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Channel: まりっぺのお気楽読書
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ノルウェー王ハーラル3世妃 エルジフ

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キリスト教なのに一夫多妻?
ハーラル3世妃 エルジフ・アフ・キエフ

1025~1067/1045~1066

オーラフ2世が殺害された後、ノルウェーは、空位とデンマークとの共治時代を繰り返します。
国内で争ってるから、よそから狙われちゃうでしょー!

まずは賢王オーラフを倒してノルウェー王に即位したデンマーク王クヌート1世大王。
妃はエルギフエンマです。

その後空位をはさんで、デンマークとの共治をしたスヴェン・クヌートソンと
マグヌス1世善王は未婚でした。

やっとノルウェー単独王登場ですよ。 ハーラル3世です。
オスロを建設した王だそうです。

ハーラル3世妃は、有名なキエフ四姉妹の(たぶん)長女、エルジフ(エリザヴェータ)です。

キエフ大公ヤロスラフ1世と、オーラフ2世と結婚するはずだった
スウェーデン王オーロフ・シュートコヌングの王女インゲゲルドの娘です。
詳しくは前回のアストリッドを参照してください。

姉妹は皆他国の王家へ嫁いでまして、妹アナスタシアはハンガリー王アンドラーシュ1世王妃
次妹はフランス王アンリ1世妃アンナ、末っ子アガタだけちょいと不運なことに
イングランド王になれなかったエドワード・アジリングと結婚したとされています。
当時のキエフの国力の大きさが垣間見えますね。
         
ハーラルは、クヌート大王の治世中キエフでお世話になってまして、もしかして恋愛結婚?

二人は1043年に結婚し、1045年にそろってノルウェーに帰国しました。
ところがですね~、帰国から2年後、ハーラルは単独王になると、トーラという女生と
結婚しちゃうんですよね。
そしてエルジフもトーラも在位が1066年までとなっているのよね。
すでにキリスト教化されていたと思うんだが… 一夫多妻?

実は、エルジフがノルウェー王妃として記されているのは宮廷詩人が書いた一編の詩だけで
それ以外には資料が実存していないらしい…
ノルウェーがキエフとの繋がりなんかを強調するために盛りましたかね?

とはいえ、ハーラルがイングランドの王位継承に巻き込まれて遠征中に亡くなった時
エルジフも娘たちと同行していたそうで、長女マリアもイングランドで亡くしています。
そしてデンマーク王オーロフ1世妃インゲゲルドはエルジフの娘となってますので
ハーラル3世妃だったことに間違いはないようですね、と思いきや! つづく


ごちゃごちゃになってます
ハーラル3世妃 トーラ・トルバーグズダター

1025~没年不詳/在位 1048~1066

ハーラル3世が単独王になった時に結婚したとされるトーラは
ノルウェーで勢力があった一族のトルバーグ・アネッソンの娘でした。
従姉妹にスコットランド王マルカム3世妃イーンガボーグがいます。
          
後に王になる、マグヌス2世とオーラフ3世の母ですが、あまりエピソードがなく
没年もわかっていません。
デンマーク王スヴェン2世か、スウェーデン王ホーコンと再婚したとも言われますが
どちらも確認ができていないそうです。

ただ、ハーラル3世のスコットランド遠征に付き添ったのは、エルジフではなく
トーラだという説が浮上。
そういえば、エルジフも没年がハーラル3世の死から1年後になっていますが
どこで亡くなったかはわかっていないんですよね。

この二人の妃の存在、なんだかミステリアスですね。
一人二役的な “ 入れ代りもの ” ドラマができそうな気がします。

(参考文献 武田龍夫氏『物語北欧の歴史』 Wikipedia英語版)

ひとことK-POPコーナー


AERAの表紙&インタビュー! こんなに立派になってくれて目頭が熱いわ…
誰なんだよぉ? この(美しい)ボーイズは? と、お思いの定期購読者の方もいらっしゃいましょうが
これを機にSHINeeを覚えていただければと…

『孤独な娘』読書、迷走中…

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MISS LONELY HEARTS 
1933年 ナサニエル・ウェスト

ナサニエル・ウェストは、4作品だけを残して、37歳でこの世を去った
不遇の作家だそうです。
それで、この一冊を読んだ感想ですが、さしあたって残りの3冊を読む予定はないです。

題名と表紙のレビューに惹かれフラフラと買ってしまった一冊。
レビューから、私が惹かれた部分を抜粋してみます。

“ 新聞の身の上相談欄を担当する孤独な娘は、投書者の手紙に対応しているうちに
彼らの悲惨さにのめりこんでいく ”

私としては、孤独な娘と名乗る、男性の被相談者が、どのように相談者たち同様の苦悩を
抱えていくのか… という、過程におおいに期待していたんですよね。

ところが、1ページ目を開いたら、もうすでに苦悩にまみれちゃってる “ 孤独の娘 ” がいて
あとはどんどん苦悩の深みにはまっていくばかり…
そして、深みにはまるにつれ怠け者になっていく印象が濃くなっていきます。

一度は立ち直れそうな展開を見せたのに、なぜか逆戻り…

そしてこのラスト… いろいろ盛り上がりそうだったのにブチっと終わっちゃいました。

相談者の手紙もいくつか紹介されているのですが、フィクションだとしてもひどい話しで
こんなものを読み続けていたら、そりゃあ平常心ではいられないかもね。
“ 孤独な娘 ” は真面目すぎたのかもしれません。

新聞の売上を伸ばしたいだけで身の上相談のコーナーを作り
しかも送られてきた手紙を笑いものにするシュライクという上司がいて
“ 孤独な娘 ” の苦悩と対比させて、イヤ~な感じを存分に醸し出しています。

この物語が書かれたのは、大恐慌後の1933年です。
もしかしたら、相談者の手紙の内容はかなり現実に近かったかもしれません。

新聞の身の上相談コーナーの記者が持ち回りであったことを祈ります。

作中何度も神と内なる精神に向き合うという、私が最も理解できないジャンルの小説でして
何も書けることがありませんです。
先日ミラン・クンデラで大失敗したばかりだというに…
そんなわけで、今日はここまで… すみません。

ひとこと愕然としたコーナー
家系図は今ノルウェーなのですが、ノルウェー王家も長いからしばらくこれで… と思っていたら!
共治時代&カルマル同盟で、もうほとんどスウェーデン王妃とデンマーク王妃で書いてた~ 次どうしよう~!!

『水車小屋攻撃 他七篇』ゾラ再発見!

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L'ATTAQUE DU MOULIN 
エミール・ゾラ

ルーゴン・マッカール叢書のせいか、私の中でゾラは完全に長篇作家というイメージが
でき上がっていて、ゾラの短篇集? と、すごく不思議な気持ちで読み始めました。

短篇集とはいっても、8篇のうち4篇が70ページ前後あって、短めの中篇って感じ?
ゾラは手を抜かずに風景や背景を細かく描写してまして、内容もぎっしり書き込まれ
読み応え十分でした。

反戦を訴えていると思われる『水車小屋攻撃』、妻の浮気がテーマの『シャーブル氏の貝』
『パリの胃袋』『ナナ』を彷彿させる、やっぱりゾラだ~!の『ジャック・ダムール』
私には理解できない男心と恐ろしい少女の駆け引きを描いた『一夜の愛のために』が中篇。

『小さな村』はエッセイなのかな? こちらも戦争への抗議を込めています。

それ以外の、まさに短篇という3篇をご紹介しますね。

『周遊旅行(Voyage circulaire)/1877年』
1週間前に結婚したばかりのリュシアンとオルタンスは
オルタンスの母親が目を光らせていて、一時もふたりきりになれない。
リュシアンの父親ベラールおやじの助け舟で
二人はノルマンディーへ一ヶ月の新婚旅行に出かけることになった。

せっかく二人きりで旅行に出られたのに、ハネムーン離婚? なんてハラハラしてたら
いい感じで終わりを迎える物語です。
若い二人には今後、姑さんの意地悪に負けずに頑張っていただきたいですね。

『ある農夫の死(La Mort d'un paysan)/1876年』
70歳のジャン=ルイ・ラクールは、頑健な農夫だったが、ある日倒れ
翌日畑でも腕に力が入らなくなると、その次の日からはベットから起き上がらなかった。
医者を呼ぶのも拒み、子供たちや孫を畑に行かせた。

フィリップの『質撲な人の死』と『老人の死』を思い出しちゃいましたね。
人の死はこうありたい… 言うは易し…
他にも、貴族・ブルジョワ・プロレタリア・小市民の死の四篇があるらしいです。 読みたい…

『アンジェリーヌ(Angeline)/1899年)
2年ほど前ポワシー近郊を自転車で通りかかり、あまりにも酷く朽ち果てた館を見つけた。
心を打たれ近所の宿の老女に話しを聞くと、40年ほど前に嫉妬に狂った継母に殺された
12歳の美しい少女の幽霊が出ると言う。

女二人のドーロドーロした過去が暴かれていくのでしょうか? ってワクワクしてたら
こちらもいい感じの話しに終わってしまった。
館の Before - After がすごくて、ちょっと笑えました。

ゾラは、短篇はハッピーに終えたかったんですかね?
長篇は、ゾラの物語は好きなんだけど、ここまで残酷に終わらせなくても… と
心が重くなるものが多い気がしますが、せめて短篇では読者の心を軽くしようなんて考えた?
そんな気は使っていただかなくてもよかったんですけど、おかげで楽しく読めました。

いずれにしても、なぜ今まで、ゾラに短篇があるってことを思いつかなかったんだろう!
ぜひ他の短篇も読んでみたいでしょう!!

