOがすごいことになっているのね! もう埼玉スーパーアリーナって…
てことは、SMの序列からいってSHINeeは今年DOME? いいけど、代々木ぐらいが見やすくて好きなんだけどなぁ…
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