セアラ・オーン・ジュエット/ケイト・ショパン/ウィラ・キャザー
キャサリン・マンスフィールド/ガートルード・スタイン/ラドクリフ・ホール
ヴァージニア・ウルフ/デューナ・バーンズ/ヘンリー・H・リチャードソン
カースン・マッカラーズ/ジェイン・ボウルズ/イサク・ディネーセン
作家陣の全員がアメリカ人というわけではないのですが
割合が高かったのでアメリカの作家のカテゴリーに入れました。
買う時にちょっとドキドキしましたが、大好きなマンスフィールドの未読作品があったので
「えいっ」と本屋さんのカウンターに差し出しました。
でも、そんな心配はまったく無用ですよぉ~。
上記の執筆者は登場順に書いていて、後半になると私には難解なものもあったのですが
テーマは極めて穏やかで読み易い作品がほとんどで、良い小作品集でした。
印象に残ったお話しをいくつかご紹介します。
『マーサの愛しい女主人(Martha's Lady)/セアラ・オーン・ジュエット』
ある夏、ミス・パインの屋敷に、若い従姉妹へレナがやって来る。
働き始めて間もない、叱られてばかりの使用人マーサは、ヘレナの優しさに打たれ
着々と仕事を覚えていくが、数週間後、ヘレナは屋敷を発ってしまった。
これはまぎれもない愛の物語ではないでしょうか。
思い続ける愛、敬い崇める愛、捧げるだけの愛などなど、愛の美しさ満載のお話し。
アメリカの作家ですが、英国っぽい香りがします。 1800年代だからかな?
『しなやかな愛(Leves Amores)/キャサリン・マンスフィールド』
忘れられないシスルホテル.
ある夜、向いのあの人の部屋で着替えを手伝い、外で食事をしてオペラ座へ行く。
オペラ座を出ると、二人で無言のままホテルへ歩いて帰った。
3ページと、ものすごーく短い作品なのですが、いちばんストレートに
女性への愛を表しているお話しかもしれません。
短いのに、各シーンの情景が目に浮かび、ドキドキさせられるお話しです。
マンスフィールドはもう一編『至福(幸福)』という作品が収載されています。
『ネリー・ディーンの歓び(The Joy of Nelly Dean)/ウィラ・キャザー』
ネルは美しく町の皆のお気に入りで、特にミセス・スピニー、ミセス・フリーズ
ミセス・ダウは、彼女を愛して可愛がっていた。
ミセス・スピニーの息子スコットはネルが好きだったが、ネルは評判の悪いセールスマンの
ガイ・フランクリンと婚約すると、わたしに打ち明けた。
美しくてもてはやされた少女が、必ず幸せになれるかというと…という
ありがちな話しですが、三人のミセスの存在が、物語の面白さを数倍増ししてくれます。
母親のように姉のように愛情を降り注いだ三人のその後が、哀しくも美しいお話しでした。
ウィラ・キャザーはもう一編『トミーに感傷は似合わない』という作品が収載されています。
そちらも主人公を見守るじい様たちがいて、しんみり面白かったです。
たしかに深読みすると、女性が女性を愛おしく思っている様子が垣間見えますが
だからってそれがすぐにレズビアンに繋がるというわけではないですよね?
私も綺麗な女の子を見るのは好きだし、男性より女性と暮らす方が楽だろうな~なんて
考えたりしますもん。
ですので「女性同士があんなことして、こんなことして… が描かれている短篇集だ」と
決めつけないで(期待しないで)読んで下さい。 普通に面白い短篇集です。
最後に作家陣の紹介ページがあります。
今回は(解説は飛ばしたけど)しっかり読んでみました。
皆さんいろいろな女性とのエピソードがありまして、もちろん恋愛感情で結ばれた関係も
あったでしょうが、どうやら、信頼し合えるパートナーというところへ落ち着くのが
多かったみたいに思えます。
カーソン・マッカラーズみたいに、ドラマティックな一生を送った方もいますが…
作家陣は、1800年代から1900年代前半に生まれています。
性的マイノリティー感が今より強かったと考えられる時代に、自分の性的嗜好を堂々と
あるいは自然体で表していたという勇気に尊敬を覚えます。
それとも、芸術家は今より性に関して自由を得られていたのだろうか?
当時の風潮なども調べてみなければなりませんね… たぶん調べないけど。
ひとこと気になるコーナー
買われました? 村上柴田翻訳堂! 私はまだ買ってないんですよね。 子供が主人公でしょー? うぅぅぅぅん…悩むわ
マッカラーズとサローヤンですよねぇ… やっぱり買うべきか?