ひとことクラフトコーナー
知人に教えてもらったんですけど “ 羊毛フェルト 失敗 ” でググると、すごーく笑えます。 ご存知かもしれませんが…
辛い時や悲しい時、これからはこれだな!って思いました

『愛の深まり』家族の絆の幻想とほつれ

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THE PROGRESS OF LOVE 
1982年 アリス・マンロー

実は他の作家の本を買おうと思って、パラパラと後ろの方をめくっていたら
彩流社から出ている他の出版物の紹介ページがあって、そこで見つけました。
即ネットで購入しまして、届いた日から読み始めました。

やっぱり面白い!!

アリス・マンローの小説を読んでいると、当たり前のことなんですけど
父にも母にも、祖父にも祖母にも若い頃があったんだよなぁ…と思わされます。

日本人だと特にそうかもしれませんが、お父さんやお母さん、ましてや
じーじやばーばに、ロマンスとか男女のすったもんだがあったなんて思えないですよね。

この短篇集でも、マンローが描くのは家族のちょっとしたエピソード。
そして自分の過去やエピソードに、両親を祖父母を含む家族の過去やエピソードを絡め
少し肌寒くて緊張感がある、なんともいえないマンロー・ワールドを繰り広げています。

短篇集とはいえ、一話一話にぎっしりみっちりエピソードがつまっていて
時代・場面もくるくる変わり、家族みんなが主人公状態なので、あらすじは書けません。
なので、特に好きだったお話しのサワリだけ書きますね。
物語はそこからどんどん広がって、様々な時代や場所を彷徨うことができます。

『コケ』
デイヴィッドは、21年間の結婚生活の後、離婚して8年になる前妻ステラの父親の
誕生日を祝うため、例年通りステラが暮らすヒューロン湖のコテージを訪れた。
彼は恋人のキャサリンを連れて来ていたが、ステラと二人きりになると
今夢中になっている別の女のポラロイドをステラに見せつける。

『モンタナ州、マイルズ・シティ』
夫アンドリューが初めて新車を購入し、6歳と3歳の娘を連れて、バンクーバーから
お互いの故郷オンタリオを訪ねることにする。
5日間かけて、アメリカを通って帰る行程の3日目、あまりの暑さにマイルズ・シティで
無理を言って閉まっているプールで娘たちを遊ばせてもらうことにする。

『発作』
60歳代の隣人ウィープル夫妻が心中した。
見つけたのは頼まれた玉子を隣に届けに行った、ロバートの妻ペグだった。
二人を見つけたペグは、警察に行った後、ロバートが所有するアーケードに出勤した。
ロバートにも電話せず、同僚にも心中のことは言わなかった。

どこがどう特に好きなのか、自分でも説明がつかないのですが
『コケ』と『発作』は、ステラ、ペグという女性のパーソナリティーが好きみたい。
『モンタナ州~』は、いろいろあっても、この一冊の中で、この家族が一番幸せで
これからも幸せに暮らしていけそうな気がしたから… 先のことはわかりませんけどね…

以前どこかで書いたかもしれないのですが、世の中にはもめ事が多々ありますが
家族内のもめ事にくらべたら、他人とのもめ事なんてどうにでもなりそうな気がする。

クラスメート、仕事仲間、遊び仲間、隣近所の皆さんとのもめ事も一大事だし
親友や恋人とのもめ事も心が痛くて辛いかもしれない…
でも、いざとなったら、エイ!っと投げ捨ててしまう選択もできるわけですよね?
もちろん、それはそれでパワーがいることだけど、どうせ他人なんだし…と割り切ろう!

だけど家族はね、どんなに気が合わなくても、もめても、全く好きになれなくても
投げ捨てることを世間が許さないのよね。
特に結婚で結ばれた関係でなく、血が繋がっていると「家族だから」と
一緒にいること、集合することが当たり前のように考えられてますよね。

マンローの小説には、頻繁に集まったり訪ねあったりして仲が良さそうに見えるのに
家族という集合体が抱える危うさというか、薄氷を踏む感じの会話や表現が
たーくさんちりばめられていて、それが肌寒さを感じさせるのかも…

そして毎回思うんだけど、マンローの小説は、2回目、3回目と読む度に面白くなるのよね。
前回とはまったく違う印象を受けたり、再発見がたくさんあったりします。
『愛の深まり』も、しばらく寝かせてから読んだら、再び楽しめそうです。

ひとことグルメコーナー

地元の各書店で大打ち出し中の『TokyoWalker武蔵小杉・日吉・綱島ジモト飯』 しばらく悩んだあげく買ってみました
休日引きこもりのわたくし、知らないお店が多かったです。 でも、昨夜はよく行くお店でディナーしちゃいました。

ノルウェー王オーラフ3世妃 インゲリッド 

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              おちゃめでしょ! マルグレーテ像です

王女で王妃… 以上です
オーラフ3世妃 インゲリッド・アフ・デンマーク

生年不詳~1093/在位 1067~1093以降

ハーラル3世の後を継いだマグヌス2世は未婚でした。
その後は弟のオーラフ3世が王になります。

オーラフ3世の妃は、デンマーク王スヴェン2世の王女インゲリッドです。
スヴェン2世にはガイダとグンヒルドという二人の妃がいましたが
インゲリッドの母親はどちらか不明です。
     
完全なる政略結婚で、1067年に結婚しました。
1093年にオーラフ3世が亡くなると、とっとと宮廷を後にし
スヴェン・Brynjlfssonという人と再婚します。
子供もいなかったしね。

在位中も未亡人になってからも、王妃としてどんなことをしていたのか
まったくわかっていないらしい…
ぜんぜん政治に興味がなかったみたいですね。

オーラフ3世の後に即位したマグヌス2世の庶子ホーコン2世は未婚でした。


意外にドライだった?
マグヌス3世妃 マルグレーテ ・フレドスコラ

1080頃~1130/在位 (ノルウェー王妃)1101~1103
           (デンマーク王妃)1105~1130

デンマーク王ニルス妃として一度紹介しているのですが
ノルウェー王妃としてはどんな方だったのでしょうね?

スウェーデン王インゲ1世の王女だったマルグレートは
1101年、平和条約のためにノルウェー王マグヌス3世と結婚しました。
この時から “ フレドスコラ(平和の乙女) ” と呼ばれるようになります。
        
マルグレーテは持参金がわりにノルウェーにヴェステルイェートランド地方の
広大な領地を持って来ます。
いつも思うんだが、住人たちは勝手に国を変えられて困ったでしょうね。

結婚からわずか2年後の1103年にマグヌス3世が亡くなると
マルグレーテはさっさとノルウェーを後にしました。
子供もいなかったし、2年だもの、そんなに愛着ないわよねぇ…

しかし彼女が当然残ってくれるものだと考えていたノルウェーサイドは
すごく無礼だと感じたらしく激怒
しかも、聖オーラフ1世の遺品を持ち去ったと盗人呼ばわりされてしまいました。
噂って恐いわぁ… 本当のところはどうだったのでしょうね?

マグヌス3世の没後は3人の王子が共治王として即位しますが
3人とも愛妾の子で皆母親が違いました。

オーラフ4世は未婚でした。

(参考文献 武田龍夫氏『物語北欧の歴史』 Wikipedia英語版)

ひとことK-POPコーナー
今年は代々木が1日しか当たらず不完全燃焼… でも席はすごく良かったのよね!!
だけどベスポジなだけに、いいところでカメラマンが目の前に立つ!という… 何度ペンラで殴ろうと思ったことか…

『ブリティッシュ&アイリッシュ・マスターピース』ガツンと失恋しました

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BRITISH AND IRISH MASTERPIECES 
ジョナサン・スウィフト/メアリ・シェリー/チャールズ・ディケンズ/オスカー・ワイルド
W・W・ジェイコブズ/ウォルター・デ・ラ・メア/ジョセフ・コンラッド/サキ
ジェームズ・ジョイス/ジョージ・オーウェル/ディラン・トマス

イギリス文学好きと言っておきながら… しかも、柴田元幸さん編訳なのに…
作家陣もそうそうたるものだっていうのに…

おさめられている12篇は、英国で語りつがれている名作だそうです。
いくつかは納得しましたが、いくつかは、え? こ、これ? と戸惑いました。

納得できなかったものの最たるお話しは、スウィフトの
『アイルランド貧民の子が両親や国の重荷となるを防ぎ、公共の益となるための
 ささやかな提案』というのですが、これ、いくら冗談とはいえ
大問題にならなかったのでしょうか?
今なら一発でメディアからたたかれてしまうね! たぶん…

印象に残ったお話しをいくつかご紹介します。

『死すべき不死の者(The Mortal Immortal)/1833年 メアリ・シェリー』
323年間生きてきた男性の独白。
錬金術師コルネリウスが作った薬を媚薬と間違えて飲んだために死ぬことができない。
300年前に愛するバーサと結婚したが、彼女だけが年をとっていった。

韓国ドラマで『星から来たあなた』っていうのがあって、主人公の宇宙人は年とるサイクルが
人間と違うから、400年生きてても若いわけ! それで好きになった女性が
「私だけがばあさんになってしまう!」って愕然としちゃう、っていうのを思い出した。
それはおいといて、生き続けるのもけっこう大変なんだなぁ… 妻の気持ちもよくわかる…

