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Channel: まりっぺのお気楽読書
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『ゼロ・デシベル』ドライでタフなアメリカン・ストーリーズ

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ZERO db AND OTHER STORIES 
1987年 マディソン・スマート・ベル

解説が長そうだったので読んでいないのだが、これ本名?
マディソン・スマート・ベル… なんだかすごく男前な名前ですよね。
こういう物語を書くべくしてつけられた名、という感じです。
あまりにもピッタリの名前なので、実名なのか調べるのはやめてみます。

男の人向けの内容のような気はするのですが、好きでしたね。
読んでいて心地よく、読後感もスッキリ、すごく気持のよい一冊でした。

11篇おさめられています。
そのうち2篇が、どっしり大地に根をおろしてるという印象の、南部が舞台の物語。
その他9篇は、根無し草みたいな男性が主人公の場当たり的人生物語です。

印象的なお話しをご紹介しますね。

『トリプティック I -ある南部の風景-(Tryptic I)』
冬のある日、幼いリサの母ミセス・デンマークの農場で行われた豚の屠殺風景。
ミセス・デンマークの雇い人タイラー夫妻の、とても暑い翌夏の日の出来事。
再びやってきた屠殺の日に逃げてしまった豚を追うベン・タイラーと
魅せられたように彼らを追うリサ。

『トリプティック II -ある南部の風景-(Tryptic II)』
屋根の上で死んで忘れられ朽ちていくピーコック。
妻と別れて巨大な家でひとりで暮らす老人ミスター・エリオットの長い長い退屈な一日。
雄牛が経験する初めての餌のもらえない朝、そして雄牛を連れ出す見知らぬ男。

以上2篇は、南部の農場風景が断片的に描かれている物語です。
トリプティックってどういう意味でしょう? と調べてみましたら
“ トリプシン性 ” といって化学用語? 科学用語? さっぱりわからないさ!
語源がギリシャ語の “ 摩擦・粉砕 ” に由来するということなので
そちらをイメージして読み返してみましたが、どうもピンときませんでした。

題名はおいといて…
2篇とも、想像するとけっこう残酷に思える描写があります。
豚の屠殺の風景も、字面だけなのにかなりショッキングだし
アメリア・タイラーが夏の日に死んでしまうところも、読んでて痛い!と思えたりして。

だけど、生と死、営み、時の流れみたいなものがストレートに描かれていて
すごくすんなりと受け容れられました。

『アイ・ラヴ・ニューヨーク(I ニューヨーク)』
路上で乞食たちがもめているのを見て、コートを持ち去った方を追いかけた。
地下鉄の中で倒れ込んだ向いの男を抱えて電車を降り、地上へ連れ出した。
女がスリにあったと叫んでいたので、犯人らしき男を追いかけボコボコにした。

こう書いちゃうといい人の善行を書き連ねた話し(つまんないね!)と
思われるかもしれませんが、ちょっとニュアンスが違うんですよね。
「…ったく、もう!」という感じで巻き込まれちゃってるような気もするし
なんか自分からゴタゴタに飛び込んでいってる気もするし… でもやっぱり善人だと思うわ。

その他7篇は、アパートを移り住み、仕事をしないで日給で食いつないでる人の
都会(かなり混沌とした下町)的なエピソードが中心です。

最後の1篇『死すべき最期の日(Today is a Good Day to Die)』は1875年当時の
インディアンとの戦いの中で死んでいく青年少将の物語です。
これもけっこう胸に響きます。

文章は簡潔で、装飾や情緒はあまり無い気がしますが
だからといって乱暴な印象や突き放された感は受けませんでした。

仕上がった物語のひとつひとつは、テーマに反して
そこはかとない優しさを醸し出しているような気がします。

上手く説明できないけど、なんだか独特なのよ。
裏表紙にワイルドな作家の写真が載ってますけど、実は照れ屋さんなんじゃないかな?

心優しくて庭の小枝の小鳥に「よちよち」って言っちゃうタトゥーだらけの人…
何が言いたいかよくわからんが、そんな印象の一冊でした。

ひとことK-POPコーナー
ナルバキスンいいよね~! CDジャケット 良すぎる  ものすごくよいんだけど
テソンを知らない人に「面白い韓国の人」と周知されてしまうと悲しいわ… 歌が上手なテソン普及運動に励もうっと
 すでに友だちに「あのお笑いの人」って言われたし…

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