『猿の手(The Monkey's Paw)/1902年 W・W・ジェイコブス』
ある雨の夜、郊外に住むレークスナム荘のホワイト一家を退役軍人モリスが訪れ
願いが三つ叶うがろくなことにならないという、ひからびた猿の手を置いて行く。
息子のハーバートはバカにして「200ポンドを与えたまえ」と祈れと言う。

ジェイコブスは、たぶん、短篇選で『失われた船』『人殺し』
2篇しか読んだことがないと思います。
いずれにしても怪奇畑の方だと思いますが、なぜかしんみりするのよね。

『運命の猟犬(The Hounds of Fate)/1911年 サキ』
何もかも上手くいかなかったマーティン・ストーナーは、海を目指して歩いていた。
しかし、雨宿りをさせてもらおうと立ち寄った屋敷で、行方不明になっている
女主人の甥に間違えられ、食事を出された上に心地のいい部屋を与えられた。

サキはクスッと笑えるお話しも多いですが、やはり英国の名作家だけあって
怪奇的なものも多いですよね。
このお話しも怖いんだけど、坊ちゃま思いの老使用人の判断が悔やまれる感じです。

ワイルドの『しあわせな王子』『ダブリン市民』からの『アラビー』と『エヴリン』
オーウェルの『象を撃つ』などは、私もお気に入りですが
どうしてもついていけない作品もいくつかありました。

これが英国人好みの物語なのかぁ…

ハードロック好きで、イギリスの小説が好きで、イギリスの雰囲気が好きで
以前は休みといえばイギリスに行っていたのに、私はイギリス気質ってものを
なーんにも理解してなかったようです。
何年もの片思いに終止符がうたれた気分です。

ひとことK-POPコーナー
またまたやっちまった!! 遠征 to 名古屋ガイシホール SHINee WORLD 2016 D×D×D 
約束した通り、ひちゅまぶしを食べましたよ~、ミノ! 
そしてうなぎ屋さんの座敷席の二人連れはほぼシャヲルだったという…

『レズビアン短編小説集』表紙のインパクトったら!!

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セアラ・オーン・ジュエット/ケイト・ショパン/ウィラ・キャザー
キャサリン・マンスフィールド/ガートルード・スタイン/ラドクリフ・ホール
ヴァージニア・ウルフ/デューナ・バーンズ/ヘンリー・H・リチャードソン
カースン・マッカラーズ/ジェイン・ボウルズ/イサク・ディネーセン

作家陣の全員がアメリカ人というわけではないのですが
割合が高かったのでアメリカの作家のカテゴリーに入れました。

買う時にちょっとドキドキしましたが、大好きなマンスフィールドの未読作品があったので
「えいっ」と本屋さんのカウンターに差し出しました。

でも、そんな心配はまったく無用ですよぉ~。
上記の執筆者は登場順に書いていて、後半になると私には難解なものもあったのですが
テーマは極めて穏やかで読み易い作品がほとんどで、良い小作品集でした。

印象に残ったお話しをいくつかご紹介します。

『マーサの愛しい女主人(Martha's Lady)/セアラ・オーン・ジュエット』
ある夏、ミス・パインの屋敷に、若い従姉妹へレナがやって来る。
働き始めて間もない、叱られてばかりの使用人マーサは、ヘレナの優しさに打たれ
着々と仕事を覚えていくが、数週間後、ヘレナは屋敷を発ってしまった。

これはまぎれもない愛の物語ではないでしょうか。
思い続ける愛、敬い崇める愛、捧げるだけの愛などなど、愛の美しさ満載のお話し。
アメリカの作家ですが、英国っぽい香りがします。 1800年代だからかな?

『しなやかな愛(Leves Amores)/キャサリン・マンスフィールド』
忘れられないシスルホテル.
ある夜、向いのあの人の部屋で着替えを手伝い、外で食事をしてオペラ座へ行く。
オペラ座を出ると、二人で無言のままホテルへ歩いて帰った。

3ページと、ものすごーく短い作品なのですが、いちばんストレートに
女性への愛を表しているお話しかもしれません。
短いのに、各シーンの情景が目に浮かび、ドキドキさせられるお話しです。
マンスフィールドはもう一編『至福(幸福)』という作品が収載されています。

『ネリー・ディーンの歓び(The Joy of Nelly Dean)/ウィラ・キャザー』
ネルは美しく町の皆のお気に入りで、特にミセス・スピニー、ミセス・フリーズ
ミセス・ダウは、彼女を愛して可愛がっていた。
ミセス・スピニーの息子スコットはネルが好きだったが、ネルは評判の悪いセールスマンの
ガイ・フランクリンと婚約すると、わたしに打ち明けた。

美しくてもてはやされた少女が、必ず幸せになれるかというと…という
ありがちな話しですが、三人のミセスの存在が、物語の面白さを数倍増ししてくれます。
母親のように姉のように愛情を降り注いだ三人のその後が、哀しくも美しいお話しでした。
ウィラ・キャザーはもう一編『トミーに感傷は似合わない』という作品が収載されています。
そちらも主人公を見守るじい様たちがいて、しんみり面白かったです。

たしかに深読みすると、女性が女性を愛おしく思っている様子が垣間見えますが
だからってそれがすぐにレズビアンに繋がるというわけではないですよね?
私も綺麗な女の子を見るのは好きだし、男性より女性と暮らす方が楽だろうな~なんて
考えたりしますもん。

ですので「女性同士があんなことして、こんなことして… が描かれている短篇集だ」と
決めつけないで(期待しないで)読んで下さい。 普通に面白い短篇集です。

最後に作家陣の紹介ページがあります。
今回は(解説は飛ばしたけど)しっかり読んでみました。
皆さんいろいろな女性とのエピソードがありまして、もちろん恋愛感情で結ばれた関係も
あったでしょうが、どうやら、信頼し合えるパートナーというところへ落ち着くのが
多かったみたいに思えます。

カーソン・マッカラーズみたいに、ドラマティックな一生を送った方もいますが…

作家陣は、1800年代から1900年代前半に生まれています。
性的マイノリティー感が今より強かったと考えられる時代に、自分の性的嗜好を堂々と
あるいは自然体で表していたという勇気に尊敬を覚えます。
それとも、芸術家は今より性に関して自由を得られていたのだろうか?
当時の風潮なども調べてみなければなりませんね… たぶん調べないけど。

ひとこと気になるコーナー
買われました? 村上柴田翻訳堂! 私はまだ買ってないんですよね。 子供が主人公でしょー? うぅぅぅぅん…悩むわ
マッカラーズとサローヤンですよねぇ… やっぱり買うべきか?

ノルウェー王エイステン1世妃 インギビオルグ

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       どーにもこーにも肖像画がみつからないのでシグル1世妃ブラスミンをイメージして
             アーサー・ラッカムという方が書いたアイルランドの妖精のイラストを…

ノルウェー人のノルウェー王妃ということで有名
エイステン1世妃 インギビオルグ・グットルムズダター

生没年不詳/在位 1103~1123

母親の違う三兄弟で共治王になったエイステン1世の妃は
リレハンメル出身のグットルム・トレッソンの娘です。
        
エピソードは無いが家系図は立派です。
11~13世紀の王妃の中で、たった二人しかいない
ノルウェー人のノルウェー王妃のうちのひとりということが有名です。
あと、王女マリアの息子オーラフが僭称王となって、国外追放になったことぐらい?

没年もわかりません。


置いて行かれた若妻
シグル1世妃 ブラスミン・ムィルチャルタクスダター

生没年不詳/在位せず

ムィルチャルタクの娘… なんだか、タイとかモンゴルとかみたいな響きですが
ダブリン王の王女です。
ノルウェーとダブリンが同盟を結ぶために、お互いの親によってアレンジされました。

二人は1102年に結婚して、シグルはダブリンで暮らしていたみたいです。
しかし、1103年にマグヌス3世が殺害されると、14歳のシグルはノルウェーに戻り
兄弟たちと共治王として即位します。

なんだかその時に、ブラスミンは置いて来ちゃったみたいなのよね。
「必ず迎えに来るよ」「お待ちしています」みたいな、涙もののシーンはあったのかしら?
なんでも二人は、その時はまだ床入りしていなかったらしい…
そしてシグルは13年後に他の人と結婚しちゃいます。
お相手は、後にデンマーク王エーリク2世妃になるマームフレドです。

ちなみに、シグル1世はセシリアという女性とも結婚したことになってるんですが
マームフレドと離婚したわけでもなさそうなので、またまた一夫多妻でしょうか?
シグル1世は十字軍にも参加してイスラム教徒と戦った王で
十字軍戦士王と言われているのに重婚ですかぁ? 次の王は愛妾の子だし… 
中世のキリスト教的倫理感てよくわからないっす。

シグル1世の庶子で、次王になったマグヌス4世の妃は、マームフレドの姉インゲボルグと
デンマーク王子カヌート・ラグヴァルドの王女クリスティンです。

家系図はこんな感じです。
     
1132年にマームフレドの仲介で結婚したんですけど、エピソードは特にないです。

(参考文献 武田龍夫氏『物語北欧の歴史』 Wikipedia英語版)

ひとことK-POPコーナー
 

どうなのよぉ~! これ  SHINyan 正式デビューですって!! かわいいー 
キレッキレでモフモフのダンスってどんななの? 気になりすぎる!!
みんな似てる気がするけど、 ミノにゃんが… に、似てる… カリスマの瞳が…

『いま見てはいけない デュ・モーリア傑作集』ビジュアル系オカルト?

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DON'T LOOK NOW AND OTHER STORIES 
1971年 ダフネ・デュ・モーリア

デュ・モーリアの短編といえば『鳥 デュ・モーリア傑作集』『破局』
2冊を読んだことがあります。
怪奇小説方面の作家ですが、なんだか好きでまたまた読んでみました。

短篇集ですが、おさめられているのは5編で、それぞれ少し長めのお話です。
さらさらとご紹介しますね。

『いま見てはいけない(Don't Look Now)』
最愛の娘を亡くして傷心の妻ローラの療養のため、ヴェネチアを訪れているジョンは
ある日、レストランでローラの後ろに座った双子の老姉妹をネタにゲームを始めた。
ローラも面白がっていたが、その後妹の方に「娘が一緒にいる」と言われ、二人に心酔する。

『真夜中になる前に(Not After Midnight)』
教師だったぼくは、イースターの休暇に、絵を描くためにクレタ島を訪れた。
ホテルに無理を言って絶景のバンガローを手に入れたが、そのバンガローで2週間前に
男性が変死したことを後で聞かされた。

『ボーダーライン(A Border-Line Case)』
回復していたのに、目の前で急死した父親との会話を思い出し
疎遠になっていた父親の友人ニックに会いに、アイルランドへ向かった新人女優シーラ。
ニックは世捨て人になって、湖の中にある島で、彼の信奉者たちと暮らしていた。

『十字架の道』
代理牧師のパブコックは、インフルエンザの教区牧師に代わって
イスラエルで8人の教区民を引率することになった
食事をしている時、メンバーの一人の少年が、二千年前の今日は最後の晩餐の日だと言う。

『第六の力(The Break Through)』
上司から急に〈サクスミア〉という研究機関への出向を命じられて訪れると
そこにはマクリーンという科学者、ロビーという医者、ケンという若者、ジェイナスという
給仕しかおらず、表向きの研究とは違う実験が行われていた。

印象は、上から、オカルト、心理劇、テロリズム、?、狂信者ってことになるんですかね?
『第六の力』は、科学の名を借りた人間の横暴に警告を発しているのかもしれないです。

よくわからなかったのは『十字架の道』で、これいい話し?
混沌としたエルサレムが舞台、クセのある8人の人物、イエス様への罪深い行いに言及し
怪しげな遺跡をまわり、最後の晩餐が持ち出され、皆がすぐはぐれて一人になっちゃうという
お!ここから始まるか!! という場面をいくつもむかえながら、ハッピーエンドよ。

ドラマだったら、少年の言葉に大人たちが笑って、皆が乗ってるバスの後ろ姿で終わる…
平凡な発想ですみません…

デュ・モーリアの小説はいくつか映画化されていますね。
この本におさめられているお話しが、映画やドラマになっているのかどうかはわかりませんが
やはり映像化を意識して書いていたのでしょうかね?

舞台も、イタリア・ギリシャ・アイルランド・中東という、風光明媚な場所を選んでいますし
女性陣のお衣装も、さすが女性作家ってな感じに詳しく描写されていて
ビジュアルになり易い気がしました。
いいドラマになると思う… (エラそう…
“ デュ・モーリア劇場 ” みたいにシリーズ化してもいいような気がします。

でもなぁ… 私はやっぱり『鳥』(原作ね)が一番恐ろしいです、今のとこ。

デュ・モーリアは活動期間が長いので、まだまだ未読の作品がたくさんあるはず。
探し出して読みたいと思っています。

ひとことおおきなお世話コーナー
このあいだ、何年かぶりにバーベキューやった後山下公園に行ったら、トライアスロンの建て込みやってましたが
海の水大丈夫なのかな? 選手たちがお腹痛くなったら大変!! と、よけいな心配をして帰ってきました

ノルウェー王ハーラル4世妃 イングリド

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            例によって肖像画がないのでヴァイキングの貴婦人をどーぞ

ある意味キングズ・メーカー
ハーラル4世妃 イングリド・ラグンヴァルズダター

1110~1161以降/在位 1134~1136

ノルウェー王はここらへんから激しく入れ替わりを見せ始めます。
嫡子だけでなく、庶子まで入り乱れての継承争いが続くわけだけど
権力が欲しいだけの兄弟喧嘩に巻き込まれる国民はいい迷惑ですよね。

王様の子供だけでも大騒ぎだっていうのに、王妃の再婚相手の孫まで参入しちゃうという
事態を招いたのが、ハーラル4世妃イングリドです。
イングリドの父親はスウェーデン王インゲ1世の庶子ラグンヴァルドで母親は不明です。
      
最初はデンマーク王スヴェン2世の庶子ヘンリク・スヴェンソンと結婚しました。
ヘンリクは、身体的な理由から後継者とは見なされていませんでしたが
様々な陰謀をはりめぐらしていた人物で、敵も多かったようです。

ヘンリクとイングリドの息子マグヌスは、一瞬スェーデン王座つきましたが
スヴェルケル1世を殺害して奪い取ったとされています。
そして、その陰謀を指示したのがイングリドらしいです。
でてきましたね~! 久々にエピソードフルな王妃の予感がします。

1134年にヘンリクがFotevikの戦いで亡くなると、その年のうちにハーラルと再婚しました。
しかし1136年にハーラルが他の庶子シグルに殺害されてしまいます。
この時、ハーラル4世には、イングリドが生んだインゲ(1歳)
愛妾トーラが生んだシグル(3歳)、愛妾ビョークが生んだエイステン(10歳前後)
誰が生んだかわからないけどマグヌス(?)の4人の息子がいました。
もちろん嫡子はシグルですけど、争いがおきることはまる見えスケスケですよね。

ここでイングリドは大胆な手を打ちます。
自分の息子インゲとともに、庶子シグルも共治王として公布しました。
幼い子を選んだところがミソ! 自分の力が及び易い相手を選んだわけですね。
イングリドが摂政に就いたという記録はないのですけれども、インゲの統治中は
最も重要な助言者とされていたそうです… ていうか1歳だからね。
完全に自分で統治してたでしょ。

でも1142年からはエイステンとマグヌスも王になってるんでね…
イングリドの苦労がうかがえますね。
        
ちなみに、マグヌスは5世とはなっていませんで、マグヌス5世は別人です。

いつの間にか、ものすごく高位の貴族オットー・ビルティングと三度目の結婚をしていた
イングリドですが、1140年ぐらいに夫が殺害され再び未亡人になります。

その後イングリドは四度目の結婚をしますが、その前に子供を産んでいます。
子供の父親は素性がよくわからないアイヴィ・スネイスという男性らしいです。
         
イングリドの四人目の夫は、資産家のアルヌ・イヴァルソンでした。
子供も生まれ、インゲの治世も続き、安泰だったはずのイングリドでしたが
1161年、運が尽きます。
インゲが継承戦争に敗れ、殺害されてしまいました。

イングリドの最後の記録は、夫とともにデンマークに亡命するところまで。
亡命先は実家のスウェーデンじゃなかったんですかね?
あ! 息子マグヌスが前の年にスヴェルケルを暗殺してたんだっけ!!
しかもマグヌスも1161年に殺害されました。

どこでどうなってしまったんでしょうね?
亡命ったって、もと王妃で資産家の嫁なわけだから、けっこう大がかりな夜逃げだったと
思うんだけど、跡形もなく消えちゃったというのが気になりますね。
完全に身分を隠して、そこらへんのおカミさんみたいに暮らしていたとしたら
それはそれで面白いかも…

(参考文献 武田龍夫氏『物語北欧の歴史』 Wikipedia英語版)

ひとことK-POPコーナー


東京ドーーーーーム!! SHINee WORLD 2016 D×D×D Special Edition すごく良かったよ~!!
パワホー & ビューティホー! そしてワンダホー!!
今年も2日間楽しかったけど、ツアー終わっちゃった~ と、しゃいにロス状態…
まずはジョンヒョンのソロで癒しましょうっと!

『撲の名はアラム』少年時代の思い出と幻想と…

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MY NAME IS ARAM 
1940年 ウィリアム・サローヤン

買っちゃったですよ、やっぱり、村上柴田翻訳堂、そりゃ買いますよねぇぇぇ…

作者が生まれ故郷を舞台に書いたという『撲の名はアラム』ですけど、長篇ではなくて
『ヒューマン・コメディ』同様、一家族をクローズアップしている
短篇集と考えていただけばいいと思います。
同じく自伝的短篇集と言われている『リトル・チルドレン』よりは
話しにつながりがあると思います。

この中の一篇『ザクロの木(ざくろ園)』は以前紹介しているのですが
一話づつでも、十分短編として楽しめるお話しばかり、14篇がおさめられています。

カリフォルニア州フレズノという町で暮らしている
アルメニア系のアラムという少年が語る、ガログラニアン一族のお話しです。
おじいさん、おばあさん、お母さん、たくさんのおじさんやいとこが登場します。

とにかく、14篇全部面白いんですよ!!
でも全部紹介するわけにもいかないし… 選ぶのも難しいんだけど…
一族の様子が垣間見える、おじさんが登場するお話しを書いてみますね。
そういえば『ザクロの木』もメリックというおじさんが主人公でしたね。

『ハンフォード行き(The Journey to Hanford)』
来る日も来る日も、木陰でチターを弾いている情けないジョルギおじさんが
一夏ハンフォードでスイカ獲りをして働くことになり、付き添いを決めることになった。
おじいさんが、子供たち、孫たちの中から撲を選んだ。
しかしハンフォードにつくと、おじさんは「スイカは獲り終わった」と言われてしまう。

『五十ヤード走(The Fifty-Yard Dash)』
12歳の時、クーポンを送ったニューヨークのストロングフォートから再三優しい手紙が届き
強くなるプログラムを値引きしてくれると言うので、ジコおじさんに相談しに行った。
当時おじさんは、ヨガにはまっていて、瞑想し、絶食し、酒も街をふらつくのもやめていた。
そしてストロングフォートをペテン師だと言ったが、お金は貸してくれた。

『アメリカを旅する者への旧世界流アドバイス
    (Old Country Advice to the American Traveler)』
ある年、おじさんのエリクがニューヨークへ旅行に出かけるというので
おじさんのおじさんガルロがやって来て、旅の危険について語った。
ガルロおじさんが教える、危険を避ける方法すべてに、エリクおじさんは
イエス、サー、と返事する。

どのエピソードも、おじさんのパーソナリティーが表れていて面白いです。
これ以外にも、クセのあるおじさんやいとこがたくさん登場します。
一族を率いるおじいさんとおばあさんのやりとりも笑えます。

一話目から、とにかく自分たちが貧しかったと書かれています。
一族全員が貧困にあえいでいて、どうして食べていけるのか不思議だったと…
でも、一冊を通して、そんな印象はあまりうけませんでした。

それよりも、こんな一族に囲まれて、騒々しい、退屈するヒマもない
少年にとってはおもしろ可笑しい毎日だっただろうと想像できます。

でも事実は少し違っていたようです。
カリフォルニア州フレズノで生まれて育ったのは間違いではないようですが
生い立ちからして、まわりにこんなに親戚がいたのかどうかは疑問です。

作者の序文を読んでから作品を読むと、完全に自伝的小説だと思ってしまうのですが
もしかしたら、偉大なる想像の産物なのかもしれない…
そうだとしたら、少し寂しい気がします。

でも、思い出が反映されていようと、完全なるフィクションだろうと
小説としての面白さには変わりはないわけで、読んで良かった! と思っています。

ちなみに、アラムというのはサローヤンの息子さんの名前らしい。
自分の幸福な想像が、現実となって息子さんに与えられればいいな… なんて
考えながら書いていたのでしょうか?

ひとことバレーボールコーナー
学生時代バレー部でして、ずっと見てきていましたが、男子バレーボールがこんなにすごいことになっていたとは…
グッズがアイドルなみ… 負けちゃいましたが気持ちを切り替えて頑張ってほしいですね

『結婚式のメンバー』思春期の妄想を笑っちゃダメよ

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THE MEMBER OF THE WEDDING 
1946年 カーソン・マッカラーズ

村上柴田翻訳堂から2冊目を購入。
『撲の名はアラム』は、少年が主人公でしたが、こちらは12歳の少女が主人公。

好きな内容かというと、うぅぅん… あんまり好きじゃなかった…

12歳ののっぽの女の子フランキー・アダムスの夏休みの数日を描いた物語です。
彼女には、その年いくつかの出来事がおこりました。

パパから「大きくなりすぎた」と言われて一緒のベッドで眠らなくなったこと
父親のピストルを身につけて街を歩き回ったり、ストアからナイフを盗んだりしたこと
男の子とガレージでいかがわしい罪を犯したこと…
親友がフロリダに越してしまい、遊び相手が一人もいなくなったこと、などなど。

そんなわけで、その夏、フランキーはどこのグループにも属することなく
ほとんど家を出ませんでした。
ずっとアダムス家で働いている料理女のペレニスと、6歳のいとこジョン・ヘンリーと
キッチンに座って、料理やおやつを作ったり食べたり、カードをしたり…
そんなことばかりして過ごしていました。

そこへビッグニュースが入ります。
兵士としてアラスカにいる兄ジャーヴィスが結婚することになったのです。
そして式の一週間前に婚約者のジャニスを連れて食事にやって来ます。

二人を見たフランキーは、結婚式の後家には戻らず、二人とともに暮らそうと決心します。

で、とにかく、会話が多い話しだった〜!  会話というより告白? ひとりごと?
特にフランキーとペレニスの会話が多いのですけど
ペレニスがものすごく説教してる時もありゃ
大人と子供が話しているとは思えない場面もあり
フランキーにとってペレニスが母親がわりなのだなぁ、と思える一方
こんな大人と一緒にいさせちゃダメじゃんと思えたりもしました。
でもやっぱりいてくれて良かったんだと思うけど…

物語は三章にわかれていて、一章ではフランキー、二章ではF・ジャスミン
三章ではフランセスと、名前が使い分けされています。
これは、少女の心境と大人の心境を表すってことなんですかね?
よくわからないけど、深く追求するのはやめときます。

しかし、新春期の妄想って、いろんなことを経験してきちゃった大人から見ると
荒唐無稽でくだらないことに思えますが、本人は真剣なのですよね。
家出の真似事ぐらいは、多くの大人に経験があるんじゃないかしら?

自分のことをふりかえっても… 言えないけど… 笑える!
でもかなり真剣だったよね!!
ひとつふたつ書いてみる?

高校を中退してアメリカでシャチの調教師になろうと思い立ち、退学届を勝手に出して
母呼び出しを受ける…
イギリス人のロッカーと結婚しようと、パイステのシンバルとスティックを手に
武者修行に渡英しようと画策して父にしかられる… バカだ…

ま、私のおバカな過去はおいといて、少女の心のユラユラを瑞々しく描いたと言えるこの物語
ペレニスのおせっかいすぎる干渉に比べ、パパの無関心ぶりがすごいわ!
男手ひとつ…っていうのも大変ですね。

笑ってられるうちはいいんだけど、想像・妄想が膨らみ続けると
深刻な事態をまねいちゃう場合もあるので、スルーしないで耳を傾けた方がいいのかも…
そう考えると、ペレニスの対応は正しかったのかもしれないです。

初々しい心を忘れ去った私には、ちょいと共感できず、難しい物語でした。
少女時代に読んどきゃ良かった…

ひとこと都知事コーナー
辞めましたね〜! ぜったい解散してリオへ行く気だと思ってましたが、さすがにね…  次はどなたになるんでしょう?
私は神奈川県民なので、なんら行使することはできませんが、お隣から見守っております

『クローヴィス物語』愉快な仲間で、イヤーなヤツ

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THE CHRONICLES OF CLOVIS 
1911年 サキ

クローヴィスという上流の青年が主人公だったり、その友人がクローヴィスに
聞かせた話しだったり、クローヴィスがまったく登場しなかったりする短編が
笑える話し、ゾッとする話しとりまぜて、28篇おさめられている短篇集です。
ほとんどが『ザ・ベスト・オブ・サキ』で読んだものでした。

好きというよりは、気になったものをいくつか …

『エイドリアン(Adrian)』
ほどよく脚色された身の上話しをすることで、しょっちゅうルーカスにおごってもらっている
エイドリアンは、ルーカスの叔母ミセス・メバリーに気に入られ、アルプス旅行に同行する。
一緒に行っているクローヴィスからの、ルーカスへの便りによると
叔母一行は、エイドリアンのせいでホテルを転々としているらしい。

一般人が、上流の方々と旅行に出かけて、おおいにはしゃいでしまったのね。
いつも思うんだが、たとえば、比較的裕福でなく育った人が、有名人になるとか何かで
ものすごく大金持ちになった時に、急に上流社会に出てうまく対応できるものなんだろうか?
まぁ、私にはまったく関係ない悩みなんですけどねっ。

『イースターエッグ(The Easter Egg)』
軍人の家柄に生まれたレディ・バーバラは、愛息レスターの小心さが気に食わなかった。
ある時、つきあいのある公国の町長に、ゲストの大公殿下のもてなしについて相談を受けた。
すると、宿の泊まり客の女が、おずおずと、自分の幼い息子に、イースターエッグの
カゴを持たせ、大公殿下に贈呈させてはどうかと提案してきた。

少しタネあかしをしてしまうと、テロの話しなのです。
たぶん、今だからすごく気になったんだと思う… 既読ですが、以前はスルーしてたもの。
こういう話しを読んでしまうと、誰も信じちゃいけないな… なんて、思えてきます。
思っちゃいけないとわかっちゃいるが、誰が何を考えてるかなんてわかんないもんね。

『閣僚の品格(Ministers of Grace)』
神秘主義者の若い公爵は、政局を嘆く悲観論社の友人ベルタルビットに
閣僚たちを天使と入れ替え、閣僚たちを一時的に動物に変えてしまうという。
訝るベルタルビットの前で、まず、不人気な大臣がいきなり好人物になり
その隣には怒れるスズメがいた。

笑い話なのかな? 善人ばかりの政治家と大企業家がいる国は良い国か… っていうお話し。
誤解を怖れずに言ってしまえば、ものすごく清廉潔白で正直だけど無能な政治家より
多少いかがわしくても有能な政治家の方が、うまく国を動かしてくれそうな気がする。
清廉潔白で有能っていうのが一番いいのでしょうが、なかなかねぇ… 会社でもそうでしょ?

さて、クローヴィスですが、彼が登場している話しを読む限り、善い人ではない!
むしろやなヤツだと思います、が、仲間にいたら楽しそうよ。
他人の悪口とかすごく上手そうだし、イタズラとかいやがらせなんかを考えさせたら
すごく面白いアイデアを出してくれそう。

できたら敵にはまわしたくないですね。
それから、心から友だちになりたいというタイプでもないですね。

ひとことクラフトコーナー
わけあって、ここ1ヶ月ちかく、空き時間はこれにかかりっきりでした
ねこやまさんのあみねこの編み図で編んでみました

 



ひそかに誰かに似せてあるんだけれども、似てないので秘密にしときます 

ノルウェー王エイステン2世妃 ラグナ

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         このヘタウマ(失礼)な絵はマルグレーテ妃の実家の紋章です

ノルウェー人のノルウェー王妃ってことで有名 Part2
エイステン2世妃 ラグナ・ニコラズダター

生年不詳~1161以降/在位 1142~1157

ハーラル4世の後を継いだのは、愛妾トーラが生んだシグル2世と
イングリドが生んだインゲ1世の二人(共治王)でしたが、シグル2世は22歳ぐらい
インゲ1世は26歳ぐらいで殺害されて未婚でした。

1142年に共治王になったエイステン2世の妃は、エイステン1世妃インギビオルグ同様
11~13世紀のノルェー王妃の中で、二人しかいないノルウェー人王妃として有名です。

父親はグドブランスダレンというところのニコラス・マーズっていう人らしい…
結婚したのは、たぶん、エイステンがスコットランドからノルウェーに到着した
1140年から即位する1142年の間だそうです。

ノルウェーで王になるために、地元民の協力が必要だったのかもしれませんね。
二人に子供がいたという記録はありません。

1157年にエイステンが義弟インゲ1世に殺害され未亡人になりました。
1160年にインゲ1世の義弟オルムと婚約し、翌年再婚する予定でした。
オルムはマグヌス5世の統治時代に傑出したリーダーとなった人物です。
        
しかし、インゲ1世とホーコン2世の間で争いが始まり
インゲ1世が1161年に殺害されて、この結婚は行われなかった可能性が高いです。

ラグナの消息も、イングリド同様ここで途絶えます。
インゲ1世の死でいろいろな女性の人生がわからずじまい…
欲深い兄弟喧嘩に巻き込まれちゃって… 困ったもんだ。

同じくハーラル4世の庶子で、1142~1145年共治王になったマグヌス・ハーラルソンと
シグル2世と愛妾トーラの庶子で1157年から共治王になったホーコン2世は未婚。

シグル1世の孫マグヌス4世は、サクソン王と血縁がありそうな
エストリド・ビョルンズダターという女性と結婚していますが、詳細は不明。


疑惑の王妃になっちゃった
スヴェッレ妃 マルグレーテ・エリクズダター

1155~1209/在位 1189~1202

シグル2世とグンヒルドの庶子(だと言い張った)スヴェッレの妃は
スウェーデン王エリク9世とクリスティーナ・ビョルンスドッテルの王女マルグレーテです。
      
1189年に結婚し、1202年に47歳で未亡人になりました。
スウェーデンの自分の領地ヴェステルイェートランドに隠居したのですが
その際、王女のクリスティナをノルウェーに残していくように強いられました。
そりゃそうよね、王女は外交の大きな切り札になるもの。

ちなみにクリスティナは、1209年にBagler党(?)のフィリプス・シモンソンに嫁いでます。

マルグレーテは2年間故郷で過ごし、1204年にノルウェーに戻ります。
到着から2日後、スヴェッレの庶子、つまりマルグレーテの義理の息子ですが
ホーコン3世が、明らかに毒のせいで亡くなりました。
当然マルグレーテに疑惑の目が向けられますね?

マルグレーテの使用人の一人が、主人の無罪を立証するために
試罪法に挑みましたが(無理矢理挑まされたのかもしれないけど)失敗して溺死しました。

ひとこと情報
以前も書いたかもしれないのですが、試罪法とはザックリ言うと、疑わしい人が火あぶりにあったりとか
刃物の上を歩いたりとかして無事だったら無罪という、The 中世! な裁判法です
溺死ということは、水にずーっっと沈められたりしたのかもしれないですね、コワいコワい…

というわけで、マルグレーテは追放され、再びスウェーデンに帰ります。
でも、自分の息子がいたわけでもないのに、なぜ継子を殺さなきゃならないかね?
娘のためでしょうか?

1209年に、娘クリスティナの結婚式のために、再度ノルウェーを訪れているので
追放はされたけど、有罪にはなっていなかったのかもしれないですね。
マルグレーテは、娘の結婚後すぐ病気になり、数週間後に亡くなってしまいました。
なんだか怪しい気がするね …

(参考文献 武田龍夫氏『物語北欧の歴史』 Wikipedia英語版)

ひとことゲームコーナー
ポケモンにもゲームにもほとんど興味がないんだが、つい軽い気持ちで ポケモン GOをインストールしてしまいました
ただボールを集めてポケモンにあてりゃいいのかと思ってたら、進化させたりアメもらったり
戦わせなきゃいけないなんて… 以外と忙しい…

『書物愛 [海外篇]』“ 読書愛 ” じゃないのよ

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AMOR LIBRORUM 
G・フローベール/A・フランス/O・ユザンヌ/G・ギッシング/M・R・ジェエイムズ
H・C・ベイリー/S・ツヴァイク/M・イネス/J・G・カズンズ

イギリスの作家さんが多かったので、イギリスに入れてみました。

職場の近くにある有隣堂は、海外文学の品揃えがうすーーーくて、あまり買わないんだけど
この本を見つけた時は嬉しくて、レジに突進したさ!!

ところがですねぇ、ちょっと期待はずれ…

モームが『書物袋』だったかな? に書いてたように
「もう、本が無いとダメで…」みたいな本の虫的なことが書かれているのかと思いきや…

『書物愛』となっていますね?
この一冊に登場する主人公は、ほとんどが読書が好きというより、蒐集家なのね。
それも、希少本とか高価な本とか、読むよりも、集める・眺めることを目的としてる感じ。

だから主人公が本について語る時も、内容の面白さとか、なぜ好きなのかより
なぜその本が貴重なのかとか、高価なのかに力点が置かれてます。

アナトール・フランスの『薪』だけ既読でした。
それ以外の、印象的に残ったお話しを紹介しますけどね…

『目に見えないコレクション(Die Unisichtbare Sammlung)
                 /1924年 シュテファン・ツヴァイク』
成金たちが買い漁る品物を集めるために、古いお得意を訪ねて少しでも手に入れたいと
ザクセンの田舎町まで、老いた版画蒐集家を訪ねたベルリンの古美術商が語る。
老いた蒐集家は目が見えなくなっていたが、集めた希少な版画の細部まで覚えていて
喜び勇んで古美術商に披露すると言う、が、隣で老いた妻はとても困った顔をしている。

けっこうありがちな話しなんですけどね… いいエピソードです。
古美術商の方も、最後は自分が古美術商としてどうあるべきか、気がついて良かったですね。
でも、本じゃなくて版画じゃん…

『書痴メンデル(Buchmendel)/1929年 シュテファン・ツヴァイク』
ヴィーンにもどって、雨宿りのため入ったカフェを、20年ほど前にも訪れたことを思い出し
その店のテーブルで、35年以上、本の仲買をしていたメンデルのことも思い出した。
彼は、ありとあらゆる本の題名・著者・出版元・値段を記憶していた。
しかし、本のこと以外は何も知らず、戦争をしていることも知らなかった。

この主人公は、莫大な本のことを覚えてるけど、中身は読まないのね。
だからやっぱり、読書家っていうわけではないんだけど、蒐集家ではないので、ま、いっか。
彼が幸福だった時代に、彼を見守っていた人々が好ましくて、好きなお話しでした。

『ロンバード卿の蔵書(The Lonbard Books)/1956年 マイケル・イネス』
アプルビィが、私設博物館で、手にしたオースティンの『マンスフィールド・パーク』
はじめとする、いくつかの本に、邪悪なしかけがしてあると言う。
それは本について語るのが大好きな老齢の大企業家ロンバード卿の蔵書で
卿が、記憶力も気力も衰えていないのに、自信を失っていると、妹が相談に来たと言う。

ちょっとミステリーっぽいですが、すぐ犯人も手口もわかっちゃうので
物語としては面白くないです、が、一番 “ 読書好き ” っていうのが垣間見えたお話しでした。
だーかーらー “ 書物愛 ” なんだってば!

ツヴァイクって『マリー・アントワネット』があまりにも有名で、伝記作家と思ってましたが
普通のお話しも書いてたんですね。
2篇ともよかったです、もっと読んでみたいですね。

読書が金持ちの娯楽じゃない時代に生まれててよかったよ! と、心から思いました。

ところで、最後の、カズンズの『牧師の汚名(Clerical Error)』は
ロアルド・ダールの『古本屋』と、瓜二つというか、同じ話しでないのかね?
ダールの方が後に書いてますが、オリジナル?  カバーアルバム的にリメイク?
こちらの本には、なんのエクスキューズないので、あとでダールの方を見てみようっと。
って言って、たぶん見ない…

ひとこと歯痛コーナー
検診をさぼっていたらちょいと歯が痛くなり、耐えられなくなったので歯医者さんに行ってみたら、えーーー!!
親しらずって、若い人に生えるものじゃないの? しかも横向き? ってわけで抜いて来ました。 今ズキズキしてます

『結婚披露宴 新チェーホフ・ユモレスカ2』反省がいかされず…

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1882年~1887年 チェーホフ

『新チェーホフ・ユモレスカ1』に続き読んでみました。
つくづく作品が多いなぁ、と改めて思っているところです。

1同様、主に『破片』『ペテルブルク新聞』『目ざまし時計』という三紙に
掲載された作品が抜粋されています。

三紙の特徴はよくわかりませんが、私なりに、ざっっっくりと傾向をわけてみると

『破片』に掲載されたものが一番わかりやすく、役人根性や貴族根性を皮肉って
笑い話にしているような気がします。
私はあまり好きなラインではないんですけどね。

『ペテルブルク新聞』は、悲喜こもごもの人間模様みたいなものを描いているのかな?
少し可笑しかったり、哀しかったりするのですが、ちょっとだけ社会問題なんかにも
言及しているあたり、新聞の読者を意識してのことでしょうか?

『目ざまし時計』は、けっこう哀しい、The 短編って感じのお話しが多いと思います。
私が好きなのは『目ざまし時計』から抜粋したものが多い気がします。

では、好きだったお話しを…

『七万五千/1887年』
妻のブレスレットを質に入れた金を、カルタでスッてしまったワシーリー・イワーヌイチ。
金が借りれず家に戻ると、妻が、隠し持っていた宝くじ七万五千ルーブルが当たったと言う。

これで辛い境遇続きだったワシーリーの妻の前途もようようかと思ったら…
ひどい仕打ちに継ぐひどい仕打ち… こんな旦那ならいらないんじゃない?

『大問題/1887年』
手形で詐欺をはたらいたサーシャの件で、おじたち三人が親族会議を開いている。
母方の伯父だけが、裁判沙汰にはしないようにとサーシャを庇う。

人間てこんなものよね… と思わされる、真理をついたラストです。
目が覚めたのはサーシャでなく伯父さんだったかもね…

『クリスマスの夜/1883年』
夫たちの乗ったそりが戻らないので、荒れ狂う浜辺に降りてみた若妻ナターリア。
心配する者たちが浜辺に集まる中、氷が砕ける音が鳴り響く。

最初は夫婦愛のいい話かと思っていたら、どんでん返しで悪女の物語! と思いきや
もう一回返しがあります。
いちばんドラマティックなお話しに思えました。

チェーホフ・ユモレスカは、今までにもいくつか発売されてますよね。
それで、前にも思ったんだけど、2冊続けて読むと…飽きるね…
あれほど、間をあけて読もうと反省したのに忘れてた。

面白かったんですよ!
でも、もっと時間をあけていたら、もっと面白かったと思います。
私のミスです。

ひとことK-POPコーナー


い、ま、さ、ら、ですが… オニュとイジナの밤과 별의 노래(Starry Night)
もう何十回見たかわからんが、曲も二人の声もいいし、MVも可愛いし… まだまだ見続けるわ!!
SMTOWNでは歌わなかったですね… やっぱり… でもちょっと期待したけど…
K-POPが苦手だっていう方もぜひ!

ノルウェー王ホーコン4世妃 マルグレーテ

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父親と夫、どっちに味方する?
ホーコン4世妃 マルグレーテ・スクレスダター

1208~1270/在位 1225~1263

一瞬王になった、義母マルグレーテに殺されてしまったかもしれないホーコン3世は未婚
さらに一瞬芸の王、スヴェッレの庶子シグルの庶子グットルムは5歳で亡くなっています。
というか、庶子が続いてますけど、なぜちゃんと結婚しないかな? やっぱり一夫多妻?
その後を継いだ、シグル2世の孫インゲ2世も未婚です。
皆さん、お若くして亡くなっているのでね… 争いはおやめなさいってば!

そして、やっと王位継承を賭けた内戦が終わりを告げる時がやってまいりました。
ホーコン4世の登場です。
ノルウェーが国力を高めた13世紀、その口火を切ったのがホーコン4世でした。
在位も46年と久々に長いです。

さきほど、ホーコン3世は未婚と書きましたが、ホーコン4世はホーコン3世の庶子で
母親はインガという愛人でした。

さて、ホーコン4世の妃マルグレーテですが、スクーレという貴族の娘さんでした。
      
家系図を見ていただくとわかると思いますが、スクーレはインゲ2世の異母弟で
自分でも王位を主張していました。
この家系図からはシグル2世とはなんの繋がりも見出せないのだが
広そうでせまい貴族社会、たどっていけば何か繋がりがあるかもね… たどってないけど。

そこで、1225年、父親とホーコン4世の和解の印としてマルグレーテが嫁ぐことになります。
ホーコン4世は、これでスクーレの王位継承権の主張を退けるつもりでした。

この考えはかなり長い間功を奏していたんだけど、1239年、スクーレが
Nidaros(現在のトロンハイム)で王様宣言をしてしまったことで、再度争いが勃発。

結婚から14年ですよ! この間、マルグレーテが「もう大丈夫」と安心して暮らしていたのか
消えてなさそうな父親の野望にハラハラしどうしだったのかは不明。
この争いの間に、父親を助けるような動きをしたのか、見放していたのかも不明。

ただ、父親の反乱を知った時には号泣し、亡くなった時には深く悲しんだそうです。
板挟み… つらかったろう…

1240年、スクーレがホーコン軍に殺害されて、この争いは終結します。
その後もホーコン4世とマルグレーテは離婚や別居などした様子がないので
戦いは戦い、夫婦は夫婦、と割り切っていたのかもしれないですね。 さすが王侯貴族。

マルグレーテは、政治には参加はしていなかったようです。
ただ、自分の財産とか領地を守ることには、けっこう一生懸命だったみたい。
ホーコンが近隣諸国を旅した時には同行して王妃としての役割を立派に果たしたらしいです。
The 王侯家の娘、という教育を受けてきた女性かもしれませんね。

1257年に、共治王だった次男(長男オーラフは幼くして夭逝)ホーコンを亡くしています。
1263年にはホーコン4世がスコットランドとの争いの最中に亡くなります。

1264年にスクーレが建設したトロンデラーグのRissa修道院を
息子マグヌス6世と訪れています。
マルグレーテは1267年から1270年に亡くなるまで、そこで過ごしたようです。

たくさんの愛しい人を亡くした人生でした。
最後の3年間は穏やかに過ごしたと思いたいですね。

(参考文献 武田龍夫氏『物語北欧の歴史』 Wikipedia英語版)

ひとこと韓流コーナー
最近BSで『パリの恋人』とか『美しき日々』とか、お懐かしい〜ドラマやってて、来週から『ホテリアー』放送だって
どっか『フルハウス』やってくんないかなぁ… Take2じゃなくてソン・ヘギョちゃんの方ね!

『山の郵便配達』爆買い前夜の静けさ

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那山 那人 那狗 
1997年 彭見明(ポンヂエンミン)

わたしは商業施設で働いていますのでね、中国の方が来ると「売り上げが上がる!」と
浮き足立ってしまいます。

で、お客様たちからわき上がる「さぁ、買うぞー!」という熱気と
売れないものまで「お金ならあるのよー!」と言ってひかない押しの強さが
まったく感じられないようで、ちょっと垣間見える一冊。
なに言ってるかわかんないでしょ? わたしもだ… 今説明しますね。

主に地方の町や村を舞台にした、6つのエピソードがおさめられている短篇集で
時代背景は、1970年代〜80年代ぐらいみたいです。
主人公は皆、多くを欲さず、黙々と働き、あまり語らず主張せず、というタイプ。
確かに自分を曲げないような頑固さはありますが、よくテレビで見かける
パワフルで自信たっぷりの中国人像はあまり感じられません。

ただ、主人公のまわりをとりまいているのが、訪れた中国の超高度成長期を体現し始め
裕福さと贅沢さを追い始めてるって感じの、精力的な人々が多い気がします。
彼らは経済とか未来について、多くの期待を持っている印象があります。

では、気になったお話しをいくつか。

『山の郵便配達(那山 那人 那狗)』
足がいうことをきかなくなった山の郵便配達は、息子に仕事を引き継ぐため
まだ誰も起きていない早朝、息子と犬をつれて3日間の配達にでかける。
配達の日程や山の難所、各々の村での注意点や人々について気をつけることなど
できるだけ多くを息子に教えておかなければ、と思っている。

雄大な自然や、夜明け・夕暮れの風景など、映画化もうなずける美しいお話しです。
まさか、今ではこんなに手間ひまかかる配達をしてるとは思えないんですけれど
先日テレビで、断崖絶壁のすごく危険な通学路を通ってる小学生たちの映像を見て
もしかしたら… なんて思ってしまいました。

『南を避ける』
老田(ラオテイエン)は、次女の容(ロン)が美しく成長したのに気づき
彼女が「広東に行きたい」と言い出すのではないかと不安が募る。
村の若者たちがどんどん広東に行ってしまっていたが、美しい娘たちが広東へ行き
悪い結果になってしまった話しがいくつも思い出される。

若者が、親たちよりよい暮らしを求めて、都会を目指すというのは
なにも中国に限った話しではないですよね。
でも、日本でも欧米でも中華街に行くと、彼らの “ 大挙して動く ” 感は
ハンパない気がしてね… 都市の人口集中率がすごそうよね。
余談ですけど、以前リヴァプールで、中国の人がごっそり他の土地に移動して
もぬけの殻になっちゃった中華街ってのを見たことがあります。 寂しくて恐かったよぉ。

『愛情』
恋人がいないまま三十歳になった坤正(クンジヨン)は、ひとりの女性と知り合う。
友人の同僚だという余娟(ユージユアン)は、心臓病のせいで結婚ができないという。
しかし、余娟は坤正に好意をもったようで、坤正は食事に誘われたり家に呼ばれたりする。

実は、これより好きな話しが他にもあるんだけど、なんか、あまりにひねりがない
ハッピーなエピソードに好感が持てました。
文中、やけに年増扱いされてる二人の幸せが、末永く続きますように…

他の3編も、素朴な語り口と、淡々とした流れが読み易い、美しい話しです。
(最後の『振り返って見れば』は少しアクティブですけど)
静かに、しみじみと読み終えることができました。

中国の作家といえば、以前( 8年前だった)イーユン・リーさんの『千年の祈り』
読んで以来の2冊目になります。

こちらにも文化大革命の話しとか、共産党の序列のこととか出てくるのですが
ほとんど政治的な言及や批判的な表現はなくて、日常的なエピソードが書かれてます。
もう少し現代の、近頃の市民生活を描いたお話しがあったら読んでみたいです。

ひとことクラフトコーナー

  これ、カタログで見かけてかわいかったので、オパールで編んでみました 。 なにかっていうと…
 イヤホンをクルクル巻きつけて
 半分に折ると、あら!イヤホンホルダーに
 iPodを立ててみたりして

ノルウェー王ホーコン・ホーコンソン王妃 リキサ

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           どーにもこーにも肖像画が無いので13世紀の貴婦人画を…

お隣同士三国は仲良くできるのか?
ホーコン・ホーコンソン妃 リキサ・ビュリエルスダター

1237~1288/在位 1251~1257

父ホーコン4世と共治王になり、単独王になる前に24歳で亡くなってしまった
ホーコン・ザ・ヤングの妃リキサは、スウェーデンのヤール(摂政)ビュリイェルの娘さんで
母親はスウェーデン王女インゲボルグでした。
弟にスウェーデン王ヴァルデマーとマグヌス3世がいます。
          
息子ヴァルデマーの摂政として、事実上君主だったビュリイェルのポリシーは
スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの三国が平和的な関係を維持し続けることでした。
お隣同士三国で獲ったり獲られたりの争いを続けていくって、どの国もしんどいものね。

その一環で、1251年、リキサは共治王ホーコンと結婚しました。
結婚から6年後、ホーコンが亡くなります。
さらに4年後、一人息子のスヴェッレが9歳で亡くなってしまいます。

ノルウェーでの役目を終えたってことなんでしょうか?
翌年にメクレンブルク家のヴェルレ領主ハインリヒ1世に嫁ぎました。
二男一女が生まれてますが、エピソードは何もなし… 人柄もまったくわかんないっすね。


権力欲があるのかないのか?
マグヌス6世妃 インゲボルグ・エリクスダター

1244~1287/在位 1263~1280

ホーコン・ホーコンソンの弟で、父王の死後即位したマグヌス6世は、王位継承法を改正したり
全国で共通の法を制定したりしたことで知られています。

その妃はデンマーク王エーリク4世とユッタ・アフ・サッシェンの王女です。
姉のソフィアは、スウェーデン王ヴァルデマー1世に嫁いでいます。
     
エーリク4世には王子がおらず(二人とも幼くして夭逝)王女ばかり4人いました。
三女ユッタと四女アニェスは修道院に入ったからおいといて…
スウェーデン王妃ソフィアとノルウェー王妃インゲボルグに継承権があるというのは
今後問題がおこりそうな予感ですね!
  
マグヌスとの結婚は議会によって約束されていたということで、完全に政略結婚でした。
でも二人の結婚生活は幸せなものだったと言われています。

結婚から2年後の1263年にマグヌス6世が即位し、インゲボルグは王妃になります。
しかし、この時点ではあまり政治的なことに参加はしていなかったようです。

1280年、マグヌス6世が、戦いではなく病気で亡くなります。
12歳のエイリーク2世が即位すると、なんということでしょう!
インゲボルグは、未成年の息子に代わり、リーダーシップを発揮します。
政治、好きだったのかしらね?

しかも、インゲボルグの影響力はどんどん大きくなり、エイリーク2世が15歳で成人して
親政を執るようになっても、弱まるどころか強くなっていきました。
やっぱり、政治好きだった? ただ、正式に摂政と名乗ったことはないらしい…
皆さんに助けて頂いて… みたいな雰囲気を出しつつ、会社を操っちゃう社長の母って感じ?

結婚当時から断続的に続いていたものの、インゲボルグとデンマークのエーリク5世は
継承権について強く反目するようになっていきました。

始めは個人的なっものだったのですが、次第にデンマークとノルウェー二国間、そして
ドイツまで加わって、敵意を強めていきました。
せっかく仲良くやってきたのに戦争か? と思われた1287年、インゲボルグが亡くなり
この問題は解決しました。

権力にも興味があったのかしらね?
マグヌス6世は、改法王と呼ばれるぐらい法を改訂した君主で、一見賢王みたいですが
政治的には特に優秀というわけではなかったそうです。

インゲボルグが政治力を発揮してマグヌスに影響を与えていたら、さて
ノルウェーは良くなっていたのか、悪くなっていたのか…

(参考文献 武田龍夫氏『物語北欧の歴史』 Wikipedia英語版)

ひとことテレビコーナー
このあいだ、外国人の方が選ぶおいしい冷凍食品の番組やってて、どれもおいしそうだったんだけど

中でもこれがおいしそうで探してるんですが、近所のどこにも売ってないのよぉ〜 

『誰もいないホテルで』 “ おーい! もどってこーい!!”

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SEERUCKEN
2011年 ペーター・シュタム

オビに “ イングマール・ベルイマン的な味わいもある ” って書かれてたんで
まったく名前を知らない作家なのですが、購入してみました。
わたしはベルイマンの『秋のソナタ』っていう映画が、なんだか好きなんです。
その上に書かれてた “ チューリヒのカミュもしくはカフカ ” という部分が
少し気にかかったんですけどね…

と、思っていたら、『スウィート・ドリームス(Sweet Dreams)』という話しは
以前、村上春樹さん訳の『恋しくて』の中で『甘い夢を』という邦題で紹介されてました。

10編おさめられていますが、どれも静かなせせらぎみたいな、気持ちよい読み心地でした。
特に印象に残ったお話しをいくつか。

『誰もいないホテルで(Sommergaste)』
静かに執筆しようと、同僚が教えてくれた山の中のホテルを訪れた。
そのホテルでは、従業員のアナという女性以外に誰もいないようだった。
電気もガスも使えず、食事はカンづめばかり… すぐにホテルを出ようと思ったが
なぜかそうできなかった。

ものすごく人気があって、その後廃れてしまった観光地なんかに行くと
営業してなくて、うち捨てられた感がハンパじゃないホテルとかペンションがありますよね?
まだそんなに古くなってない物件もあったりして「これ、どうすんだろ?」なんて
思ったりしますが、こんなふうに活用する人もいるかもね。 幽霊が出なきゃいいけど…

『氷の月(Eismond)』
守衛のビーファーとサンドスが年末に退職し、守衛室は閉められた。
ビーファーは退職前、カナダに土地を買ってあり、そこでB&Bを開業すると言っていた。
しかし、ビーファーの妻の死亡広告が出た後、彼は再び守衛室に通ってくるようになった。
ビーファーは誰とも口をきかず、ただ守衛室の窓ガラスの向こうに座っているだけだった。

これを読んでいる間、ビーファーと、村上春樹さんの『遠い太鼓』に出てくる
ミコノスのレジデンスの管理人ヴァンゲリスさんがカブっちゃってカブっちゃって…
たぶん、見た目とかパーソナリティーは(人種からして違うし)全然違うはずなんだけど。
彼が語る退職後の話しは、夢がいっぱいでいいなぁ、なんて思ってたのになぁ…

『スーツケース(Der Koffer)』
ヘルマンは、妻ロスマリーのために、スーツケースにリストにのっている物をつめた。
しかし病院に行くと、ロスマリーは集中治療室で裸同然で寝かされていて
看護士から、今は何も必要ないと言われてしまう。
スーツケースを抱えて病院を出たヘルマンは、最初に来た列車に乗り、終着駅で降りた。

この夫婦が若くないのはわかるけど、いくつぐらいなんだろ?
家事を妻にまかせっきりの、すべての夫に読んでほしい…
急に妻が運ばれて行ってしまった後の、夫のオロオロぶりが目に浮かんで哀しいわ。
どうか希望を捨てずに早く立ち直ってほしい… 旦那さんがしっかりしないと!

で、シンプルで静かで落ち着いてて、読み心地はよかったんですけど
ほとんどの物語のラストで、主人公が心ここにあらず状態で終わってる感じでして
仲良くおしゃべりしてた相手に、急にプイッとされて、ポカーンとしてしまう感覚に
似ている読後感でした。

急に走り出してどこかに消えちゃいそうで「もどってこーい!」と言いたくなったさ。
でも追いかけようとは思わないけどね。
みんなちゃんと帰って来て、普段の生活に戻っていればよいが…

ひとことK-POPコーナー
SHINeeのソウルコンは、今回もインスタやTwitterで垣間みてましたが、オニュの足が心配よぉ〜
救急車に乗ったっていうからものすごく心配でしたが、今月末のカムバックまでには治るということなので
とりあえずひと安心です
無理しないでちゃんと治してくださいね
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